「22:6もしあなたが道で、木の上、または地面に鳥の巣のあるのを見つけ、その中に雛または卵があって、母鳥がその雛または卵を抱いているならば、母鳥を雛と一緒に取ってはならない。 22:7必ず母鳥を去らせ、ただ雛だけを取らなければならない。そうすればあなたはさいわいを得、長く生きながらえることができるであろう。」申命記22:6,7
数日前に書いたように、古代メソポタミア、古代中国、12世紀ヨーロッパ、大航海時代の建艦競争、そして近代産業革命にいたるまで、環境破壊の元凶は貪欲な経済活動と戦争だった。
現代のグローバリズムを掲げる市場原理主義の自由主義経済は、今、造り主が託してくださった大地を滅ぼしつつある。穀物メジャーは、発展途上の国の大地主に札束をもって近づき、森を切り払って農地を大規模化し、単作・機械化・化学農法を持ち込んだ。結果、農民たちの伝統的農業技術は失われたが、大量の穀物を安価に収穫することができるようになり、世界の市場に売りさばいて、穀物メジャーは莫大な利益を得た。大地主はもちろん農民たちも、かつて経験したことのない収入にいろめきたった。
しかし、十年もたつと大量に投じられた化学肥料と農薬と連作で大地は疲弊して、ろくすっぽ収穫ができなくなった。また、森が切り払われて農地が大規模化したために、土壌が風で飛ばされてしまったことも大地の荒廃をもたらした。すると、国際穀物メジャーはさっさと生産地を他国に移してしまう。
あとに残された農民たちは伝統的農業技術も、それに適正規模の農地も失ってしまっている。さらに、森が切り払われたために、蒸散作用が失われて、雨雲が形成されなくなってしまい、大飢饉がその国を襲った。骨と皮しかない子どもたちが土を口に運んで飢えをしのぐありさまが世界に報道される。すると、国際的支援が必要ということで国連が動き、国々が拠出して大量の小麦を買いつけて、大飢饉に襲われた国の人々に提供することになった。この機会にまたも莫大な利益を上げたのが、かの国際穀物メジャーだった。マッチポンプなのである。
こうした悲惨で罪深いことが、アフリカ、インド、南米、アジアの第三諸国で繰り返されてきた。貪欲なグローバリズム経済は、造り主が人類に託された大地を収奪しつくして滅ぼしてしまう。グローバル企業というものは、特定の国や国民に対してなんら忠誠心というものを持ち合わせておらず、ただ企業利益だけを目的として活動している貪欲な怪物である。かつて英国のトマス・ホッブズは、近世に登場した中央集権的な近世近代の国家を旧約聖書ヨブ記に登場する怪物リヴァイアサン(レビヤタン)にたとえたが、それをも呑みつくす現代のリヴァイアサンは、自由市場主義経済を教義とするグローバル企業である。TPPは、こうした動きの典型。
最初に掲げた 申命記のことばは、造り主は私たちに被造物を利用することを許してくださっているが、その利用のありかたは根こそぎに収奪するようなことであってはならないと教えている。「さいわいを得、長く生きながらえよう」とするならば、被造物世界を「耕し、かつ、守る」(創世記2:15)という姿勢がたいせつなのである。