昨日に続いて、現行憲法99条と自民憲法改正案2012年4月27日版の102条を比較して見てもう一つ気になるのは、天皇が憲法擁護義務を負うことからはずされていることである。
現行憲法では、憲法の下に天皇・摂政がいると表現されている。下記のとおり。
ところが、自民改憲案102条では、天皇は憲法を超越しているということになる。
自民党改憲案2012年4月27日版
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う
天皇が憲法遵守の義務からはずされているということは、天皇が憲法の上に立つ主権者であることを意味しているのだろう。この条文の出所は恐らく「大日本帝国憲法」前文の末尾であろう。次のようにある。
「朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ」
つまり、明治憲法では、天皇が「わしが憲法を定めたのだから、お前ら大臣がこれを施行しなさい。そして、臣民はこの憲法に永遠に従えよ」と命令していたわけである。天皇主権論である。これが「日本を取り戻す」といっていることの意味なのだろうか。
改憲案の前文には「日本国は、・・・国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」とある。やはり、天皇は別格で、その下に国民主権があるという意味の表現とおもわれる。一方、第一条を見ると「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とある。これを見ると、「天皇の元首化」が言われつつも、「日本国民の総意」が象徴天皇を立てているとある。
あいまいな点、内部矛盾はないのかと思われる点はあるが、改憲案が、その精神に置いて明治憲法に相当戻りたそうにしていることは確かである。