苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

TPPと兵糧攻め<追記あり>

6:24この後スリヤの王ベネハダデはその全軍を集め、上ってきてサマリヤを攻め囲んだので、 6:25サマリヤに激しいききんが起った。すなわち彼らがこれを攻め囲んだので、ついに、ろばの頭一つが銀八十シケルで売られ、はとのふん一カブの四分の一が銀五シケルで売られるようになった。(列王記下6:24,25)


 五十代半ばの私の世代は、生まれてから飢えというものを経験したことがない。父母から、戦中そして終戦後の食糧難のひどさというのを話としては聞かされたけれど。北イスラエル王国の首都サマリヤをシリヤの王ベンハダデが包囲して兵糧攻めにしたとき、サマリヤは激しい飢饉に見舞われた。列王記にはほかにも類似の記事がいくつも出てくる。なかには子どもを食べたという恐ろしい記事までも出てくる。
 気になっているのは、TPP加入によるこの国の食糧安全保障体制の崩壊である。もともとわが国の食糧自給率はカロリーベースで3割くらいしかなくて、それを4割までなんとか持ってゆこうとしていた。そんな状況でも米だけは10割を維持してきた。だが、TPPに入るならばブランド米以外は、9割壊滅すると予測されている。日本の米は、1キロ1500円くらいだが、TPP参入で日本に流れ込んでくる米は1キロ500円くらい。しかも、20年前の不作のときに緊急輸入した、日本人の口に合わないインディカ米ではなく、ジャポニカ米である。勝負にならない。
 別に日本の米農家がぼろもうけしているわけではない。地平線まで水田という環境でつくられる米の値段が、日本の水田でつくられる米の値段とちがうのは当たり前である。だから、日本の農地を大規模化すればよいと、ばかげた机上の空論を述べている政治家や官僚がいる。日本のどこにそんな土地があるというのか。
 大規模化しなければ米つくりが成り立たない状況になれば、中山間地の米農家はすべて崩壊する。そうなれば、山に降る雨は、水田に蓄えられることなくそのまま河川に流れ込むようになり、下流に大洪水を引き起こす。日本の水田の保水力は、すべてのダムの3〜4倍と言われる。
 憲法9条を変えて、集団的自衛権を行使できるようにして日本を軍事的に自立できるようにして強化するとかいうけれど、腹が減っては戦はできない。兵糧攻めにあえば、コメを売ってくれる国の奴隷になるほかない。いや、実は、彼らの言うことは矛盾してはいない。そもそも「集団的自衛権の行使」というのは、米軍の世界戦略のなかで、わが国の「国防軍」を使役してもらうことを意味しているからである。
 ほんとうに矛盾しているのは、TPP参加にせよ自衛隊の米軍の手下化にせよ、そんな政策を「日本を取り戻す」というスローガンでまとめていることである。・・・そんなことをある人と話していたら、「いや、『日本を国民から権力者・富裕層に取り戻し、アメリカに売り渡す』という意味だよ。」と言っていた。ウ〜ン、なるほど。でも、悲しすぎる。・・・もっとも、アメリカという国は、日本以上に、一部富裕層のみ肥え太って、庶民は呻吟しているから、「アメリカに売り渡す」というより、「穀物メジャー、グローバル企業に売り渡す」のほうが正確だろう。
 また、TPPで労働市場規制撤廃をすれば、きわめて低賃金の労働者が外国からはいってくる。日本人労働者はさらに低賃金化されて、ますます生活は苦しくなる。結婚も子育ても夢の夢となり、ますます少子化する。筆者が小海に引っ越してきた20年前、白菜・レタスの収穫のアルバイトは日本の若者たちだったが、十年ほど前から中国の「研修生」という名目の超低賃金の労働者が入るようになった。今では、中国人とフィリピン人がほとんどである。誤解のないように言っておくが、外国人労働者が悪いのではない、日本の政策が悪いのである。
 また、TPPに入れば、医療費、医薬品の値段もはねあがる。
 ありとあらゆる分野で、TPPは百害あって一利なしである。いや、百害を99%の国民がこうむり、一利をグローバル企業の経営者が飲み込んでしまう。グローバル企業というのは、日本出身のブランドであるが、それは別に日本に税金を落とすわけではないから、かつての日の丸企業のように間接的にもそういう企業の利益が日本国民に還元されることはない。


 今朝は、なんだか、TPP反対の支離滅裂の黙想になってしまった・・・。私がここで腹立てていても、ごまめのはぎしりにすぎないので、歴史を摂理してくださるお方にお祈りしよう。


追記>貧困大国アメリカについて
    http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20130209/p2

    桔梗 キキョウ