苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

世の光

マルコ4:21-23

2016年8月7日 苫小牧主日礼拝

4:21 また言われた。「あかりを持って来るのは、枡の下や寝台の下に置くためでしょうか。燭台の上に置くためではありませんか。
4:22 隠れているのは、必ず現れるためであり、おおい隠されているのは、明らかにされるためです。
4:23 聞く耳のある者は聞きなさい。」

1.「あかり」

「あかり」とはランプのことです。イエス様の時代のランプというのは、平らな素焼きの急須のようなかたちをしていました。急須でいえば、お湯を注ぎいれる口から油を入れて、お茶を注ぎだす口に灯心を差し込んで、ここに火をともして使用するものでした。
当時、イスラエルの庶民が住んだ家は日干し煉瓦を積み上げて造られたものですから、窓は小さくてお昼でも家の中はかなり暗かったのです。夜はもちろんですが、お昼でも銀貨を落としたおばさんが、ランプをもって家の隅をさがしまわらねばならなかったとルカ伝15章にあります。そんなふうに生活必需品でした。
あかりをもってきたのに、それを枡の下に隠したり、ベッドの下に隠したりしては役に立ちません。ちゃんと暗いところを照らしてこそ、明かりとしての役割を果たすことができます。当たり前のことです。

では、イエス様はここで「あかり(ランプ)」という譬えで何を話そうとしていらっしゃるのでしょうか。それは、イエス様を信じるあなた自身です。また、イエス様を希望として生きている苫小牧福音教会という信仰共同体のことです。イエス様をわが主と受け入れたそのときから、イエス様は、あなたたを、また、私たち教会を世の光となさいました。
ランプが生活必需品であるように、あなたという存在は、あなたの遣わされた家庭や職場や地域にあって、必需品、必須の存在なのです。また、私たち苫小牧福音教会は、自分たちではそんなふうに思えなくても、神様の目から見るならば、実はこの地域にあって必要不可欠な存在なのです。なぜ必要不可欠といえるのでしょうか。少なくとも二つの理由があります。
紀元前2000年頃、神ご自身が二人の御使いとともにアブラハムに現われたことがありました。それは、ソドムとゴモラの地の滅亡を告げるためでした。アブラハムはそこに甥のロトとその家族が住んでいることを思い、ソドムのために粘り強くとりなしの祈りをしました。その最後に、こうあります。

18:32 彼はまた言った。「主よ。どうかお怒りにならないで、今一度だけ私に言わせてください。もしやそこに十人見つかるかもしれません。」すると主は仰せられた。「滅ぼすまい。その十人のために。」

 ごくわずかであっても、そこに真の神を畏れる誠実な民がいるならば、神はその町を滅ぼすことを猶予してくださるのです。これが神の民がこの世界に、日本にとって必要不可欠な理由の第一です。

教会が必要不可欠な第二の理由は、暗闇の中のランプとして、神様のこの町の人々、この国の人々、この世界の人々に、真理を明らかにするためです。ですから、自分が天地の創造主である真の神さまを信じていること、御子イエス・キリストを信じていることを、世の人たちに隠していてはいけません。それはランプをもってきて、枡の下に、ベッドの下に隠して置くような奇妙なことです。イエス様を信じたならば、私たちは旗印を鮮明にすることが大事なことです。


2.暗闇

(1)神奈川県相模原市
 私たちは、日本社会が闇に覆われているという現実を、先々週、恐ろしいほどに実感させられました。神奈川県相模原市の障害者施設で、「愛国心」に燃える男が、19人の入居者を殺害し、26人に怪我を負わせました。彼は「障害者のせいで税金がかかる」「障害者が減れば税金がそのぶん浮く」などと発言しています。また、植松容疑者は、衆議院議長大島理森自民党)に宛てた手紙には、自分は愛国のために、障害者470名「抹殺」できること、今回の「作戦」では2つの施設の260名を殺害するつもりであり、心神喪失による犯行として服役最長2年間にしてほしいこと、また、5億円の金銭的支援を約束して欲しい旨を記し、二回にわたって安倍晋三様に相談して欲しいと結んでいます。
http://mainichi.jp/articles/20160727/k00/00m/040/020000c

