苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

石浜みかる『あの戦争のなかにぼくもいた』


 教会のYNさんにご紹介いただいた本。作者石浜みかる氏の父とその家族の経験をもとに、戦前・戦中の出来事が描かれている物語である。
 戦時下、歯科医をしながら伝道をしていた父親が、治安維持法違反の容疑で特高警察にひっぱられた。家に残されたのは母、祖母、兄、そして主人公の少年と妹。舞台は、神戸市なので筆者にとっては懐かしい。伝道者の父親は、先には神宮不敬罪で逮捕されたことがあったが、その後も屈することなく街頭にたってキリストの福音を語り続けていたのである。逮捕は皇紀二千六百年奉祝記念のあった翌1941年10月のことであり、二ヵ月後には真珠湾攻撃が迫っていた。日本はまるごと戦争の濁流のなかを暴走して行く時代だった。その時流に呑まれることなく、キリストの真理に踏みとどまろうとした伝道者とその家族、子どもたちはどのような歩みをしたのか。それが、具体的な生活のなかで描かれている。
 父は裁判の結果、広島の刑務所で懲役を受けることになり、家族は広島から60キロメートルほどの母親の実家のある瀬戸内の島に疎開することになる。島は、当時の日本の縮図のようであり、子どもたちの小さな社会も同様であった。大本営発表に踊らされる国民たち、次々に徴兵されていく男たち、やがて戦局が急変して行き、本土空襲が始まり、故郷の神戸にも焼夷弾の雨が降ったという知らせ。そして、あの8月6日広島の原子爆弾・・・。父はどうなってしまうのか。

 最近、東日本大震災のどさくさにまぎれて、大阪府知事と取り巻きは公然と憲法を踏みつけにし、人権を蹂躙する君が代起立条例を定めた。大阪は商人の町。お上に頭押さえつけられた東京とちがって、自由の気風が取柄であると思っていたが。

日本国憲法第19条
 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

日本国憲法第99条
 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 この時代、読むべき一書だと思う。少年の目から描いた児童書の仕立てになっているので、小学校中学年以上ならば読むことができる。また教会図書の一冊として、入れておくべき本だと思う。amazonで手に入る

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