苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

読書

書評:赤江弘之『私なりの「主のいのり」』

赤江弘之牧師のご著書の書評です。出版社からの許可が出たので、先行公開します。 教会を建て上げる「主の祈り」 「主の祈り」の講解は数ありますが、本書は他に類を見ない「主の祈り」講解説教集です。そのユニークさは「独りよがりの」という意味でありま…

ヘンリー・シーセン『組織神学』聖書図書刊行会

大学時代通った土浦めぐみ教会の午後5時から2時間ほどの夕礼拝は読書会だったのですが、その教材が当時は、この本でした。誰かが係りになって、順々に最初から最後まで引証聖句を丁寧に開きながら読み通しました。 私の最初の神学の教師は、神戸の増永俊雄牧…

川瀬一馬校註『方丈記』『徒然草』『花伝書』

高校1年生の冬休みだったか、川瀬一馬校註『方丈記』を通読して、国文学者になるのもいいなあ、などと思ったものです。川瀬一馬先生の経歴に東京高等師範とあったのが、後に進学先をきめるきっかけとなりました。 川瀬一馬先生は小学生時代に両親を失い、卒…

三冊の本

国家というもの、天皇制というものの仕組みを理解する上で、役に立った聖書以外の3冊の本。 葦津珍彦『みやびと覇権』は天皇制と西洋諸国の王制とフランス型、米国型、ドイツ型それぞれの共和制の構造の理解。著者は、明治以降、天皇が江戸城に移され、本来…

辺見じゅん『収容所から来た遺書』文春文庫

第二次大戦後、武装解除された日本軍将兵約60万人がソ連によってシベリア開発のために極寒の劣悪な環境下で強制労働に従事させられ、約6万人が望郷の念を持ちながらシベリアの地で命を落としました。 その一人に山本幡男さんと言う人物がいました。彼は過酷…

古事記・日本書紀

幼いころ、母が買ってくれた3巻本のなかに、イザナギーイザナミの話とか、天の岩戸の話とか、大国主命の話とかがありました。小学生のころ、小学館の世界名作文学全集のなかに、子ども向きの『古事記』がありました。ギリシャ神話とか北欧神話とか、子ども…

ブレーズ・パスカル『定本パンセ』(松浪信三郎訳・註)

「君は、寄らば斬るぞ、ですね。卒論にするには、とりあえず、この著者の言っていることはすべて正しいはずだと思える対象を見つけるほうが、実りある学びができますよ。」と飯塚勝久先生がおっしゃいました。当時、哲学専攻に移った私は毎週一回、先生の研…

角田房子『墓標なき八万の死者』中公文庫

戦時中、国策によって長野県南佐久郡からはたくさんの若者たちが満蒙開拓義勇軍として派遣され、満州で農業をさせました。彼らは関東軍の兵隊さんたちが守ってくれると信じていました。ところが、戦局が悪化しソ連軍が侵攻してくるという情報を得ると、政府…

岡田英弘『世界史の誕生』、岡田明『日本史教科書の中のファンタジー』

岡田英弘『世界史の誕生』(ちくま文庫)西洋史と東洋史の二本立ての世界史解釈をくつがえし、東西を結び東西の歴史形成に決定的な影響を与えてきたものはユーラシア大陸を東西に自由に行き来する遊牧民であったということ。面白いです。同著者の『日本史の…

小畑進『キリスト教慶弔学事典(婚葬)』

小畑進『キリスト教慶弔学事典(婚葬)』、背が赤でなく緑の「同名の書(冠祭)」があります。いのちのことば社。単なるハウツー本でなく、死、結婚、年中行事、人生の通過儀礼のひとつひとつについて、自在に古今東西の哲学・宗教・文学思想の深みから説き…

三浦綾子『道ありき』

私の世代で学生時代をクリスチャンとして過ごした人には、三浦綾子さんの本は殆ど読みましたという人が結構いるように思います。そういう中で一冊だけ紹介をというならば、やはり三浦綾子さんの若い日の自伝『道ありき』です。誠実に生きるということがどう…

本というもの

今、フェイスブック上で、7日、一冊ずつ自分が好きな本の表紙を紹介し、次の友人にバトンを渡すという企画が流行しています。読書文化がすたれてしまった中で、なんとかしようということのようです。私自身、読書量がうんと減りました。SNSなどで時間をつぶ…

口から食べられなくなったら

最近石飛幸三『口から食べられなくなったらどうしますか「平穏死」のすすめ』という本を読みました。講談社文庫です。「延命治療の限界と、人としての安らかな最期を考える」という腹巻がついています。 5:1 私たちの住まいである地上の幕屋がこわれても、神…

ジェームズ・ダン『パウロ神学』を読み始めました

先週半ば油断して風邪をひいてしまい、治ったかなと思ったら、なかなかすっきり治りません。熱が出ないので、おとなしくしていないから治らないのかもしれません。そこで、昨日は、家にいておとなしくジェームズ・ダン『パウロ神学』を読み始めました。 ダン…

