苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

梶原 裕太君  答辞全文「天を恨まず」

津波で破壊された気仙沼市の階上中学校の卒業式。梶原裕太君の答辞をここに置いておきます。youtubeの映像はすぐに消されてしまうそうですから、急いでごらんください。すべてを失った日の、あのヨブのことばを思い出しました。

本日は、未曾有の大震災の傷も癒えない最中、
わたくしたちの為に、卒業式を挙行していただきありがとうございます。

ちょうど、十日前の三月十二日、春を思わせる暖かな日でした。
わたくしたちは、そのキラキラ光る日差しの中を、希望に胸を膨らませ、
通いなれたこの学舎を、五十七名揃って巣立つ筈でした。

前日の十一日。
一足早く渡された、思い出のたくさん詰まったアルバムを開き、
十数時間後の卒業式に、思いを馳せた友もいたことでしょう。

東日本大震災」と名づけられる、天変地異が起こるとも知らずに・・・

階上中学校といえば「防災教育」といわれ、
内外から高く評価され、十分な訓練もしていたわたくしたちでした。

しかし、自然の猛威の前には、人間の力はあまりにも無力で、
わたくしたちから大切なものを、容赦なく奪っていきました。
天が与えた試練というには、むごすぎるものでした。
辛くて、悔しくてたまりません。

時計の針は、十四時四十六分を指したままです。
でも、時は確実に流れています。
生かされた者として、顔を上げ、常に思いやりの心を持ち、
強く、正しく、たくましく生きていかなければなりません。

命の重さを知るには、大きすぎる代償でした。
しかし、苦境にあっても、天を恨まず、運命に耐え、
助け合って生きていく事が、これからの、わたくしたちの使命です。

わたくしたちは今、
それぞれの新しい人生の一歩を踏み出します。
どこにいても、何をしていようとも、
この地で、仲間と共有した時を忘れず、宝物として生きていきます。

後輩の皆さん、
階上中学校で過ごす「あたりまえ」に思える日々や友達が、
いかに貴重なものかを考え、いとおしんで過ごして下さい。

先生方、
親身の御指導、ありがとうございました。
先生方が、いかにわたくしたちを思って下さっていたか、
今になってよく分かります。

地域の皆さん、
これまで様々な御支援をいただき、ありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。

お父さん、お母さん、家族の皆さん、
これからわたくしたちが歩んでいく姿を見守っていて下さい。
必ず、よき社会人になります。

わたくしは、この階上中学校の生徒でいられたことを誇りに思います。

最後に、本当に、本当に、ありがとうございました。

平成二十三年三月二十二日

第六十四回卒業生代表  梶原 裕太