苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

自民党が「放送法に基づいて」、テレ朝とNHKの責任者を呼びつけるというトンチンカンをなしえたわけ

 2012年5月、憲法審査会委員を務める磯崎陽輔という、東大法学部出の自民党国会議員が「立憲主義」を知らないというツイートをして世間を呆れさせたことがあった。

礒崎陽輔‏@isozaki_yousuke
http://twitter.com/isozaki_yousuke/status/206985016130023424

時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか

 いうまでもないことだが、立憲主義とは、<憲法は国民が権力者を制限する道具である>という近代民主主義国家の基本原理である。政府は主権者である国民に託された権力を、憲法の制限下でのみ行使することができる。
 自民党議員が立憲主義を理解できないのは、法とはどんな法でもお上が民を支配する道具だという、江戸時代的な考えが骨の髄までしみこんでいるからなのだろう。「明治憲法的な」とはあえて言わない。初代総理伊藤博文立憲主義がなんであるかを心得ていたからである。伊藤は、「憲法を創設するの精神」は「第一君権を制限し。第二臣民の権利を保護するにあり」と説明している。
 今回、自民党がテレ朝とNHKの責任者を呼びつけておいて、「放送法にのっとってやっている」と公言するトンチンカンは、同じ根っこから出ていると思われる。 放送法は、戦時下に放送局が「大本営発表」に陥り国民を破滅に追いやる手伝いをしたことを猛省して、放送における表現の自由を確保するために定められた。放送法の趣旨は、立憲主義と同じく、国民が権力者を制限して放送における表現の自由を確保することにある。

放送法の目的
(目的)
第一条 第二項
 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。

(放送番組編集の自由)
第三条  放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

 したがって、先日も書いたが、今回、政権与党とはいえ一政党にすぎない自民党がテレビ局の責任者を呼びつける権限などどこにもない。また出頭した放送局の見識も疑う。自民党が行ったことは、違法行為である。今の自民党の人々は、あまりにも不見識である。こういう人々に政治を託しておいて、この国はいったい大丈夫なのか?



追記2015年4月26日>
 こちらにも同じ趣旨のことがありました。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/d07d0df5b61715e91e2bc580af3f7f1b
NHKアナ池上彰氏と元フジアナ長谷川豊氏のこの(筆者注:見識の)違い
 池上氏「放送法は政治介入を許さないのが目的」