苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

今、トリクルダウンしているもの

 アベノミクスは、大企業が儲かれば、それはやがて中小企業をうるおし、労働者の懐もうるおすことになるのだというトリクルダウン説を唱えて、大企業優遇政策を徹底している。そして、税収の不足分は、さらなる消費税増税でまかなおうという算段である。ちなみに、trickle downとは「滴り落ちる」という意味。
 だが、トリクルダウン説は時代錯誤である。大企業が国内にあったかつての時代ならば、中小企業も労働者も大企業の利益のおこぼれにあずかる可能性はあった。だが、今日、大企業は多国籍化・無国籍化しているので、法人税が安い国へとさっさと本社を移し、労働力が安い国へさっさと工場を移してしまう。日本名の会社名であっても、中身は無国籍であり、日本に法人税も納めるつもりもなければ、日本人の雇用を維持する責任も眼中にない。(大企業優遇税制のおかげで)トヨタが過去五年間、法人税を払ってこなかったのは有名な話である。他は推して知るべしだ。無国籍企業の眼中にあるのは、企業利益のみである。したがって、経済におけるトリクルダウン説は時代錯誤の謬説である。
 現政権下において生じているトリクルダウンは、むしろ、<己が欲望を達成するためには、平気でウソをついてよい>という風潮のトリクルダウンではなかろうか。「福島第一原発はコントロールされており、その放射能は港湾内にブロックされている」と世界に向かって(東電さえも驚く)嘘をついてオリンピックの東京誘致に成功した首相を見て、日本社会の中で「嘘をついてはいけない」というモラルの崩壊が生じているように感じられる。
 福島産だということで一本6円に買い叩いたキュウリを、東京で「被災地支援」と銘打って他の産地のキュウリと同じ42円値段で売って恥じない流通業者。
http://togetter.com/li/382181
 従軍慰安婦問題で朝日新聞が間違いを犯したことをきっかけに、従軍慰安婦問題はそもそもなかったかのような嘘宣伝をし、自社の新聞の購読者数をふやすために奔走しているY新聞とS新聞。そして、尻馬に乗る右翼評論家。
 さらに、関東大震災において朝鮮人虐殺はなかったというようなうそを流しているネット住民。
http://01sep1923.tokyo/

 ・・・政治の世界はドロドロしたものであることは周知のこととはいえ、国のトップに立ち、もっとも国民の目につく首相には、最低限の道徳は守る責任があると思う。さもなくば、社会そのものが壊れてしまう。今すでに壊れてきている。これがあの人のいう「美しい国」なのか。