 衆議院議長大島理森

 この手紙を手にとって頂き本当にありがとうございます。
 私は障害者総勢470名を抹殺することができます。
 常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為(ため)と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。
 理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれないと考えたからです。
 私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。
 重複障害者に対する命のあり方は未(いま)だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。
 今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛(つら)い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。
 世界を担う大島理森様のお力で世界をより良い方向に進めて頂けないでしょうか。是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。
 私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。
 衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂けないでしょうか。何卒よろしくお願い致します。
    文責 植松 聖

 作戦内容
 職員の少ない夜勤に決行致します。
 重複障害者が多く在籍している2つの園を標的とします。
 見守り職員は結束バンドで見動き、外部との連絡をとれなくします。
 職員は絶体に傷つけず、速やかに作戦を実行します。
 2つの園260名を抹殺した後は自首します。
 作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。
 逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて下さい。心神喪失による無罪。
 新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類。
 美容整形による一般社会への擬態。
 金銭的支援5億円。
 これらを確約して頂ければと考えております。
 ご決断頂ければ、いつでも作戦を実行致します。
 日本国と世界平和の為に、何卒(なにとぞ)よろしくお願い致します。
 想像を絶する激務の中大変恐縮ではございますが、安倍晋三様にご相談頂けることを切に願っております。
植松聖

(2)弱者切捨て思想と政治の責任
 植松容疑者は大麻を使用していたようですから、確かに、正常な知性でものを考えて行動したことではありません。しかし、ではこの事件は、単に一人の異常者の引き起こした異常な事件として済ませられるかと言うと、そうとは言えません。これは現在の政治が作り出した世相と緊密なつながりがあるからです。二つ理由があります。
第一は、植松容疑者が安倍氏首相に対して敬意と親近感をもっていることが明らかだからです。彼はくだんの手紙の中で二度までも、「是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。」「安倍晋三様にご相談頂けることを切に願っております。」と首相に言及しています。植松容疑者は、安倍政権が彼の主張と行動に賛同してくれると思い込んでいたのです。
第二は、安倍政権支持者たちが、植松容疑者の発言について共感を示す人々がネット上で発言しているからです。〈そうやってみんなすぐ植松容疑者が異常だと言い張るけど行動がよくなかっただけで言ってることは正論だと思う〉〈植松の言ってることはこれからの日本を考えるとあながち間違ってはいない〉〈穀潰しして連中に使われる予定だった税金を節約して、国の役にたったよ彼は。〉彼らは、〈自民と公明が勝ってるのみるとマジでせいせいする〉〈安倍総理を応援してる自分がいる〉といって、障がい者ヘイトスピーチを垂れ流している自らが安倍政権の支持者であることを明らかにしています。彼らは第二、第三の植松容疑者となりうるのです。
 さらに、「愛国を考えるブログ―自民党ネットサポーターズクラブ会員として愛国という視点から自らの意見を論理的に述べるブログ」の中には、「重度障害者を死なせることは決して悪いことではない」という文章があります 。
 自民党ネットサポーターズクラブという団体は、 麻生太郎谷垣禎一安倍晋三を最高顧問とし、小池百合子を相談役としています。このネットサポーターズクラブは、インターネット上でヘイトスピーチを繰り返して、世論を現政権に有利な方向に誘導するために運動をしていて、会員1万人です。
副総理大臣はこの種の失言をくりかえしており、かつ、それは現政権の政策に露骨に反映されています。麻生氏は終末期医療にふれて「さっさと死ねるようにしてもらうとか、考えないといけない。」といい、延命治療について「そのお金が政府の金でやってもらっているなんて思うと、なおさら寝覚めが悪い。」「たらたら飲んで、食べて、何もしない人(=患者)の分の金(=医療費)を何で私が払うんだ。」「90歳で老後が心配って、いつまで生きるつもりだ」と発言しています。
政策についていえば、たとえば昨年から今年精神障害者の障害者年金を1割減額して、7.9万人の人々が支給を停止されたり減額されています。植松容疑者は尊敬する首相や副首相の模範に倣ったのです。政府の弱者切捨て思想の暗闇が、庶民の良心をも覆ってしまって、人間の尊厳ということを見えなくさせてしまっています。これが、現代日本を覆っている闇です。

