苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

集団的自衛権と死の商人について

 8月15日が近づいているので、話題となっている「集団的自衛権」について、ブッシュ政権イラク戦争のとき書いたものですが掲載します。

Q 改憲論議で話題になっている「集団的自衛権」とは、なにか?
A. 国連軍・米軍の戦争に日本が加担するための権利である。抽象的な表現でいえば、集団的自衛権とは、<自国と密接な関係にある他国に対して第三者による武力攻撃があった場合に、自国が直接に攻撃されなくても、第三者による武力攻撃を実力をもって阻止・排除する権利>である。具体的には、米国が第三者の国と戦争を始めれば日本の自衛隊がその第三国を攻撃するための権利である。


Q 米国が日本有事の際に集団的自衛権を行使して戦おうというのだから、日本が米国有事の際、米国のために戦うというのは友国の信義として当然ではなかろうか?
A 米国の場合、イラクに対してそうしたように、自国が武力攻撃を実際に受けなくても、「イラク大量破壊兵器保有している」などとウソの口実をもうけて、侵略戦争を始めてしまう。このような事態にあたって、日本は集団的自衛権の行使だといって、米国の侵略戦争に付き合うべきだろうか。あなたの友人があなたを「強盗に行こうぜ」と誘ったら、「よし一緒に強盗に出かけよう」というのでなく、むしろ、「バカな事はやめろ」と止めてやることこそ信義というものではないか。


Q. 強盗のたとえはひどすぎないだろうか。たとえば米国はフセイン政権が大量破壊兵器を持つと思ったから――後に、実際にはなかったことがわかったのだが――、世界の平和にとって脅威であるからイラクを攻めたのではないのか?
A. 「大量破壊兵器」は、嘘の口実にすぎなかった。8年間、イラクに対する国連査察団長を務めたスコット・リッターの証言によれば、米国政府は、査察団がイラク大量破壊兵器がないことを確かめ、公表することを望まなかったので、その査察を妨害した。大量破壊兵器がないことが判れば、イラクを攻撃する口実がなくなるからである。またCIAの報告書は大量破壊兵器が確実にあるというものではなかったのに、ブッシュ政権は報告書を意図的に曲解して大量破壊兵器があると断言して先制攻撃をしたのであり、現在、CIA関係者がブッシュ政権を訴えている。


Q. ブッシュ政権は圧政に苦しむイラク国民の解放し幸福をもたらすために、フセイン政権を倒したのではないのか?
A. ブッシュ政権が欲している政府とは、米国政府のいいなりになる政権にすぎない。もしブッシュ政権イラク国民の幸福をほんとうに願っていたのなら、劣化ウラン弾を7万5000発を使用することはありえなかっただろう。しかし、実際には、イラクの国土は放射能で汚染され、イラク国民は被曝して放射能障害を受けた。それどころか、米兵と参戦した他国兵士たちまでも被曝させられ、しかも、ブッシュ政権は米兵の放射線被曝を認めようともしない。


Q. イラク国民の幸福のためでなく、自国民のためですらないとしたら、いったいブッシュ政権は、誰のためにイラク戦争を引き起こし劣化ウラン弾を戦地にばらまいたのか?
A. 政権基盤である死の商人たちに利益を供するためであろう。ブッシュ政権の構成員は、当時、軍産複合体に乗っ取られていた。ブッシュ大統領は、 石油企業アルプスト・エネルギー創設、石油企業ハーケン重役だった。チェイニー副大統領は石油企業ハリバートン会長兼最高経営責任者、国防長官(湾岸戦争時)だった。チェイニー夫人は軍需企業ロッキード・マーチン重役であり、ラムズフェルド国防長官はロッキード・マーチンシンクタンク・ランド゛コーポレーション理事長。パウエル国務長官は、統合参謀本部議長湾岸戦争時)だった。アーミテージ国務副長官は軍人出身であり、国防次官補(レーガン政権時)。エバンズ商務長官は石油企業トム・ブラウン社長、ライス国防担当補佐官は石油企業シェブロン重役。イングランド海軍長官は軍需企業ゼネラル・ダイナミクス副社長。ロッシュ空軍長官は、軍需企業ノースロップ・グラマン副社長。ホワイト陸軍長官は退役軍人でエンロン・エネルギー・サービス副会長。

Q.湾岸戦争のばあい、死の商人たちはどれほどの利益を得たのか?
A. 数十兆円である。湾岸戦争前、軍産複合体は“冷戦終結”のせいで、全米で1位と2位の軍事企業「マクダネル・ダクラス社」と「ゼネラル・ダイナミックス」の両社は経営危機に陥っていたが、湾岸戦争のおかげで立ち直った。「砂漠の嵐作戦」で中東に展開したミサイル、戦車、ヘリコプター、戦闘機といった陸・空の主要兵器だけで総額は約2740億ドル(約36兆1680億円)にのぼる。石油産業は、1990年末の四半期で、米国大手石油18社の純益は前年の250%という額に達し、ブッシュ大統領とベーカー国務長官は、故郷テキサスの一族と米国軍事産業界に莫大な利益をもたらした。
更に湾岸戦争後、破壊されたクウェート復興事業(約800億ドル、およそ10兆4000億円)のほとんどは、世界最大の建設会社「ベクテル社」をはじめとするアメリカの企業が受注し、残りをイギリスがさらっていった。彼らは、中東を破壊し、中東を再建し、中東に莫大な負債をもたらすというパターンを繰り返して巨億の富を得てきたのである。
☆詳しくはこちらを参照http://inri.client.jp/hexagon/floorA2F/a2f1001.html


とりあえずの結論
 というわけで、「集団的自衛権」というのは、抽象的に考えると、一見もっともなことと思える国家としての権利なのである。だが、具体的に、対米追随をポリシーとしている日本政府と、米国の戦争依存症をかんがみれば、日本が集団的自衛権を行使することは不適切である。
 経団連は武器輸出三原則など撤廃して、わが国産業界も武器を本格的に作るべきだと主張し続けているが、そういうことをすれば、日本もまた戦争依存症に陥ってしまい、世界を不幸にするだけである。死の商人たちのいうことを聞いてはならない。ひとたび兵器産業に深入りすれば、後戻りは非常に難しくなる。