苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

菅野完『日本会議の研究』・・・生長の家原理主義者たちがその中核

1.話題のベストセラー、菅野完『日本会議の研究』を借りて読むことができました。amazonに注文してからもう一ヶ月近くなるですが、重版がかかっているとか。また、日本会議から出版差し止め圧力がかかっているとかいう話もあります。どちらが本当なのか私にはわかりません。
 ネット情報をかき集めただけの本なのかな、と、それほど期待しないで読んだのですが、そんなことはなく、安倍政権を突き動かしているというか、閣僚の8割が日本会議メンバーというほとんど安倍政権そのものである日本会議の淵源が、新宗教生長の家原理主義運動であることが克明に調べ上げられていました。谷口雅春が教祖である生長の家は、1983年に政治運動からいっさい手を引いたそうで、それまで政治運動にかかわっていた民族派学生運動の家の教会信者たちが外に出て、連携しつつ日本会議日本政策研究センターなど安倍政権をコントロールする運動を展開してきたということです。
 日本会議のイデオローグたちが、学問の世界では無名の人々であったり、ずぶの素人であることをもって軽視するむきもあるようです。「集団的自衛権は合憲だと解釈する憲法学者はたくさんいる」と官房長官がのたまいましたが、ふたを開けたら学界から相手にされない3人だけであったように。
 しかし、実際に、この団体が組織運動をもって政府を突き動かしているのですから、ただごとではありません。その中核を担う「一群の人々」は社会の右傾化に乗じてにわかに集まったという人々ではなく、数十年をかけて教祖谷口雅春が唱えた「明治憲法復元」を究極目標として、ぶれることなく地方組織を営々としてつくり、諸宗教団体をまとめあげて集票装置を用意して、今日にいたっていることがわかりました。
 こうした地道な組織作りをしてこず、浮動票頼みの運動は、よわよわしいものですね。ちなみに、聞くところによると、自民党の地方組織率は3割、公明党が1割、共産党が1割で、あとは浮動票ということです。
 日本会議なるものの中核が、生長の家原理主義者たちだという事実を克明に世に示したこの本は出版取りやめになるのでしょうか?微妙なところだと思います。とにかく、この実態が知られることは、日本会議にとってはとても不都合なことのようです。
 本書で紹介される中心人物たちが、こちらに紹介されています。
http://joe3taro.com/?p=1327


2.日本会議組織力・動員力・・・諸宗教団体
 組織ということでいうと、日本会議組織力・動員力の源泉として、筆者は、通常教えの違いからまとめにくいはずの、もろもろの宗教団体をまとめていることを指摘していました。日本会議が彼らをまとめるキーワードは、<皇室中心、改憲靖国参拝、愛国教育、自衛隊海外派遣>といったものです。
 日本会議にかかわっている宗教団体のリストには以下の名があります。
神社本庁伊勢神宮熱田神宮靖国神社明治神宮岩津天満宮黒住教オイスカインターナショナル、大和教団、天台宗延暦寺念法真教仏所護念会教団、霊友会国柱会、新生儒教教団、キリストの幕屋崇教真光解脱会モラロジー倫理研究所。・・・おそらく、これらの諸団体の信者たちは、自分たちがこんなにいろんな宗教といっしょに巻き込まれて運動しているのだということを知らないのではないかと思われます。

 ここからは筆者の感想。なぜ、こんないろいろな宗教団体がまとめられたのか?一つは、彼らが共感するのが上にあげた5つのキーワードであることでしょうね。団体によって個人によって、5つのキーワードのどれに共感するかについては濃淡があるでしょうけれども。
 もう一つは、生長の家そのものでなく、生長の家が政治運動から手を引いたために、浮き上がった生長の家原理主義者たちが中核になったので、表向き、「生長の家」を看板にせずに、諸宗教を巻き込むことができたのであろう、ということです。