苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

善悪を論じないように

  しかし神は夜、夢にアラム人ラバンに現れて言われた。「あなたはヤコブと、事の善悪を論じないように気をつけよ。」創世記31:29

ラバンはまたヤコブに言った。「ご覧、この石塚を。そしてご覧、私があなたと私との間に立てたこの石の柱を。この石塚が証拠であり、この石の柱が証拠である。敵意をもって、この石塚を越えてあなたのところに行くことはない。あなたもまた、この石塚やこの石の柱を越えて私のところに来てはならない。」創世記31;36−52

 ヤコブの母リベカの兄はラバンといってハランの地に住んでいた。ヤコブとラバンは甥と伯父の関係にあった。二十年前、ヤコブはカナンの地で兄をだまして、父から長子の権と祝福を奪い取ってしまい、兄からの恨みを買ってしまった。そこでヤコブは、兄からの難を逃れるために母の故郷ハランの伯父ラバンのもとに身を寄せた。ラバンはヤコブに自分の二人の妻を与えた。そのうちひとりは無理やりに娶らせたのだが。
 ところが、ラバンは食えない男だった。ヤコブが狐ならラバンは古狸。ラバンはヤコブの前ににんじんをぶら下げて仕事をさせては、ヤコブが他に行く当てがないことをよいことに、幾度も報酬を変えた。しかし、ヤコブも負けてはおらず、ラバンの策略を越える策略をめぐらして彼の財産をふやして行き、最後はこの地で得た家族と財産をもって彼の故郷カナンの地に戻ろうとしたのだった。
 ラバンは逃げるヤコブとその一族に追いすがり、ついに明日には追いついてしまえるところまで来た。ラバンはヤコブを非難して、妻として与えた娘たちも孫たちも、すべての財産も取り上げてしまえるというところまできた。ところが、その夜、神がラバンの夢に現れて言われた。
「あなたはヤコブと、事の善悪を論じないように気をつけよ。」
 この伯父と甥は、お互い後ろ暗いところがある。もし、事の善悪を論じるならば、非難の応酬になり、ついには刃傷沙汰にまでなって双方、失ってしまうものがあまりに大きくなることは目に見えていた。だから「事の善悪を論じないように気をつけよ」と神はどすを聞かせて命じられた。どちらも灰色という現実においては、事の善悪を論じることはやめて、お互い問題は棚上げにして、互いに踏み込んではならない一線を引いておくということが必要な場合があることをわきまえる。それが知恵というものだった。
 竹島問題とちがって尖閣諸島の領有権の問題は、国際法上は日本領であることはあきらかに思える。(追記:これは日本で日本向けに流されている情報だけしか見ていないからかもしれないが。中国では、当然別の情報が自国民向けに流されているのだろう。)あきらかに思えるけれども、1971年以降、近辺に海底資源があることに着目し、尖閣は中国領だと自国民に訴えたからには、中国政府も引くに引けなくなっている。中国大衆の怒りは、単なる海底資源に対する欲の問題ではなく、過去の日本の侵略に対する恨みの反日教育から発している。野田首相は「それはそれ、これはこれ。別問題です。」「国際法に訴える」「法の支配」を強調するのだが、そういう単純なことで片の付かないのが過去の歴史である。
 そういうややこしいことがあるし、善悪を論じれば、お互い失うものが大きすぎるので、訒小平以来、尖閣列島は棚上げにしてきたわけである。2011年で中国への輸出総額は1億6000万ドル、中国からの輸入総額は1億8000万ドルに上る。もし、これが止まってしまったら、両国民の生活への影響は甚大である。 すっきりしないままに棚上げにしておくのは気持ち悪いことだが、ときにはこういう知恵も必要だったのだろう。だが、何かと目立ちたがりで短慮の都知事に挑発されて、野田政権は中国人民の気持ちには、さして配慮せず軽率な判断をくだして、政府は国有化に動いて火種に油を注いでしまった。民主党に中国に太いパイプをもつ小沢一郎がいたならば、決してしなかった愚挙であったし、氏がいたら解決の糸口もあったが、小沢氏の去った民主党には打つ手はない。
 この問題、どのように解決できるのだろう。筆者は、祈るばかりである。


☆「なんで?中国の反日デモhttp://questionbox.jp.msn.com/qa7700263.html


☆中国でも尖閣諸島が日本領であることを認識している人はいる。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/586247/

追記2011年9月21日朝>
 どうも、あの反日デモは、やらせというか、ほとんど官製デモだったようですね。たしかに、お揃いのシャツとか、立派な横断幕とかを見ていると、ボランティアのデモには見えませんでした。一般の中国人は、反日デモに距離感を持っていたようです。実際、当局が止めたら見事にやみました。官製の証明でした。だとしたら、政府にあおられて日中両国民がおたがいに組み合うのは馬鹿げたことです。
こちらのリンク先をごらんください。
http://blog.goo.ne.jp/dashu_2005/e/d133e4045bb0ac65d80d617e979f9bd0