苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

おんな城主直虎  嫌われ政次の最期

 久しぶりに大河ドラマ「おんな城主直虎」のことを思い出す機会があったので、少々メモをしておきたい。戦国時代の終盤、駿河の国を今川家が治めていたとき、その属国に井伊家が治める小国があり、そこを治めるのは直虎という僧形の女城主であり、その家老は小野但馬守政次でした。女城主を演じた女優の名は忘れたが、政次を演じたのは高橋一生である。さて、小野政次は家老とはいうものの、今川が井伊家を監視するために用いていた家老でもあったので、井伊家の中では嫌われ者であり裏切り者とされていた。そして、小野は嫌われ者であり続けることをもって、今川の圧力から主家である井伊家を守ることを自らの任務としていたのである。そうした複雑な小野の忠誠を理解する者はほとんどいなかったが、政次の幼馴染でもあった直虎は、冷酷にふるまう政次の最も深いところを徐々に理解して行き、そしてことばにも行動にも見せないが、深い信頼と愛で結ばれていった。

 しかし、ある事件の中で直虎が今川を裏切ったという嫌疑をかけられ手捕縛され、風前の灯となった時、政次はいったん自らは窮地を脱してのがれたにもかかわらず、あえて戻って来て、自分が直虎を裏切り画策してこのようになったのだと、すべての罪を自らがかぶって今川方から処刑される道を選んだ。

 磔にされた政次の処刑場に僧形をした直虎がやってくる。直虎がこれまで折々そうしてきたように、裏切り者のためではあるが経を読むのであろうと周囲もドラマを見る者も思ったところが、なんと直虎はそこにあった槍を取り上げて政次に駆け寄るや、「この、裏切り者!貴様の名は末代まで裏切り者として伝えてやるわ!」と叫ぶと、政次の胸に槍を突き立てたのだった。対して政次はふと微笑んで、「女のお前に、井伊の家を守ることができるものか!」と血を吐きながら罵倒して死んでいった。

 しかし、このすさまじいやり取りを見ながら、ドラマを見ている者は、そこに今までに見たことのないラブシーンを見たのだった。井伊の家を再興するという志を将来実現するために、彼らは愛と信頼の深い絆で結ばれて、殺し殺されたのだった。

 史実としては、政次は斬首にされたそうである。しかし、シナリオライターはあえて十字架刑を選んだ。意図を感じなくもない。