苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

知性を明るくするもの

(通信小海2月号の一つ目の記事です) 

都知事選はどうなるのか?ということが、日本中の関心事のひとつである。総人口の一割が住む首都の行方、特に原発問題は全国の日本人の今後の生活に影響を及ぼすから当然である。ところが、昨日の東京新聞によると、NHK第一ラジオが都知事選中を理由に、東洋大学経済学部中北教授の脱原発に関する発言を規制して、同教授は降板したという。ひどい話だ。主要候補のうち原発賛成を表明しているのは一名。選挙対策でにわかに脱原発を掲げた年来の原発推進論者が一人。そして、原発ゼロを訴えているのは二名である。
 福島第一原発の大事故で、八万八千人が故郷を奪われ、今後も帰還の見込みは立たない。
 チェルノブイリでは事故後四年から爆発的にふえた甲状腺がん患者が、福島では現時点ですでに五十九名を数えている。
現在、福島第一原発では、汚染された地下水が毎日三百トンも海に流出しつづけている。また、四号機の核燃料移送作業が、薄氷上を歩くような危険を冒しながら続けられている。また一号機から三号機の廃炉は決定済みだが、廃炉にする方法についてもめどが立たない。
現在、我が国で稼働している原発はゼロで、それなりに国民生活も経済も成り立っているから、「原発がなければ日本は電力不足で立ち行かない」といった宣伝がウソであることはすでに実証済みである。(ただし、資産としての原発が「不良債権化」すると、電力会社の経営は2,3年で危機に瀕することは、以前書いたとおり。)
 日本人はのど元過ぎれば熱さを忘れる民族だというけれど、忘れていいことと悪いことがある。今、私たちがこうして生活していられるのは「偶然」によるのである。読者は二年ほど前に引用した毎日新聞の記事をおぼえていらっしゃるだろうか。「そのころ第1原発では1〜4号機が電源喪失で冷却機能を失った。最多の1535本を保管する4号機の使用済み核燃料プールは沸騰。溶融すれば最悪の場合、首都圏の三千万人が避難を強いられる事態が目前だった。だが空だき直前、4号機内で起きた水素爆発の衝撃で核燃料プール横の別のプールの水が偶然、核燃料プールに流れ込み危機を免れた。」(毎日新聞2011年12月22日) あの爆発で隣のプールから水が流入しなかったならば、関東一円が強制避難となり三千万人が難民となって、日本は破たんしていた。あの「偶然」は、実は日本に対する神のあわれみであった。
 これらの事実を直視するならば、原発再稼働の是非を議論すること自体、ばかげている。「是」などありえない。まして、「日本の原発は世界一安全です」などと言って地震国トルコをはじめとする国々にセールスして回るなど人の道に反する。輸出先の原発から出た廃棄物は日本が引き受けることになっているという。

この国の指導者が焦るのは「三本目の矢」という景気浮揚を望むからであろう。目先の利得のために、自国も他国も永久に廃墟にする危険を冒そうというのだ。カネの思い煩いは知性を暗くする。主はおっしゃった。

「からだのあかりは目です。それで、もしあなたの目が健全なら、あなたの全身が明るいが、もし、目が悪ければ、あなたの全身が暗いでしょう。それなら、もしあなたのうちの光が暗ければ、その暗さはどんなでしょう。 だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」

 では、心の目つまり知性はどのようにすれば明るくなるのだろう。主イエスは言われる。

「空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。けれども、あなたがたの天の父がこれを養っていてくださるのです。あなたがたは、鳥よりも、もっとすぐれたものではありませんか。」(マタイ福音書六章)

東京新聞のくだんの記事
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014013002000161.html