苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

小林よしのり『戦争論』の手法について

 小林よしのり戦争論』シリーズの影響を受けて、「愛国心」にめざめてネトウヨ化した人々が結構多いようである。なぜ、これほど支持されるのだろう。鍵は印象操作・感情操作だろう。
感想をメモしてみる。

1.漫画という媒体なので、(一般の漫画よりは活字が多いとはいうものの)漫画OK世代にとっては、活字だけの本を読むより手軽である。

2.漫画を用いて印象操作・心理操作をする。
 小林自身をはじめ肯定したい人々を描くときは現実よりはるかに美化して描き、小林が嫌う「サヨク」の言論人を醜く描くという手法をとることで、読者にサヨク言論人に対する生理的嫌悪感を植えつける。そうすると、読者は自分はあんな格好悪い連中の仲間と思われたくないと、心のどこかで思うようになる。
 この洗脳を解くのはかんたん。右翼言論人の顔写真と、サヨク言論人の顔写真を並べて眺めるがいい。右翼がハンサムでサヨクが不細工なわけではなく、しばしば逆でさえあるという現実に目覚めるだろう(笑)。

3.部分をもって、全体であるかのような印象操作をする。
 これが効果的なのは、特に写真。従来、教科書などで、大陸における日本軍の残虐行為とされてきた証拠写真が、実は、そうではなかったというケースをいくつか挙げて誇張することで、あたかも日本軍による残虐行為全てが事実でなかったかのように印象操作する。(しかも、教科書掲載のようなスタンダードな写真の真相を知っているということで、読者は一般人に対して知的優越感を持つようになる。)
 従軍慰安婦についても同じように、「強制連行」を示す文書資料が見当たらない事実をもって、従軍慰安婦があたかもまったくなかったかのようにごまかす手法がとられている。実際には、軍は業者に依頼して彼女たちを集め、軍の設置した施設で、軍の管理下でことをなしていた。
 この洗脳を解くには、少し努力が必要。部分でなく全体を見るために、左右を問わずにしっかり学ぶこと。

4.戦争論の読者は<自分は洗脳されていたが、今は真相を知るようになったという意識を持ち、自分と認識を異にしているサヨクの人々は、まだ洗脳されているのだ>と思いこんでしまう。実は、読者自身が印象操作・感情操作・心理操作されてしまっているのであるが。これはカルトの技法である。
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 『戦争論』は近年のネトウヨの人たちの頭の中を理解するために、読んで見る必要もあるように思います。古本なら100円未満で手に入りますしね。戦争論1なら6円!送料250円だけど。

 私としては、聖書における歴史記述の姿勢から、たとえ自国・自分にとって不愉快で不都合であったとしても、事実にきちんと向かい合う姿勢というものがなによりも大事だと思っています。恩師の口癖ですが、「有ったことを無かったかのように、無かったことを有ったことであるかのように」するのが一番よくない。