苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

教会と国家

中世教会史7 ユスティニアヌス大帝と東ローマ帝国の歴史的役割

(1)ユスティニアヌス大帝 ユスティニアヌス1世(483年 - 565年、在位:527年 - 565年)は、貧しい農民の子から皇帝まで登り詰め、西ローマ帝国の故地を再征服して一時的にローマ帝国を復興させた。『ローマ法大全』の編纂や、ハギア・ソフィア大聖堂の再…

中世教会史4 アンブロシウス―西方型「教会と国家」の原型

アンブロシウスAmbrosius (340年?-397年4月4日)は4世紀のミラノの司教(主教)。アウグスティヌスに影響を与えたことで有名。ローマ帝国の高級官僚の息子として、父の任地ガリアのアウグスタ・トリヴィノールムで生まれた。長じると彼は法学を学んで、官僚…

国法をも超えて(KGK夏季学校その8 結び)

国家には二つの顔がある。ひとつは神が立てた権威として世俗領域を治めるというものである。その意味では、我々はキリスト者として国家を尊重する義務がある。国家のもうひとつの顔とは悪魔の道具と化して、自らを神格化して全体主義・軍国主義に陥って神の民…

獣の背後で―政教癒着と神のさばき(KGK夏季学校その7)

アキアカネ。カメラを向けると逆立ちポーズを取ってくれました。 「13:1 また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神をけがす名があった。13:2 私の見たその獣は、ひょうに似て…

ネブカデネザルの野望―政教癒着と神のさばき(KGK夏季学校その6)

政教癒着についてもう一つの事例を挙げておく。バビロンの王ネブカデネザル二世(604-562BC)である。 「ネブカデネザル王は金の像を造った。その高さは六十キュビト、その幅は六キュビトであった。彼はこれをバビロン州のドラの平野に立てた。そして、ネブカ…

わが国の近代史で・・・政教癒着と神のさばき (KGK夏季学校分科会その5)

(読者の皆様8月28日にフランス国家ラ・マルセイエーズを挿入したので、ごらんください。1節だけですが、その歌詞に近代国民国家の歴史的背景がよく現れています。) グラジオラス ぺりーの黒船で門戸をこじあけられた列島住民たちは周囲を見回して驚いた。…

ヤロブアムの不安・ウジヤの傲慢・・政教癒着と神のさばき(KGK夏季学校 その4)

イネが穂をつけました。(1)ヤロブアム王の不安と政教癒着 神は、悪を抑制するために、俗権(国家)を摂理によって立てた。俗権の任務は、警察権による悪者の抑制と、徴税による富の分配という世俗的業務である。しかし、えてして俗権は手を出してはいけな…

パウロに見る俗権理解と活用(KGK夏季学校分科会 その3)

可憐でしょう。ニラの花です。 「ると、パウロはこう言った。『私はカイザルの法廷に立っているのですから、ここで裁判を受けるのが当然です。あなたもよくご存じのとおり、私はユダヤ人にどんな悪いこともしませんでした。もし私が悪いことをして、死罪に当…

序 愛国心の始まり  (KGK夏季学校分科会その2)

きのうKGKで話した「教会と国家」にかんすることの一部をメモする。 シュウメイギク。なんだか目玉焼きみたいな花ですね。 愛国心とは、国民国家が成立してはじめて要請されるものであるから、世界の歴史では出来上がってわずか200年ほどしか経っていない特…

教会と国家     2010年KGK夏季学校 MBCにて

今日、松原湖バイブルキャンプでKGK夏季学校の分科会を担当してきました。テーマは「教会と国家」。今回はアウトライン。このテーマについてまとまった文章は、こちらを参照してください。 序 「剣の権能」(俗権)の始まり。 創世記1,2章を見ると、創造…

古代教会史ノート17 ヒッポのアウグスティヌス(その1)「ドナティスト論争」

ヒッポの司教。西方教会最大の教父。恩寵の博士。アフリカ人にして西洋の教師。そして、牧会者。伝記としては、P.ブラウン『アウグスティヌス伝』(出村和彦訳、教文館)が白眉。 1.生涯の概略 アウグスティヌス(Aurelius Augustinus, 354-430)は、ヘレニ…

古代教会史ノート11 コンスタンティヌス大帝の回心

1. ディオクレティアヌス帝による最後の大迫害とコンスタンティヌス帝 まず、めまぐるしく東西の正帝と副帝が交代する3世紀末から4世紀前半の政治的動向を説明する。皇帝デキウス帝とウァレリアヌス帝の迫害の後、教会は比較的平穏な時代を長く過ごす。し…

古代教会史ノート5 帝国による組織的迫害ーーー2世紀から3世紀前半

1. 五賢帝の時代・・・組織的迫害 2世紀は「五賢帝時代(96-180 ネルヴァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス)」と呼ばれ、「人類が経験したもっとも幸せな統治」(E.ギボン)とも言われる。帝国の国力は充実し、政…

古代教会史ノート4 1世紀の迫害(教会と国家)

1. 教会と国家の問題 (1)「教会と国家」4つのタイプ 教会史を学ぶということは、「教会と国家」にかんする歴史を学ぶことであると言われるのを聞いたことがあるが、たしかにそれは過言ではない。教会と国家とが、具体的にどのような関係を持ってきたか…

