苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

忘れてはいけない

 ユダヤ人は記憶の民族だと言われる。それに対して、日本人は忘却の民族などと笑われる。実際、最近の大新聞の支持政党アンケート結果を聞けば、多くの日本人はすでに昨年3月11日の地震を引き金とした原発震災を忘れてしまったかのようである。
 地震福島第一原子力発電所は破綻し、あってはならないメルトダウンを起こし、広島型原爆4023倍、チェルノブイリの4倍の放射能が環境にばら撒かれた。その結果、今年九月の検査によれば、福島県の子どもの男女平均43パーセントの甲状腺に異常が発見されている。原発周辺の豊かな国土は事実上失われ、住民は故郷も仕事も健康も失ってしまった。今現在も、福島県中通、栃木県、群馬県の広域、そして茨城県、埼玉県のホットスポットは、チェルノブイリ原発事故後5年のベラルーシの基準いえば、避難権利区域・強制避難区域に数十万の人々が暮らさせられている。
 このことを思うと、南の無人島のことを指差して、「我々は国土と国民を守ります」と声高に叫ぶ政治家のことばは白々しい。また、まるで向こう30年は地震原発を襲わないかのような脱原発依存計画で胸を張る政治家は、あまりに呑気である。浜岡原発を直下から襲う東海大地震は30年以内にやってくる可能性は88パーセントだとされている。原発銀座のある福井は、戦後すぐの1948年に大地震に襲われている。その被害規模は阪神大震災が起こるまでずっと最大だった。
 昨夜宮城沖で大きな地震があった。遠く長野県の小海町でも相当に大きく長い揺れだった。あまりにも忘れっぽい私たち日本人に対する警告なのではなかろうか。日本には53基の原発がある。原発規制委員のひとり渡辺教授によれば、そのうち52基の原発の直近または直下には活断層が存在している。利権がらみで、こんな国土に原発を造り続けてきて、なおかつ原発を維持していくという政治家・官僚・財界人の健忘症はこの国を亡ぼすことになる。
 忘れてしまって良いこともあるだろう。だが、決して忘れてはいけないこともあるのだ。