大村大次郎『脱税の世界史』

著者が書いていることは、世界史に名を刻んだ大国は富裕層から税金を徴収することに失敗すると国民の間に格差が生まれ、最終的に国が衰退していってしまうという話である。格差が拡大すると、短期的には庶民にお金がないので内需が冷え込んで景気が悪化する…

キンドル版新改訳2017

新改訳2017をキンドル版で通読しています。パソコンで読みながら簡単にコメントをつけて行けるので、自分なりのコメンタリーが出来ていくようで楽しい。また、パソコンなので、字が大きいのでうんと楽です。 ただし、聖句をさがすにあたっては、「何書の…

牧田吉和『改革派教義学7 終末論』

家内が誕生日に贈ってくれた牧田吉和『改革派教義学7 終末論』を読み終えた。改革派組織神学的な思考のあり方というもののお手本のような論述だった。という意味は、一つには聖書の行くとことまでは徹底的に思いめぐらして行き、聖書が立ち止まる所で立ち止…

『失われた歴史から』がamazonで

『失われた歴史からー創造からバベルまで』がAmazonで手に入るようになりました。

『失われた歴史からー創造からバベルまで』が出ました

拙著『失われた歴史からー創造からバベルまで』が出来上がって、今さっき届きました。新書版217ページ。きれいな装丁にしてくださいました。価格は1100円 中身は、創世記1章から11章の話題を取り上げつつ、聖書全体に啓示された神様のご計画を説いたものです…

ドイツ人の魂

小塩 節先生の「人の望みの喜びを」から。 さて、その直後ミュンヒェンにもどり、日本から訪ねてきたある知人の頼みで、プロテスタント教会の日曜日の夕拝に出かけた。夕拝を守るところは少ない。やっと探しあてたのは人影もない裏通りの、ふつうの建物の中…

吉村昭『プリズンの満月』

私は学生時代のようには小説を読まなくなってしまったが、十年ほど前から吉村昭さんの作品だけは好んで読んできた。その無駄な装飾をいっさい削ぎ落し、克明に誠実に歴史の事実に基づいて書くことに努める文体が好ましい。 『プリズンの満月』は、先の大戦後…

目からウロコ?それとも・・・ウォルトン『創世記1章の再発見』と進化論   

ウォルトンは、創世記1章の7日間の創造記事の「日」は24時間であると読む。また「無からの創造」の教理も支持するという。けれども、彼は進化論を支持している(p198)。そんな芸当がなぜ可能なのか。 それは、「創造の七日間」は、すでにあったもろもろの被…

O.P.ロバートソン『契約があらわすキリスト』出版!

以前にもこのブログに紹介したO.P.ロバートソン『契約があらわすキリスト』が出版され、手に入るようになりました。神様が、ご自分の恵みとまことにかけてご自分の民に対して結んでくださった契約を軸として、創世記からヨハネ黙示録までの流れを鳥瞰する本…

三浦綾子文学の講演会

三浦綾子文学記念館の館長さんが苫小牧のアイビープラザ(文化交流センター)に来て、本日、講演をしてくださいましたので、H兄と一緒に聞いてきました。会場には80名か90名集っていて満席でした。年齢的には還暦以上という感じでした。館長さんは1970年生ま…

ノアとカルヴァン

創世記から、神学校(HBI)チャペルの準備をしていて、カルヴァンが『綱要』の中で、ノアの苦労についてしるしたくだりと、ジュネーブからの再招聘に関してしるしたファレルへの手紙の表現が重なっていることに気づきました。「ノアは生涯の大部分のときを方…

谷川直子『私が誰かわかりますか』

千歳―羽田の往復で読みました。 都会生活をしていた一人の女性が、田舎に住む男性との再婚を機に、思いがけず「長男の嫁」というむかしながらの世間の目のきびしい立場に置かれて、義父の介護をしていく、いわゆる介護小説です。私も22年間、山奥に住んでい…

O.P.ロバートソン『契約があらわすキリスト』出版間近!

35年前の神学生時代、「創世記から黙示録まで一貫する神のご計画をどのように読み取ればよいのだろうか。その鳥観図を得てこそ、各巻・各部分の正しい位置づけと解釈ができるだろう。」という願いをもっているなかで、 The Christ of the Covenantsに出会い…

谷川直子『世界一ありふれた答え』

この本の内容は重く厳しくつらい内容なのですが、ちょうど、あの青い海に砂浜にたたずむ白い傷んだピアノの表紙のように、決して重苦しくはなくてかえって心洗われていくような感想をもちました。それは、現実の自分に向き合っていこうとする主人公の誠実な…

お知らせ「新・神を愛するための神学講座」連載スタート

「舟の右側」6月号から、「新・神を愛するための神学講座」の連載が始まります。前の「神を愛するための神学講座」は絶版になって20年ほどたちます。その後、教えられて来てみなさんにぜひお伝えしたいことがあり、また、そろそろ向こうからお呼びがかかるよ…

「幸福の王子」

(ウォルター・レインによる) 小学生たちが今日は8人わーっと嵐のようにやってきた。先週の6人に2人の新人が加わっている。ドラムをたたいたり、ピアノを弾いたりして大騒ぎしていたが、そうだと思いついて、「紙芝居を見る人!」と言ったら一人をのぞい…