3. 人間の尊厳の根拠

 このような時代、私たちは世の光として、闇の中で聖書の真理を輝かせる務めがあります。聖書は人間の尊厳について、なんと教えているでしょうか?
「神はこのように、人をご自身のかたちに創造された。神のかたちに彼を創造し、男と女とに彼らを創造された。」創世記1:27
また、御子イエスは、人が、神の似姿に造られた尊い存在であるからこそ、十字架で身代わりとなって命を投げ出してくださったのです。
ここに、人間の人間としての尊厳の根拠があります。どういう家柄に生まれたとか、何ができるとかできないとか、カネがかせげるかせげないとか、偏差値が高いか低いか、健康であるか病気であるかとか、兵隊になれるかなれないかとか、そういうこと以前に、あらゆる人間が神の似姿として造られたゆえに、尊いのです。私たちは、効率主義、功利主義、拝金主義、新自由主義経済、国家主義という暗闇におおわれた時代の中で、私たちは聖書が教えるこの真理を証しする世の光です。
 自閉症という障害をもって生まれた子の父親神戸金史さんという元毎日新聞記者の方が書かれた詩を紹介しておきます。

私は、思うのです。
長男が、もし障害をもっていなければ。
あなたはもっと、普通の生活を送れていたかもしれないと。

私は、考えてしまうのです。
長男が、もし障害をもっていなければ。
私たちはもっと楽に暮らしていけたかもしれないと。

何度も夢を見ました。
「お父さん、朝だよ、起きてよ」
長男が私を揺り起こしに来るのです。
「ほら、障害なんてなかったろ。心配しすぎなんだよ」
夢の中で、私は妻に話しかけます。

そして目が覚めると、
いつもの通りの朝なのです。
言葉のしゃべれない長男が、騒いでいます。
何と言っているのか、私には分かりません。

ああ。
またこんな夢を見てしまった。
ああ。
ごめんね。

幼い次男は、「お兄ちゃんはしゃべれないんだよ」と言います。
いずれ「お前の兄ちゃんは馬鹿だ」と言われ、泣くんだろう。
想像すると、
私は朝食が喉を通らなくなります。

そんな朝を何度も過ごして、
突然気が付いたのです。

弟よ、お前は人にいじめられるかもしれないが、
人をいじめる人にはならないだろう。

生まれた時から、障害のある兄ちゃんがいた。
お前の人格は、
この兄ちゃんがいた環境で形作られたのだ。
お前は優しい、いい男に育つだろう。

それから、私ははたと気付いたのです。

あなたが生まれたことで、
私たち夫婦は悩み考え、
それまでとは違う人生を生きてきた。

親である私たちでさえ、
あなたが生まれなかったら、
今の私たちではないのだね。

ああ、息子よ。

誰もが、健常で生きることはできない。
誰かが、障害を持って生きていかなければならない。

なぜ、今まで気づかなかったのだろう。

私の周りにだって、
生まれる前に息絶えた子が、いたはずだ。
生まれた時から重い障害のある子が、いたはずだ。

交通事故に遭って、車いすで暮らす小学生が、
雷に遭って、寝たきりになった中学生が、
おかしなワクチン注射を受け、普通に暮らせなくなった高校生が、
嘱望されていたのに突然の病に倒れた大人が、
実は私の周りには、いたはずだ。

私は、運よく生きてきただけだった。
それは、誰かが背負ってくれたからだったのだ。

息子よ。
君は、弟の代わりに、
同級生の代わりに、
私の代わりに、
障害を持って生まれてきた。

老いて寝たきりになる人は、たくさんいる。
事故で、唐突に人生を終わる人もいる。
人生の最後は誰も動けなくなる。

誰もが、次第に障害を負いながら
生きていくのだね。

息子よ。
あなたが指し示していたのは、
私自身のことだった。

息子よ。
そのままで、いい。
それで、うちの子。
それが、うちの子。

あなたが生まれてきてくれてよかった。
私はそう思っている。

父より 

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