苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

小海おへそ城

 先日、福島の姫君の来れば、わが姫とともに小海、市の沢なる「おへそ城」に具して行きぬ。市の沢は千曲川西側の秩父山地の山あひの、日当たりよくきよらなる南西向きの傾斜地にて、はるかに八ヶ岳を望む。菊栽培を営む農家多し。我が家より市の沢への道はよき散策路なれども、こたびは車にて行く。四半時ばかりにて城見ゆれば、道わきに寄せて車をとどめぬ。とぼそを開くれば牧場のにほひなり。
 おへそ城といふは、敷島の国の真ん中に位置する城なればなり。築城は、戦国時代ならず、ここ三十年ほど前、とある事業家の趣味にて建てたるものなりと聞く。晴れておらましかば、八ヶ峰のはるかに望まれましきものを、けふは空曇りたり。
 四月の雨氷のせいならむ、城の周囲の松の木々あまた折れ、荒れたるけしきなり。大枝を燃やせる煙の立ち昇るさま、あたかも戦始まらんとする狼煙のごとし。城のそばまで登るは、此度、初めてなり。矢を射かけられてはかなはねば、白きシャツを旗のごとはためかせつつ、「たのーもー」など三人で叫びつつ坂を登る。
 おお!いかめしき門柱には「丸に違い鷹羽」の「家紋」金色(こんじき)に輝けり。こは、われらを歓迎せむとの掛詞。家紋は"Come on!"に通ず。さすが姫はただちにこの城主の深き配慮を悟りぬ。
 坂を登りきれば白き車あり、城の上り口にはいくつかの草履あり。城主、ここに住めるらし。天守閣は三層、頂にはシャチホコ金色に輝けり。大きなる城にはあらねど、その造りは威風ありて、鬼瓦ことに見事なりき。