苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

戦争中毒

 民主党政府は、経済政策が手詰まりなので、TPP・原発輸出にくわえて武器輸出で、これを打開しようとしている。しかし、ひとたび武器輸出で国の経済を成り立たせる構造ができてしまえば、麻薬依存症と同じで、もはやそこから抜け出せなくなってしまう。
 下記のQ&AはJr.ブッシュ政権の時代に筆者が書いた古いものだが、参考にはなると思う。特に、QA18に注目されたい。今、民主党政府は景気対策がうまく行かないので、安易に武器輸出三原則を骨抜きにしようとしているが、景気対策を軍需頼みにしてしまうと、米国のように「戦争中毒」に陥ってしまう。麻薬と同じで、ひとたび戦争中毒(戦争依存症)になると、戦争がなければ、国の経済が立ち行かなくなってしまうのである。
 ジョエル・アンドレアス『戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由』を参照されよ。


第3章 戦争を作る人々――死の商人軍産複合体

Q15. 多くの人が平和を望んでいるのに、なぜ世界で戦争がやまないのか?その具体的理由は?

A. 金儲けのために戦争をつくる死の商人の勢力がいるからである。
冷戦終結後、各地の戦争は民族対立・宗教対立などがその理由だと言われるが、それがほんとうの理由ではない。いかに民族・宗教がちがって争ったとしても、機関銃や大砲や戦車が無ければ戦争にはならないからである。戦争とは素手で殴りあうことではないのである。戦争がやまない理由は、紛争の火種があるところに武器を売りさばく死の商人の国々があるからである。死の商人たちにとっては、戦争が必要なのである。残念ながら戦争を望んでいる者たちがいるのである。


Q16. 死の商人とはだれか?
A. 死の商人とは武器輸出国の軍産複合体である。現在、武器輸出国の第一位は米国、第二位は英国、第三位フランス、第四位ロシア、第五位と第六位が中国とドイツ。これら六カ国で世界の武器輸出の実に90パーセントを占めている。この六カ国のうち五カ国が世界平和を作ることを目指しているはずの国連の常任理事国である。これらの国々では、軍部と軍需産業が癒着した軍産複合体が政治を牛耳っており、彼らこそ死の商人の正体である。国連が本気で世界に平和をもたらすことを望むならば、武器輸出を全面禁止すればよい。素手で戦争はできないし、できても小規模に終わるのだから。しかし、彼らは実際には平和を望まず、戦争で金儲けをしているのである。


Q17.米国における死の商人軍産複合体)の政治への影響はどの程度か?
A.事実上、米国政府は死の商人に乗っ取られてしまっている。
ブッシュ政権の32人もの高官が以前、軍需産業の役員や株主 をつとめていた。彼らは、そのことを恥じることもなく、とことん利用しようとしている」(世界政策研究所ウィリアム・ハートゥング)。ブッシュ大統領は、 石油企業アルプスト・エネルギー創設、石油企業ハーケン重役だった。チェイニー副大統領は石油企業ハリバートン会長兼最高経営責任者、国防長官(湾岸戦争時)だった。チェイニー夫人は軍需企業ロッキード・マーチン重役であり、ラムズフェルド国防長官はロッキード・マーチンシンクタンク・ランド゛コーポレーション理事長。パウエル国務長官は、統合参謀本部議長湾岸戦争時)だった。アーミテージ国務副長官は軍人出身であり、国防次官補(レーガン政権時)。エバンズ商務長官は石油企業トム・ブラウン社長、ライス国防担当補佐官は石油企業シェブロン重役。イングランド海軍長官は軍需企業ゼネラル・ダイナミクス副社長。ロッシュ空軍長官は、軍需企業ノースロップ・グラマン副社長。ホワイト陸軍長官は退役軍人でエンロン・エネルギー・サービス副会長。


Q18.米国経済の軍事産業への依存はどのようなものか?
A. 米国経済は戦争中毒に陥っている。米国では兵士は140万人、軍需産業従事者は2000万人にのぼる。武器は戦争をしないと消費しないから、米国はどうしても景気対策として戦争をしなければ成り立たない状況にある。
 <S氏付記>一度戦争をし、軍備が拡大されると元に戻るのは非常に困難になる。増大した軍需産業は雇用を生み、それで食べて行かなければならない人がそれだけ増える。兵器は消耗品(毎日使われる車やテレビのような)ではないので、戦争で使われなければ新しい需要は生まれない。需要が増えなければ儲からない。また、兵器は消耗品ではないが旧式になると使い物にならなくなる消費期限があって、それが大体10年と言われている。これに附合するかのように米国は10年に一度大規模な戦闘をする。(陰では在庫一掃セールと言われている)一度戦争をして戦争で稼がなければ成り立たない国なったらおしまいなのである。


