苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

米国政府の原爆投下の意図と残留放射能被害の隠蔽について

 広島、長崎の原爆投下にかんする米国政府の表向きの主張は、「これ以上米軍将兵の犠牲をふやすことはできず、そのためには、原爆を投下するほかなかった。」ということです。米国人の多くも、そのように理解しているようです。しかし、ある人々は、当時日本軍はもう疲弊しきっていて、原爆を投下せずとも、早晩敗北することは目に見えていたという主張します。客観的には事実そのとおりでしょうが、陸軍と大本営発表で洗脳されていた国民の大多数は本土決戦に備えてもいたというのは、私の父母から聞いたことを思い出しても事実のようです。
 一方、米国の国内事情はどうであったかというと、沖縄戦の犠牲が大きすぎて米国内には厭戦気分が生じてきていて、日本本土決戦となるともはや戦争遂行が困難という状況だったそうです。一応米国は民主主義の国ですから、政府は国民の支持を失うと戦争ができなくなるわけです。たしかに、もし本土決戦ということになったならば、その戦争はベトナム戦争のような泥沼になっいていたことでしょう。そういう意味にかぎっていえば、米国の公式の主張はほんとうだろうと思います。


 ですが、上の公式見解とは別に、原爆投下の意図として、米国の対ソ戦略があったと言われます。米国は8月には満州侵攻をすることになっていたソ連を警戒していました。そして、戦後、ソ連に対して、圧倒的優位に立つために、原爆投下で自国の力をアピールしたかったそうです。
 ところで、米国は世界大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人の虐殺 の非人道性をアピールしていました。そして、米国が対ドイツ戦に参戦することの正当性を国民に訴えていました。ところが、実際に原爆を投下してみると、その一般市民の被害は、米国政府が非難し続けていたナチスホロコーストの被害の数倍から数十倍に及びました。これは米国政府の予想以上でした。あまりにも被害が大きすぎ、非人道的すぎることがわかると、政権に対する国民の支持を失ってしまいます。
 そこで、米国政府は爆弾投下の後は原爆の効果をアピールするどころか、その被害をひた隠しにしなければならなくなりました。米国政府とそれに追従する日本政府は、今もって、残留放射能による健康被害はないという立場を取り続けています。そのために、先のイラク戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾による健康被害で苦しむ米国兵士たちの苦しみをも、根拠のないことであるという立場を米国政府は取り続けています。なんという欺瞞。
 福島原発による放射能拡散によってもたらされる被害について、長年の広島・長崎における放射線被害の研究が、低線量内部被曝をずっと無視してきたために、ほとんど役に立たないのは、そういう背景があります。311以降、国家や政治の欺瞞性について実態があばかれるようなことが多くなって、「国家権力には、人間の罪とともに、嘘つきで人殺しの悪魔の働きが深く絡んでいるのだ」という聖書の教えを改めて思い出すことです。国が軍拡に走り、偽りをもって国民を欺こうとしているとき、私たちは悪魔の動きをそこに察知すべきなのでしょう。

「悪魔は初めから人殺しであり、真理に立ってはいません。彼のうちには真理がないからです。彼が偽りを言うときは、自分にふさわしい話し方をしているのです。なぜなら彼は偽り者であり、また偽りの父であるからです。」ヨハネ8章44節