苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

再掲載 私たちが九条を失うとき

(2014年5月19日の記事に追記をつけた)
 「解釈改憲」よってであれ、本格的改憲によってであれ、憲法9条を失う時、私たちの国には具体的に何が起こるだろうか。

(1) 9条を失うと、新自由主義経済政策で作り出されたワーキングプア自衛隊国防軍)に就職し、戦場で「敵」を殺し「敵」に殺されることになる

 米国ではベトナム戦争後、徴兵制はやめた。その代わり、20―30歳代の「ワーキングプア」を政策的につくりだすことによって、彼らを兵士としてリクルートしている。米国では軍隊が高校にリクルートにやって来て、軍隊に行けば退役後、奨学金や就職の世話をするといって宣伝している。しかも、その約束はしばしば空手形に終わる。戦死するか、戦死しなくても、戦地で心的外傷PTSDを負って人格が破壊され、ある人たちは自殺してしまうからである。


(2) 9条を失うと、戦死者を祀るために靖国神社護国神社が息を吹き返し、憲法20条(政教分離・信教の自由)は有名無実となる。

 「国が戦死者を顕彰しないで、だれが戦争に行くものか」と中曽根総理が言ったとおり。戦死者が出れば靖国神社に戦死者を祀るべきだという世論が支配的になり、靖国国家護持という動きになろう。そして政教分離・信教の自由はないがしろにされる。自民党改憲草案20条を見よ。
 政府はメディア、ネット、教育を操作して靖国参拝を拒む人々を非国民呼ばわりするようになる。

 

(3)9条を失うと、海外駐在員・人道支援の医師・ボランティアたちの生命が危険にさらされるようになる。

「9条があるから、海外では、これまで絶対に、銃を撃たなかった日本。それが、ほんとうの日本の強味なんですよ。具体的に、リアルに、何よりも物理的に、僕らを守ってくれているものを、なんで手放す必要があるんでしょうか。危険だと言われる地域で活動していると、その9条のありがたさを、つくづく感じるんです。

日本は、その9条にのっとった行動をしてきた。だから、アフガンでも中東でも、いまでも親近感を持たれている。これを、外交の基礎にするべきだと、僕は強く思います。」(中村哲 アフガニスタンで、水源確保事業など、現地での支援活動を続ける中村医師の言葉)

 危険な目にあうのは、医師・ボランティアだけでなく、海外駐在員も同じである。首相は海外に住む国民を守るというが、かえって危険な目にあわせることになる。ちなみに、集団的自衛権など行使しなくても、緊急時には自衛隊航空機・船舶は邦人保護のために海外に出動できるとすでに自衛隊法84条3項に定められている。


(4)9条を失うと、日本国内でもテロの恐怖に怯えて生活しなければならなくなる。

 米国社会、英国社会はテロに怯えながら生活をしている。たとえ戦場が遠くても、グローバル化した現代ではテロリストは国内に入ってきて防ぎようがない。今、私たちがさほどテロに怯えた生活をしないでよいのは、日本の自衛隊が9条に制約されて敵を撃つことをしないからである。だが、米国の戦争に加担する姿勢を小泉時代に見せたときから、日本は中東・中近東の人々からの信用を失いつつあって、海外で日本人もターゲットにされるようになっている。9条を失って、本格的に米国の戦争に加担するようになれば、日本人は米国に敵対する国の人々から敵とみなされることになるので、国内でテロが起こることは避けられない。

 首相は集団的自衛権を行使することで、国民を守ると宣伝しているが、実際には、まったく逆の結果を生むことは必然である。


(5)9条を失うと、PTSDで苦しむ帰還自衛隊員の差別と犯罪と自殺が増える

 ベトナム戦争後、米国社会の深刻な問題は、戦地で心的外傷(PTSD)を負った帰還兵の問題である。数年前戦死者よりも、帰還兵の自殺者のほうが多くなったという報道に触れた。戦場は、殺人、強盗、破壊工作といったことが賞賛されるという倒錯した価値観がある。帰国したとたん、それらが犯罪とされるので不適応を起こす。あたりまえのことである。人は、もともと隣人とともに生きるものとして作られているので、隣人を憎み殺すとき精神はおかしくなる。帰還兵の家庭は崩壊し、犯罪と自殺が増えるのはあたりまえである。

 イラク帰還の陸上自衛隊員の自殺率は日本人の平均の14倍以上にもなります。

参照> http://webronza.asahi.com/bloggers/2012100300002.html


(6)9条を失うと、日本国内での警察・公安の取り締まりが厳しくなる。

 九条をうしなうとテロの脅威が増えるから、テロリストを警戒して、警察官僚・公安官僚はいろめきたって、国民を保護するという名目でますます法律をたくさんつくり出すことになる。ひとつ事件があれば、破壊防止法は適用され、防止法、共謀罪を取り締まる法律などは世論が後押しして、さっさと決められてしまう。そして、日本人は思想信条の自由、集会結社の自由、信教の自由、言論出版の自由といった基本的人権を自ら放棄することになる。
追記:米国でブッシュ大統領イラク戦争に乗じて「愛国者法」をつくって、国民の人権を奪ったのと同じ事をするだろう。政府は中国のようにネットにも手を突っ込んでくるだろう。すでに、ネット右翼チームを雇っているが。


(7)9条を失うと、日本経済は戦争中毒になる

 軍需産業は一時的に景気がよくなり、軍需産業頼みの国家経済となっていく。ところが、兵器は戦争がないと消耗せず10年経つと旧式化してしまうから、10年ごとに「在庫一掃セール」と呼ばれる戦争をしなければならなくなる。財界は戦争をするように政府に圧力をかける。つまり、戦争依存症状態に陥ってしまう。米国はまさにその典型。9条を失うならば、わが国経済も同じく戦争依存症になってしまう。

追記:そうして、ますますその戦場となった国々の人々から恨まれ、海外でも国内でも日本人・日本企業を標的にしたテロが増えていく。テロが増えていくと為政者は「国民の生命と財産を守る」とお題目を唱えて軍需産業に税金を注ぎ込み、政官財の人々のみが肥え太り大多数の国民はますます貧しくなる。そしてワーキングプアは志願して戦場に行く。