苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

創造からバベルまで・・・XXIII 再出発―食物と国家

1 保持の約束

 大洪水が去って、ついにノアと家族と動物たちが箱舟から出ました。一年と十日ぶりに見渡す世界は、荒涼としています。聖なる裁きが行なわれ、神に敵対する罪深い世界が文字通り一掃されてしまったことを思えば、粛然とした思いにされたノアと家族でした。
しかし、新世界にはすでに生命が息吹き始めており、あちこちに緑が見えます。鳩がオリーブの若葉を運んできたのですから。ノアは、自分たちを滅びから救ってくださった神の恵みに感謝し、かつ、これからの自分たちの歩みを神にすべておゆだねする献身の思いをもって、祭壇にいけにえをささげます。それは、神にわが一切をささげますという意味をこめて、すべてを煙にして、天に立ち上らせてしまう全焼のいけにえでした。
これに対して、主はそのなだめの香りをかがれて、おっしゃいました。「わたしは、決して再び人のゆえに、この地をのろうことはすまい。人の心の思い計ることは、初めから悪であるからだ。わたしは、決して再び、わたしがしたように、すべての生き物を打ち滅ぼすことはすまい。地の続くかぎり、種蒔きと刈り入れ、寒さと暑さ、夏と冬、昼と夜とは、やむことはない。」(8:21,22)すなわち、神は今後地球の自転と公転とを確実に維持して、春夏秋冬、季節をただしく経巡らせ、生き物たちの環境を保持してくださるとお約束くださったのです。そこで、神がノアと結ばれた契約を「保持の契約」と呼ぶことがあります。

2 食物の定めの変更

ついで、神はおっしゃいました。「生めよ。ふえよ。地に満ちよ。」創造のとき、最初の人にお与えになったのと同じことばです。ひとたびその罪ゆえに滅ぼされ、断ち切られた人類の歴史を、さあもう一度ゼロからやり直しなさいと神はノアにお命じになったのです。
 人類が新たな歴史を刻むために、神はここで二つのことをお定めになりました。第一は食物の定めの変更です。それは肉食の許容のことです。 「見よ。わたしは、全地の上にあって、種を持つすべての草と、種を持って実を結ぶすべての木をあなたがたに与える。それがあなたがたの食物となる。また、地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。」とあるように、もともと人間と動物たちに許されていた食べ物は、堕落前には穀物菜食でした(創世記1:29、30)。けれども、おそらく大洪水で自然環境が激変したことが理由で、もはや肉食なしには十分に栄養を補給することが困難な状況になったからではないかと想像されますが、神は、この時、肉食を許されました。「生きて動いているものはみな、あなたがたの食物である。緑の草と同じように、すべてのものをあなたがたに与えた。」(創世記9:3)
創造科学の立場の人々は、大洪水以前、地球は「大空の上の水」と呼ばれる(なんらかの様態の)分厚い水の層によって覆われていたために、地表は有害な宇宙線から保護されていたことと、その「上の水」ゆえに地表は酸素分圧が高かったこととが生物の生育によい環境だったのではないかという仮説を提供しています。
追記2012年1月28日>〜〜〜〜〜〜〜〜
 高濃度の酸素によって生物が巨大化することは事実のようです。こちらを参照。
http://www.asahi-net.or.jp/~id8k-sgn/kuwabaka2000c/erie/gigdcur.html

追記2012年7月28日>
「のらくら者の日記」さんによれば、この巨大クワガタを載せているのは、ナンチャッテ・サイトなのだそうです。ですから、取り消します。
こちら参照
http://seikouudoku-no-hibi.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-3f58.html



ほかにもhttp://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1638599

巨大金魚は「マイナスイオン化酸素」によるもので、活性酸素とはちがうそうです。
http://www.biomate-sys.com/
以上、追記〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 たしかに、人類の平均寿命ひとつ取ってみても、大洪水前はおよそ900年ほどであったと創世記5章は告げていますが、大洪水後のセム系図を見ると、それが見る見る短くなっていったことがわかります(創世記11:10−32節)。あるいは、地層の中に残されている、かつて地上を闊歩していた体長何十メートルもの巨体を持つ動物たちは、現在の地球環境では到底生き延びることができないでしょう。また、今日では亜熱帯性の海にしか生息できないサンゴの化石が北極で発見されているという報告もあります。こういう報告を見ると、やはり大洪水の前後で地表の自然環境の激変があったこと自体は事実であると思われます。
ところが、大洪水の後に自然環境の激変が生じました。もはや穀物菜食だけでは、十分に栄養を摂取することがむずかしくなって、神は肉食を許容されたと解釈できるでしょう。

3 剣の権能の制定

 人類の歴史形成の再出発にあたって、神は第二に、剣の権能を制定されました。それは、悪を抑制するために公的機関に司法権・警察権をお与えになったということです。
「わたしはあなたがたのいのちのためには、あなたがたの血の価を要求する。わたしはどんな獣にでも、それを要求する。また人にも、兄弟である者にも、人のいのちを要求する。人の血を流す者は、   人によって、血を流される。神は人を神のかたちにお造りになったから。」(9:5)
 裁判所は武器による強制力を背景として成り立っているので、「剣の権能」と呼ばれます。ノアの洪水以前、人心が常に悪に傾き世の中の道徳的腐敗は目も当てられない状態になったため、神は世を滅ぼしてしまわれました。ですが、大洪水後、この世を滅ぼさないとお約束なさった以上、この罪人に満ちている世が堕落し混乱し尽くしてしまわないための措置として、摂理をもってこの世に武器による強制力を備えた司法権を託した国家という機関を設置することにされたのです。
 もし国家制度がなければ、この世はどういうことになるでしょうか。性善説に立つJ.J.ルソーは、『人間不平等起源論』で国家制度がないときに人間たちは自由で平等な理想的状態で暮らしていたと夢想しましたが、聖書的観点からいえば、現実はそうではありません。国家なんてできる前に、もうカインはアベルを殺したのです。むしろ核兵器で世界の国々が滅亡したあと出現するのは「北斗の拳」に見るような弱肉強食の世界なのです。実際、太平洋戦争が終わって間もないころ、爆撃で日本の各都市が破壊されて警察力が弱っていたときには、ヤクザが幅を利かせてやりたい放題をしました。漫画『はだしのゲン』には原爆が投下された広島が、敗戦後、どれほど無法状態になってヤクザたちが跋扈したかが描かれています。神戸でも東京でも同じでした。
カインの子孫の乱暴者レメクの歌を覚えていますか。彼は二人の妻に対して、自慢げに歌いました。「アダとツィラよ。私の声を聞け。レメクの妻たちよ。私の言うことに耳を傾けよ。私の受けた傷のためには、ひとりの人を、私の受けた打ち傷のためには、ひとりの若者を殺した。カインに七倍の復讐があれば、レメクには七十七倍。」(創世記4:23,24)
 無法の世界では力ある者は、一つの命を取られたら七十七もの命を奪い取ろうとします。そこで、神が摂理をもって立てる公権力は、一つの命には一つの命、目には目、歯には歯をもって償えと命じる公正の原則をもって裁くために立てられたのです。ですから、司法においては正義が行なわれなければなりません。裁判官がワイロを取るようになったら、その国は早晩滅びます。