苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

TPPのいう「自由」とは「無法」である

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、「貿易自由化」を目ざしているが、そこでいう関税撤廃によってもたらされる「自由」とは「無法」という意味にすぎない。したがって、TPPは「貿易無法化」にほかならない。プロゴルファーが素人相手に、「ハンディなしで試合をやろう。その方がフェアじゃないか。」と言うのと同じくらいインチキである。
 自由貿易によって起こる競争とは、一面は国際競争であって貧乏な国は金持ち国に富を巻き上げられる。だが、もう一面は、国内の生産条件の有利な産業(日本なら工業)に、国内の生産条件の不利な産業(日本なら農業)が富を吸い取られるという事態である。それゆえ、TPP実現をめざして、後押ししているのは大企業であり、反対しているのは農家である。
 しかし、食糧生産をになう農業を破壊してしまえば、いざという時、国民は飢餓に陥るし、そうなれば工業も成り立たなくなるではないか。そこで今度は大企業が食糧生産に乗り出すという。しかし、企業の目的は利潤の追求であり、利潤の追求の為ならば企業はなんでもやってのける。とくに現代の企業は多国籍化して祖国を持たない。自然環境を破壊することも、ある国の経済を破綻させることも、ある民族の伝統文化としての農業文化を破壊し、慢性的飢餓状態をつくりだして多くの人命を犠牲にすることも、企業の利潤追求のためには正当化されてきた。企業の利潤追求は、それはマモニズムという偶像崇拝なのである。
 だいぶ前だが次のようなことを読んだことがある。エチオピアで飢餓が起こった。その原因は、ある巨大企業が、エチオピアの安い労働力と通貨価値の低さに目をつけて、化学肥料と農薬と農業機械をセットで売り込んだことにある。エチオピアの農民たちは何百年も営んできた伝統的農業技術を捨てて、いわゆる近代農法に切り替えた。当面は、「緑の革命」がおきて農業生産量が爆発的にふえると件の大企業はそれで大もうけした。しかし、やがて近代農法で土をいじめ続けた結果、草も生えない慢性的飢餓の大地になってしまった。そうすると件の巨大企業は、さっさと、他国に生産拠点を転じた。そしてエチオピアを飢餓から救うために、大量の国際緊急支援がなされたとき、そこで活躍して巨利を得た商社は例の巨大企業であった。・・という。これが事実だとしたら、なんと見事で悪魔的な戦略であろうか。
 飢餓の原因については、多国籍企業と農業政策の失敗だけの問題ではなく、戦争、経済構造などいろいろ研究されている。「世界飢餓にまつわる12の神話」にもっと詳しく書かれているので、こちらを参照されたい。
http://journeytoforever.org/jp/foodfirst/report/hunger/12myths.html


「だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」マタイ6:24  


 食料の問題について見たいと思っているのは下の映画。