「8年目の約束―三井環と鳥越俊太郎」

2002年4月22日、大阪高等検察庁公安部長三井環氏が、検察幹部の裏金作り、つまり税金不正流用を鳥越俊太郎のインタビューに応じて告発しようとした当日三時間前に逮捕された。当時、検察幹部たちは、自らの遊興費を調査活動費と偽る領収書を偽造して裏金つく…

2・11から5・3へ

1列王記12:25−33 2010年2月11日 北陸KGK講演その2序 「教師の友」から建国記念日のこと 戦時下の日本のプロテスタント教会では、二月十一日の紀元節(今でいう「建国記念の日」)を前にした主の日、次のような教会学校教案が用いられたことがあった…

R13×2

あした北陸KGK(キリスト者学生会)に招かれて、2.11集会で講演をすることになっている。その1回目の話をここに載せておきたい。序 今回のお話は、第一回目は聖書というめがねで「教会と国家」について見てみることにします。第二回目は、いわばその応用とし…

家永三郎氏解説:植木から日本国憲法へ

家永三郎編『植木枝盛選集』(岩波文庫)を入手して読んだ。巻末の家永氏の解説を見て、なあんだ家永さんは植木枝盛から日本国憲法への流れをちゃんと把握していらしたのだと感心してしまった。この本の第一刷はずいぶん前で、なんと1974年である。抜粋してお…

天皇誕生日

本日は天皇誕生日。天皇、皇族にも信教の自由が保証されて、悔い改めてイエス・キリストを信じうるようにと祈る。彼らもまた神のかたちとして造られながら、神に背いてしまったアダムの子孫であり、救いを必要としている悲惨な人なのだから。 「そこで、まず…

小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』

日本国憲法の成立過程について正確に記述した本を探していたら、この本に出会った。大きな枠は12月15日に記したとおり<自由民権運動→鈴木安蔵(憲法研究会案)→GHQ→日本政府>でまちがいないのであるが、そのプロセスの中身をもっと詳しく史料に基づいて…

君主制と共和制の長短

思いつくまま、メモしておく。<民主的共和制> 第一に、王を殺した共和政革命直後は、伝統的価値の象徴である王を殺したという急性アノミー(無法状態)に陥ることが多い。 第二に、大統領はそのときどきに国民が選挙で立てるものなので、個々の大統領の資…

日本国憲法は国産品 その2

2.第9条も日本製 日本国憲法は、憲法研究会の鈴木安蔵が書いた草案を骨子としてGHQが作成した英文憲法草案を邦訳したものである。しかし、日本国憲法の最大特徴の一つである第九条戦争放棄条項が、日本の首相幣原喜重郎の発案である。また、この憲法が…

日本国憲法は国産品 その1

日本国憲法はGHQからの押し付け憲法であると主張し、自主憲法制定をすべきであるという勢力がある。いったい真相はどうなのか。数年前「日本の青空」という映画を見てから、少し調べて見たことをここにさらりとレポートしておく。この映画をまだ見たこと…

そもそも憲法とはなにか?

たいへんお恥ずかしいことだが、近年改憲論議が盛んになるまで、そもそも憲法というものがなんであるかを、実は筆者自身、明確に認識していなかった。立憲主義などということを書いてきたので、ここにメモしておきたい。ご存知の読者にはあたりまえのことで…

国家体制の類型の整理

「共和制であるからといって、民主主義的とはかぎらないところが、世界史のむずかしいところです」ということばから始まった国家体制についての見かたの考察が、Iohsugi先生とやり取りするうちに、だんだん整理されてきた。 朝鮮民主主義人民共和国のように…

12月7日iohsugiさんコメントへの応答

1.iohsugi先生、よく勉強していますねえ。象徴天皇制は杉森と室伏ですか。室伏という人はもともと国粋主義者ですか。彼はコロコロ思想的転向があった人らしいですね。憲法研究会の議事録とは言わないまでも、そのおおまかな討論の流れが書いてある本をご存…

天皇制の問題点 その1

1.専制君主制への傾き 民主制とは国民主権を原則とした体制である。そして、民主制には二つのタイプがあって、王を廃して大統領を立てた共和制と、憲法によって王の権限を制限した立憲君主制である。君主制には立憲君主制と専制君主制という二つのタイプが…

共和主義革命の熱狂

(本文と写真は関係ありません) まきひとさんから、日本は立憲君主型民主制ではなく、立憲民主制であるとのご意見をいただいた。天皇には三権における実権がなく象徴だけなのだから君主とは呼べないということである。過去の天皇神格化ゆえにわが国が犯した…

共和制?君主制?民主制?立憲君主制?

「共和制であるからといって、民主的とはかぎらないところが、世界史のむずかしいところです。」と山内昌之教授が言われたことについて(昨日のブログ)、少々付け加えたい。山内教授は、米国を一例として挙げていた。米国はイングランド王を排して共和制を…

真理の排他性と政教分離ーー小沢発言にちなんで

11月10日、民主党の小沢一郎幹事長が高野山金剛峯寺を訪れ、管長と会談した際、「欧米文化の背景にあるキリスト教を「排他的」と述べ、仏教を「心の広い、度量の大きな宗教であり、哲学だ』と語った」と毎日新聞で報道され、これに対してキリスト教連合会が…