苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

堤未果『アメリカから自由が消える』扶桑社

 本書には、ブッシュJr.が911事件の直後、火事場泥棒のごとくに定めた「愛国者法」によって始まったアメリカでの「言論の自由」弾圧の現状がレポートされている。オバマ政権でも状況はさして変わらないという。
 「集団的自衛権を行使して米国の戦争に付き合うならば、日本社会もまたテロの恐怖におびえてこんなふうになることは避けられまい。
 目にとまったところをメモしておく。

1.飛行機搭乗拒否リストが激増
911以前に飛行機搭乗拒否リストにはわずか16人だったが、911以後「搭乗拒否人物」は44000人、東条は認めるが空港で追加のセキュリティチェックを要する人物は7万5千人にのぼる。テロリストではなくても、環境団体、キリスト教系平和活動家、市民派弁護士、リベラル派の上院議員や芸能人、大学教授がこの搭乗拒否リストに載せられ、また4歳の子供も同姓同名といった過ちでリストに載せられていたりする。


2.惨事に便乗して立法する
アメリカの歴史を振り返れば、異常なスピードで通過する法案というのは必ず政府による緊急事態の際につくられるのがわかります。そしてそのどれもが、のちになって国民にとって最も危険なものだったとわかるのです。」p56
国民感情を激しく揺さぶる出来事があるたびに、『議会での議論』という立法過程を無視して成立する法律の数は年々増えている。」(p57)


3.ブッシュは非公開軍事法廷を設置
「2006年11月13日、ブッシュ大統領は次のような演説を行い、テロリストを裁くための非公開軍事法廷をさらに強化する内容の大統領命令に署名した。・・・非公開の軍事法廷が設置されるのは第二次大戦以来だ。」p84
「つまり現在アメリカでは、一度容疑をかけられたら最後、憲法で守られているはずの人権その他は、すべて剥奪されるようになったということです。」(アムネスティのビンセント・フローレンス)(p86)


4.取り締まり対象の犯罪の定義をあいまいにする目的
「2007年10月23日に賛成多数で下院を通過した法案の名は「過激思想取締法案」だ。成立すればインターネット上のブログその他に検閲がはいり、過激で暴力的な思想>が取り締まられることになる。」(p131)
「『テロ対策法』は言わずもがな、『女性差別禁止法』でも『性犯罪取締法』でも、なんでもよいのです。歴史を振り返れば、これは世界中で行われてきたやり方です。もちろんあなたの母国日本でもかつてあったでしょうし、これからもいつだって起こりうることでしょう。どんな法律が一緒に出てくるかですって?要は定義があいまいで、主観によっていくらでも変えられるものであればいいんです。後には政府に任命された非公開委員会が、それをたてに誰でも逮捕するようになりますから。」(pp133,134)


5.戦争・安全保障の名の下に権力を集中する危険
「民主主義にとって最大の脅威とは戦争や安全保障の名の下に、司法・立法・行政などすべての権力が一か所に集中することだ。」「令状なしの逮捕や政府による盗聴、裁判なしの拷問、非公開の軍事法廷の設置、反体制的人物への攻撃やメディア支配、そして戒厳令まがいの自由の制限など、かつて建国者たちが恐れたことの数々が、再び息を吹き返した」p194


6.「命を顧みず言論の自由を守ろうと動き続けるアメリカ市民は教えてくれた。愛国心というものは、星条旗を掲げることや大統領の言葉をうのみにすることでは決してなく、政府に憲法の理念を守らせることに主権者としての責任を持つことなのだと。