苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

浜岡原発の壊れ方と有効な対策   追記2011年6月4日

1.立地が最悪
 浜岡原発は、二つの意味できわめて危険な位置に設置されています。第一に、浜岡原発はプレート境界型巨大地震である東海大地震の震央つまり真下に震源がある点できわめて危険なのです。直下に震源があるので、その揺れは福島原発の場合とはまったく次元の異なるものです。

 福島原発において、マグニチュードつまり地震の規模は、東北から常磐にいたるほど大きかったのですが、原発のあった場所における揺れはたいしたことはありませんでした。十数年前私の故郷の神戸を襲った、あの直下型の破壊力とは比べるまでもありません。私は現場近くの町いわき市に物資を持って行きましたが、地震で倒壊した民家は見当たらず、せいぜい瓦がずれ、壁のモルタルが落ちたようでした。神戸では中心街でビルが横倒しになっていました。「原子炉そのものはM9の巨大地震に耐えた。日本の原発は外国に売れる。」と称賛している経団連会長米倉氏は、まったく見当違いです。古い木造家屋だって倒れていませんから、あの程度で原子炉そのものが壊れたらそれこそ笑いものです。福島の場合は、震源ははるか130キロメートルの海底であり、揺れがプレート境界型特有の長周期の緩やかなものでしたから、建物の被害は小さかったのです。しかし、ご存知のように、福島原発津波が来てやられました。東電と安全保安院が2004年に県議団から出された警告を無視して、津波対策をまったく怠っていたからです。典型的な人災です。
追記
 ところが、あの程度の揺れだけで実は1号機原子炉の配管が破断していたらしい。格納容器内の圧力が事故後半日で急上昇し2倍に達したのは、「原子炉圧力容器を出入りしている管のうちいずれかが、たとえば、かねがね地震時の健全性が問題にされてきた再循環系配管が―破損または破断し、そのために格納容器の圧力がどんどん上昇し」たからであると田中光彦氏は推断している。(「福島第一原発事故はけっして想定外ではない」岩波「世界」2011年5月号所収)まさに、東電福島第一の日本の原発は世界の笑いものなのだ。
〜〜以上追記〜〜〜
 しかし、浜岡原発の場合は、津波以前に地震の揺れそのもので、破壊されます。過去の歴史を見ると東海地震は周期110年から147年で来ています。前回は江戸時代末期の安政年間1854年12月23日に起っており、2011年は157年目です。そのとき2メートルの断層ができています。翌日24日に南海地震が起きて、翌年11月11日に江戸で直下型地震が起きています。ですから、明日にも浜岡原発に襲い掛かろうとしている揺れは、直下から1〜2メートルの巨大なエネルギーによる爆発的な突き上げが来るわけで、これに耐えられる構造物があるとは思えません。建物は横揺れにはギシギシとある程度耐えられますが、縦揺れは建物自体の重みが武器となるので、すぐに崩壊してしまいます。押しても引いてもびくともしない巨漢のお相撲さんが、高いところから飛び降りたら、自分の重さでひざをこわしてしまうようなものです。しかも、地震の縦揺れということは地震学においては最近の知見なので、全国の原発は基本的に横揺れ対策しかされていないそうです。

 浜岡原発が最悪の立地であるもうひとつの理由は、首都圏の西に位置しているので、放射能雲が偏西風に運ばれて、静岡ばかりでなく首都圏の水源地、農地が放射能汚染されるからです。現状を放置したまままもなく訪れる東海地震を迎えるならば、日本は首都を失い、国家として機能できなくなります。

2.制御棒が入らない

 2008年8月11日に駿河湾震源とする震度6弱地震がありました。東海地震かと思われましたが、そうではなく規模の小さな地震で、浜岡付近の震度は5弱でした。このとき、浜岡原発では制御棒が一部入らなくなって、危うく暴走ということになりそうでした。まもなくやってくるのは直下から、2メートルもの高さの断層を作ってしまうようなM8.4の東海地震です。そのとき、震度7の激しい縦横の揺れのなかで、浜岡原発の制御棒が正常に挿入できると考えるほうが無理があります。5キロの荷物を持てない人が、100キロの荷物を持てる道理がないでしょう。

