苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

聖書考古学者ロン・ワイアットとそのグループについて

 このHPで、出エジプトルート、ソドムとゴモラについて、ロン・ワイアット(1933−1999)のグループの発見を紹介しました。
 ワイアットは、セブンスデーの信徒であり、アマチュアの考古学者でした。英語版のWikipediaによれば、ロン・ワイアットの発見については、学界はほぼ無視しているそうです。友人の聖書考古学の専門家に聞いてみたら、ワイアットの名は聞いたこともないと言っていました。とはいうものの、ミデヤンのシナイ山は一定の認知を得ているらしく、Bible Hubというネット上の聖書ソフトの最新地図には、伝統的シナイ山とともに掲載されています。
 筆者自身は、ワイアットの発表したものは玉石混交で、「これはどうかな?」と疑問あるものが含まれていますが、検証もせず全面的無視というのはよろしくないと思います。しかし、残念ながら、こういう態度はどんな分野であれ学界の専門家たちにありがちな態度です。学界は旧来の権威ある通説にしばられ、新たな提言をするにしても、通説を前提として改良したような論文しか通らない場合が多いからです。原子力学会でも、生物学会でも、経済学会でも、聖書学会でもそういうことがあるようです。イエス様の時代の律法学会もそうだったようですね。
 ですから、大きな発見というのは、かつてシュリーマンがトロヤの発掘でなしたように、素人によってもたらされることがあるものです。素人は学界の旧来の通説に縛られていないからです。むろん素人仕事には危ういものがあるというか、ほとんど危ういでしょう。ワイアット・グループの発見も玉石混交だなあと、率直なところ感じます。
 しかし、シナイ山は聖書に書かれているとおりアラビア半島のミデヤンの地に位置しているという説、および、「葦の海」はアカバ湾であるという説については、彼のグループが公表している映像が捏造したものでないかぎり、十分な説得力をもっています。これは玉でしょう。
 彼と彼のグループのHPには、ほかにノアの箱舟、ソドムとゴモラ、そして契約の箱の「発見」が掲げられています。みなさんは、どれが玉でどれが石だと判断なさるでしょうか。いずれにしても、自分の目で見て、自分の頭で考えることが肝心です。

☆Wyatt Archaeological Research HP
http://www.wyattmuseum.com/mt-sinai.htm

youtubeで「聖書考古学」をキーワードとして検索すると、たくさん出てきます。

<追記2015年1月>
 ロン・ワイアットの「ノアの箱舟」は自然物であって人工物である可能性は10%にすぎないという主張をする「創造科学」の立場の人々もいます。こちらを参照。
http://seesaawiki.jp/transact/d/%c1%cf%c2%a4%cf%c0%bc%d4%a4%ac%bb%c8%a4%c3%a4%c6%a4%cf%a4%a4%a4%b1%a4%ca%a4%a4Ron%20Wyatt%a4%ce%a5%ce%a5%a2%a4%ce%c8%a2%bd%ae