苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

自民改憲案・・・「最近の若いもんは・・・」?

 「国のあり方について まとめ」の読者から、「改憲派は今の日本社会の礼儀を欠いた無秩序さを嘆き、それを現憲法が求めた国民の権利の自由の保障にあると勘違いして、前時代の秩序を取り戻そうとする誤解だと思います。」というコメントをいただいた。その通りだと筆者も思う。
 改憲派が、自分たちの若い頃とは異なり現代は礼儀を欠いた無秩序な社会になったというのは本当だろうか?なんとなくそういうふうな気がしなくはないけれど、客観的な材料として、警視庁の犯罪統計書の少年犯罪(殺人と強姦)の推移を見てみると、どうだろう?


http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Rape.htm
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm
 現在、犯罪件数は昔よりもはるかに減少している。格別、昭和30年代から40年代、少年による殺人も強姦も異様に多かったことがわかる。ということは、「今時の若い者はなっちょらん。わしらの若い頃は・・・」とか言っている年寄りたちが若者だった頃が、実は、もっとも犯罪率が高い時代だったわけである。
 思い起こせば、筆者が子どもの頃(昭和30〜40年代)は、あちこちで立小便したり、公衆便所はむちゃくちゃだったり、ごみをどこにでも捨てる人は多かったし、タバコなんか紳士風の人でも電車で吸い放題だった。若い頃大阪でヤクザをやっていたという60代後半の男性に聞かされたのだが、昔は人権だなんだとうるさくなかったので、やりたい放題やっていたという。戦前のことまでいえば、公娼制度まであって女性は虐げられ、選挙権もなかった。170万人もの若者がはがき一枚で戦地に引っ張り出されて、無茶な作戦で半数以上は餓死させられた。あの時代が、「美しい国」だったというのは妄想である。まあ、コネで徴兵逃れのできた特権的な人々にとっては、「美しい国」だったのかもしれないが。
 マスコミは凶悪犯罪をピックアップして宣伝するので、今の日本社会はかつてよりもひどく不道徳になっているような印象を持つのだが、客観的な事実としては、現代社会は、お爺さんたち世代が若かった頃に比べればはるかにましになっているようである。先の地震の際も、世界中から、日本は礼節ある国だと驚かれたではないか。「若いもんはなっとらん」とかいうのは、古代ギリシャ古代エジプトの時代から年寄りの常套句なのである。国の命運を左右するような憲法改変をくわだてるならば、単なる主観的・妄想的な思いつきでなく、客観的なデータに基づいてして欲しいものである。