Q19. 死の商人の手口をもう少し具体的に知りたいのだが。
A. 「イラン・イラク戦争」を例にあげよう。死の商人は当時、紛争当事国双方の軍拡政策に手を貸した。結果イラクを世界第4位の軍事国家に仕立て上げたのは、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、ソ連などの、湾岸戦争の中核を成した多国籍軍の国々であった。ここにも国連常任理事国が名を連ねている。これらの国々は、“ホメイニ革命”の中東への波及阻止という大義名分を掲げながら、膨大な兵器をイラク・イラン双方に売って荒稼ぎしていた。死の商人たちが火に油を注いだせいで、「イラン・イラク戦争」は長期化し双方の死傷者は、合計100万人を超える。これによってサダム・フセインイラク軍は強大化した。
 湾岸戦争についても、もと米国司法長官ラムゼー・クラークは言う。「中東で戦争を望んでいたのはイラクではなく、米国の巨大勢力だった。つまり、巨額な予算を維持したい国防総省、中東への武器販売と国内の軍事契約に依存する軍需産業原油価格に対する支配力強化と利益の増大を望む石油会社、ソ連の崩壊を米軍の中東常駐の絶好の機会と考え、石油資源の支配による巨大な地政学的勢力を21世紀に向け構築しようとするブッシュ政権だった。」(クラーク『湾岸戦争』p39)石油資本をバックとする父ブッシュ政権は、「アラブの石油はアラブのために」というスローガンを掲げるサダム・フセイン政権は許しがたい存在であった。そこで、父ブッシュ政権クウェートに働きかけてフセインに経済戦争をさせ、孤立化させた。経済的困窮を打開しようとサダム・フセインクウェート侵攻計画を進めたが、米国はこれを逐一知っていながら無関心を装う声明を発表し、そして実際にサダム・フセインクウェートに侵攻すると非難して、圧倒的な軍事力をもって徹底的に叩いたのである。


Q20.湾岸戦争死の商人たちはどれほどの利益を得たのか?
A. 46兆円を超える。湾岸戦争前、軍産複合体は“冷戦終結”のせいで、全米で1位と2位の軍事企業「マクダネル・ダクラス社」と「ゼネラル・ダイナミックス」の両社は経営危機に陥っていたが、湾岸戦争のおかげで立ち直った。「砂漠の嵐作戦」で中東に展開したミサイル、戦車、ヘリコプター、戦闘機といった陸・空の主要兵器だけで総額は約2740億ドル(約36兆1680億円)にのぼる。石油産業は、1990年末の四半期で、米国大手石油18社の純益は前年の250%という額に達し、ブッシュ大統領とベーカー国務長官は、故郷テキサスの一族と米国軍事産業界に莫大な利益をもたらした。
  更に湾岸戦争後、破壊されたクウェート復興事業(約800億ドル、およそ10兆4000億円)のほとんどは、世界最大の建設会社「ベクテル社」をはじめとするアメリカの企業が受注し、残りをイギリスがさらっていった。彼らは、中東を破壊し、中東を再建し、中東に莫大な負債をもたらすというパターンを繰り返して巨億の富を得てきたのである。まさに、死の商人は戦場で流される血をすするどころか、がぶ飲みして肥え太る吸血鬼である。


Q21. しかし、火種がなければ油を注いでも火はつかない。紛争当事国にも問題があるのではないか?
A. そのとおりである。だからこそ、日本はアジア地域で平和外交を積極的に展開すべきであって、今、小泉首相たちがしているように、靖国参拝を強行するなどしてアジアに緊張をもたらし戦争の火種をつくるべきではない。それこそ死の商人たちの思う壺である。


Q22. わが国は現在、世界の死の商人のリストの上位には挙がっていないようだが、憲法9条を変えたらどうなるのか?
A. 技術力があり政官財の癒着構造のあるわが国は、トップクラスの死の商人となる可能性がある。現政権は死の商人を目指しているのかもしれない。
 わが国は平和憲法のもとに、国際紛争の当事国又はその恐れのある国向けの武器輸出を禁止するという武器輸出三原則第三項に抑制されてきたので、武器輸出額は世界第9位である。技術も資本もある日本が大規模な武器輸出による金儲けに走らなかったことこそ、もっとも効果的で具体的な世界平和への貢献である。死の商人たちが紛争の火種に油を注いで金儲けをして、大火事にし、後始末に自国の旗を掲げてPKOやPKFを派遣してさらに金儲けするマッチポンプ式の欺瞞よりも、ずっと実効がある。
 しかし、もし憲法9条を改変すれば、日本は財界の後押しを受けつつ、米軍との共闘のために、武器輸出三原則も破棄するであろう。そうなれば日本も死の商人、吸血鬼リストの上位ランク入りを果たすであろう。わが国は戦争で金儲けをする「普通の国」になるべきではない。


Q23。 わが国では現在、死の商人の政府に対する働きかけはあるのか?
A. ある。すでに、経団連は2004年7月20日「今後の防衛力整備のあり方について――防衛生産・技術基盤の強化に向けて」という意見書を政府に対して提出し、安全保障環境の変化と危機を強調し、武器輸出三原則の再検討を要求している。現実に、北朝鮮からの弾道ミサイルに備えると称して、2005年12月防衛庁は現在のものよりもさらに高性能で高価な迎撃ミサイルを、来春から米国と共同開発する計画に着手すると、発表した。予算は3000億円!しかも、専門家によればミサイル迎撃は技術的に不可能だといわれている。3000億円はまったくどぶに捨てたも同然である。
 今後、米軍再編と九条改変が成るならば、日本でも米国のように軍産複合体が政治・経済・軍事を牛耳ることになってしまうであろう。