追記2−2.再循環ポンプの揺れで圧力容器損傷
 福島第一原発1号機は、430ガルの揺れであったにもかかわらず、津波が来る前に、原発の心臓部である圧力容器内の水が漏れてしまいました。田中三彦氏によると、恐らく、数10キロから百キロもあるという再循環ポンプの揺れによって溶接部分が損傷したことによるのであろうとのことで、5月半ばになって東電もようやく認めました。
 この程度の揺れによって、耐震強度最強に設計されているという心臓部が損傷したのです。直下から来る東海地震の揺れに耐えられるとは思えません。

3.地割れで配線、冷却水配管がずたずたに
 さらに、浜岡原発の敷地は断層が多数通っているので、敷地自体が地割れでがたがたになってしまいます。すると、電気配線、冷却水配管がずたずたになってしまうので、冷やすこともできなくなります。下の断層と原発の配置図を見ると、なんとかして断層の隙間を縫って建物を建てようとしたことがよくわかります。原子炉とタービン建屋とが断層をまたがっていますね。2メートルの段差ができてしまったら、両者を結んでいる配管・電線が切れてしまいます。

浜岡原発リポートよりhttp://sites.google.com/site/hamaokareport/

4.使用済み燃料プールの水は飛び出す
 私の知り合いのSさんは、戦時中1944年に浜松で東南海地震を体験したのですが、その時、庭にあった池の水がすべて出てしまったと話していました。それほどの揺れなのです。ですから、東海地震がくれば使用済み核燃料プールの水は激しい縦揺れ横揺れによって、すべて外に飛び出してしまいますので、これも暴走を始めます。
追記2011年6月24日>
 福島第一原発4号機は倒壊して、使用済み核燃料プールがぶちまけられてしまいそうな状況ですね。そうしたら、どうするんでしょうか。

5.津波で取水口埋没
 津波もやってきます。現在、浜岡原発の前には砂山があるだけで、中電はこれで大丈夫と言っていました。ただ今回の浜岡地震をみてさすがに驚いたらしく、これから2年ほどかけて15メートルの防波堤を造ると言明しています。
 しかし、浜岡原発の地盤は相良層と呼ばれる砂岩と泥岩でできた手で握ればモロモロと崩れるような地質なので、いったい丈夫な防波堤など造れるのか心配です。
 浜岡の場合、津波で懸念されているのは、浜岡はその名のとおり砂浜なので、津波砂丘の砂を引っ張り去って、何度も寄せるときに、冷却水を引き入れる取水口を埋没させてしまうことです。

6.有効な地震対策
 こんな実情ですから、近々東海地震やってきますが、現状の浜岡原発がそれに耐えられる可能性はほぼゼロに等しいと言わざるを得ません。
 私も協力している100万人署名では、「浜岡原発を停止して、東海地震を迎えよう」と言っていますが、いかがなものでしょうか。車でいえば、確かに時速100キロで走っている最中に事故を起こすより、アイドリング中に事故にあうほうがずっとましなことは確かですから、停止したほうがよいには決まっています。しかし、冷温停止していても、建屋が壊れ、配管が破れ、使用済み燃料プールの水は飛び出し、取水口から水が取り入れられず、配線が寸断されたら、原子炉は暴走し始めます。
 浜岡原発の場合、ほんとうに有効な対策は「停止」ではなく、燃料棒と使用済み核燃料を地震の可能性の低いところへ移送して、東海地震を迎えること以外にありません。


浜岡原発2号機についての設計者からの警告
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-2482.html

*ストップ浜岡ネット署名
http://www.stop-hamaoka.com/shomei2.html