苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

政教分離の重要性

 新約聖書黙示録13章という箇所には、「海からの獣」(皇帝・国家権力)が「竜」(サタン)から権威を得た時に、傲慢になって軍国主義に走り、そのとき、「地からの獣」(御用宗教団体)が皇帝崇拝の手伝いをして国民を洗脳し、反対者を弾圧するという状況を記しています。つまり、聖書は政教癒着の危険性、政教分離の重要性を教えているわけです。
 欧米のキリスト教会は御用宗教化したときに、その宗教的生命を失い三十年戦争など宗教戦争の要因となりました。江戸幕府は仏教寺院を御用宗教化して、檀家制度によってこの列島に住む人間の宗教統制をさせ、切支丹弾圧をしました。
 明治維新政府の伊藤博文は、欧米列強に対抗するため中央集権化を図って、天皇を現人神に仕立て上げて天皇を中心とした国家神道をつくりました。江戸幕府が檀家制度で国民を宗教統制しようとしたのに代えて、それまで全国にバラバラに存在した神社を、伊勢神宮を頂点としてヒエラルキーをつくり、氏子制度で国民の宗教統制をはかりました。教育勅語軍人勅諭は、現人神である天皇のために命を捨てることこそ、日本人にとって最高の栄誉であると教育しました。また、いっぽうで幕府とゆかりのある仏教・他宗教を弾圧しました。
 国家神道の管轄は神祇官教部省・文部省と移りますが、その基本方針は一貫して国民の皇民化です。靖国神社護国神社は文部省でなく陸海軍の管轄下に置かれたという意味で特殊で、軍事的色彩がより強くはありますが、本質的には文部省管轄の国家神道の目指したことと同じです。

 ヨーロッパは政教癒着のもたらす宗教戦争の悲惨に懲りてウェストファリア条約を結びました。しかし、明治政府がその歴史の知恵に学ばず国家神道をつくった結果、日本は暴走しましたが、ついに先の大戦で破たんしました。戦後、日本国憲法20条で政教分離を決め、文部省管轄の国家神道包括宗教法人神社本庁となり、靖国神社は別に単立宗教法人となりました。前者は「神社本庁」と名乗っていますが、役所ではなく単なる一宗教法人です。しかし、今なお多くの国民は政教分離の重要性に気づいていないのが危険なことだと思います。
 実際、自民党憲法改正草案では20条を改変して、国家神道復活が企てられています。かつて国民儀礼と呼ばれた神社参拝が社会儀礼と呼びかえられて、公教育に神社参拝を持ち込むことを可能とすることを意図しています。

現行憲法
第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

自民改憲草案
二十条 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。