1.意見文は、ある事柄にかんする自分の主張を、読者の頭と心に伝えることを目的としている。したがって、書き手は、まずある事柄について自分の明確な意見を持たなければならない。自分が伝えたい事柄がはっきりしていなければ、伝えることはできない。
2.自分の意見を持つためには、さまざまな読書・経験・思索が必要である。思索のために、多くのメモを書くことはたいへん有益であり、書いているうちに考えがまとまってくるという経験をすることも多いが、それがそのまま意見文にはなるわけではない。多くのメモ書きを整理し、適切に配列するときに、相手に言いたいことを伝える文章になりえる。パスカルの『パンセ』はキリスト教弁証論を書くためのメモ書き集である。
3.自分の意見を伝えたいとき、書き手は、手を変え品を変えて、自分の意見を相手に伝えなければならない。
具体例「たとえば・・・・・」をあげ、
体験「私の経験では・・・・」をあげ、
引用「大先生もこう言っている」をあげ、
エピソード「こんな出来事からも・・・・」をあげて、
ひとつの意見を繰り返す。こういう具体例、体験、引用、エピソードなどについて、準備段階でメモをつくっていくとよい。
4.意見文を書く準備
(1)主題設定・・・自分が関心を持ち、詳しく知っていることがらを設定する。また、身近な問題を取り上げるとおもしろくなる。
(2)取材する・・・その主題について、ほかの人が新聞や本でどんな意見を述べているか、手当たり次第に調べてメモカードを作る。パソコンであれば、一つのフォルダーの中に、メモファイルを集積して行けばよい。
(3)メモを眺めて、自分としてはこのテーマについて、どういう意見を持つかを考えをまとめ、それが論証すべきポイントとなる。
(4)メモを同類ごとにまとめる。
(5)分類されたメモ群を適切な順序に構成する。
5.意見文の構成
意見文の構成(配列順序)には、幾通りも方法がある。主題、想定する読者、長さ、時と場合に応じて、どういう構成をとるかを選べばよい。配列によって、効果の違いが出てくる。
(1)結論先取り型
序論 主題を提示し、自分の意見を述べる
理由1
理由2
理由3
結論 もう一度自分の意見を述べる
* 長所は論旨がきわめて明快になること。
* 与えられている字数が原稿用紙二枚というふうな場合に向いている。
* 短所は、結論が最初から出ているので、おもしろみには欠けること。
*理由1~3に自分の体験、大先生の引用、例などを挙げる。
<実例>
われわれはバッタを食糧資源にすべきである。
理由は第一に飛蝗現象にようって大量に発生すること。
第二に植物をタンパク質に変化させるのに豚や牛よりも効率がはるかによいこと。
第三に殺虫剤をばらまく副作用をさけられることである。
第四に私は蝗の佃煮が大好物である。
ゆえにバッタを食糧資源にすべきである。
(2)序論・本論・結論型
序論 主題提示・・・・ある問題を提示する
本論1
本論2
本論3
結論 以上により、自分としての意見を述べる。
*論文はたいていこういう書き方をする。各本論を時間をかけてそれぞれに整えて行き、長い論文も書ける。
*本論1、本論2、本論3・・・・がそれぞれに小さな論文であり、それぞれに小さな結論を出す。そして、それが最終的結論を支持するように構成する。1,2,3が重層的に3に結び付いていくのが望ましい。
*結論は最後までとってあるので1よりおもしろい。
<実例>
食糧危機と飛蝗の害にいかに対処すべきか。
殺虫剤の大量散布をすべきではないか。だが、殺虫剤の害もある。
昆虫を食糧としている文化がある。蝗の佃煮は日本でも信州で食べられている。
昆虫が植物を食べてタンパク質に変換する効率は家畜のそれよりもはるかにすぐれている。
私は蝗の佃煮が大好物である。だれでも食べられると思う。
昆虫食を食糧とすることは合理的である。ただし食べやすく工夫する必要がある。
(3)起承転結型
起 主題を提示する
承 主題を受けて世間一般的な意見を書く
転 「だが、こうは考えられないだろうか?」と独自の意見を書く
結 承と転を総合し、転を強調して結論付ける
* 漢詩の四行詩、絶句に倣った構成である。新聞のコラムなどは、たいていこの構成。「正(起承)」「反(転)」「合(結)」という弁証法的構成であるともいえる。
*(1)(2)に比べると、慣れるまで少々むずかしいが、起承転結の構成は読者を引き込む力がある。
*原稿用紙5枚程度までの短い意見文に向いている。「転」がポイントである。これがつまらないと、ほんとにつまらない意見文になる。「世間一般でこういわれるが、私もそう思う」ではダメ。「転」で「え?」と思わせて、「それもそうだなあ。そういう考え方もあるか」と思わせなければならない。
<実例>
現代世界の問題の一つは食糧危機の問題であり、飛蝗の害は食糧生産にとって脅威である。
我々は殺虫剤散布をもってこれに対応すべきではなかろうか。
だが、農薬散布の害も大きい。むしろ、昆虫はある地域の人々にとってはバッタを食糧であることに注目すべきではなかろうか。昆虫は牛や豚を育てるよりもはるかに効率的に牧草をタンパク質にすることができる。それに食べてみればバッタなど、エビみたいなものである。
家畜の生産も必要であろうが、大量発生したバッタをたんぱく源として用いることを工夫すべきではないか。
<実例2>
春暁
孟浩然
- 春眠 暁を覚えず
- 処処 啼鳥を聞く
- 夜来 風雨の声
- 花落つることを知る多少なるを