苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

景気はよくなっている?悪くなっている?・・・数字のマジック

 国会中継をラジオで聞いていて違和感があった。野党議員が国民の生活困窮を訴えても、首相は「日本の景気がよくなっているんです」とか、「日本は裕福です」とか平気で発言する点である。なぜだろう?東京新聞の記事についてラジオが取り上げていたのでメモしてみた。

1.相対貧困率の2つの調査
 野党議員は、厚生労働省による2012年の国民生活基礎調査の結果を取り上げて、相対貧困率は16.7パーセントという数字を挙げた。
 他方、首相は総務省の2009年の全国消費実態調査を取り上げて、相対貧困率は10.1パーセントだとした。
 調査方法と年代の違いが両者の相対貧困率の結果として現れている。野党議員の取り上げた厚生労働省の調査は全国2000箇所における聞き取り調査だったので貧富バラバラに満遍なく行われたのに対して、首相の取り上げた総務省の調査は家計簿の調査であるので、生活に困っていて忙しい人々は調査にそもそも応じない傾向があるという。
 要するに、安倍首相の取り上げた貧困率10.1パーセントという総務省の調査結果は、7年前の生活が楽な人が調査対象であり、他方、野党議員が取り上げた貧困率16.7パーセントという厚生労働省の調査結果は、2012年の国民生活の全体像を現わしたものである。生活が楽な層をピックアップして調査したら貧困率が低くなるのはあたりまえのことである。
 

2.賃金についての2つの調査
 安倍首相はアベノミクスの効果で賃金が上がっているといい、野党議員は下がっているという。どちらがほんとうなのか?
 安倍首相がいう賃金に関する数字は、経団連による調査であり、安倍政権発足まもない2013年は1.83パーセント上昇、2014年は2.28パーセント上昇、2015年は2.32パーセントと三年連続で上昇している。ところが経団連の調査対象は東証一部上場の従業員500人以上の大企業250社の正社員のみである。
 野党議員があげたのは厚生労働省による賃金調査で、2012年は0.9パーセント下がり、2013年には0.9パーセント下がり、2014年には2.8パーセント、三年連続で下がっている。こちらは調査対象が、従業員5人以上で正社員・非正社員あわせた数字である。日本は90パーセント以上が中小企業であるから、厚生労働省による調査が日本の労働者の賃金の実態を表している。


むすび
 結局、アベノミクスによって、国民全体としての貧困率は上昇し続け、国民全体としての賃金は下がり続けているというのが実態である。しかし、一部大企業の社員たちのみは、賃金が上昇している。大企業は空前の内部留保をたくわえているのだから、少しは賃金が上がるのは当たり前である。要するに、アベノミクスで大多数の国民は貧困状態になり、ごく一握りの国民のみが景気がよいというのが実態である。つまり、例のトリクルダウンは起きていません。最初からわかりきったことですが。
 こうして見ると、安倍さんはよく「国民のために」とかおっしゃいますが、彼にとって国民とは経団連に属する従業員500名以上の大企業の正社員のみを意味しているようです。