苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

TPPと日本農業     11月6日追記

 参加国の間で関税を撤廃する、環太平洋パートナーシップ(TPP)論議が盛んになされている。筆者は、すでに今年1月28日に「TPP推進派こそ平和ボケ」という文章をこのブログに載せて、TPP参加の愚を批判したが、ここで改めて述べておきたい。

1.民主党政府がTPP参加を進めたいわけはなにか?
 ひとつには民主党政府は経団連経済同友会からの献金が欲しいからである。野田首相は財界べったりだ。財界は不勉強で、TPPが成立すれば、関税が撤廃されて自動車やカメラなど工業製品をじゃんじゃん輸出できると思い込んでいる。
 実際には、すでに対米輸出についていえば車の関税はわずか2.5%、テレビはわずか5%にすぎないから関税がなくなってもほとんど効果はない。しかも、円高のため車もテレビも6割から8割はアメリカでの現地生産になっているので、関税など関係ない。だから、かりにTPPに日本が参加しても10年間累積でたった2.7兆円程度つまり0.54パーセントしかGDPの増加は望めないという見通しである。他方、米国は輸出を5年間で倍増するといっているのである。

2.TPPに参加しなければ、日本は世界で孤立するか? 
 TPPに参加しなければ、環太平洋で孤立するとTPP推進派は言う。まったくウソである。現に、中国も韓国もTPPには参加しない。これら二国はTPPが国益にならないとわかっているからである。

3.TPPで米国がねらっている市場はどこか?
 オバマ大統領は5年間で輸出を2倍にすると言っている。TPP参加国は、米国以外では、シンガポールブルネイ、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアという市場の小さな国ばかりである。米国が大量の輸出品を売り込む市場はない。米国はどうしても日本の市場が欲しいのである。

4.TPPに参加すれば日本農業は繁栄するか?
 TPPを締結した国々に日本の高品質な農産物を売れば日本農業は繁栄すると推進派は楽観的なことをいう。だが日本の高品質だが高価な農産物を食べられるのは、わずかな富裕層だけである。市場は限られている。

追記2011年11月6日>
 だがこの議論は311原発破綻以前の話であって、地震原発破綻後には通用しない。日本の農産物は外国で売れない。日本列島は世界中から放射能汚染地帯だと思われているのである。

 逆に、米国とオーストラリアの大量生産で安価な農産物によって、日本農業は大打撃を受ける。たとえば北海道の馬鈴薯、乳製品、沖縄のサトウキビは、勝負にならない。日本のコシヒカリと遜色のないカリフォルニア米が大増産され半値だったら、日本の米は勝負できるのか?



5.「1.5パーセントのために98.5パーセントを犠牲にするのか?」という議論は正しいのか?
 民主の政調会長の「日本の国内総生産における第一次産業の割合は1.5パーセントにすぎない。1.5パーセントを守るために、98.5パーセントのかなりの部分が犠牲になっている。」という。だが、米国も、ヨーロッパの国々もGDPにおける第一次産業の割合は1パーセント程度である。しかも、どの国もその1パーセント前後で国内の食料需要を満たしている。肝心なことは食料自給をしていることである。だが日本は、食糧自給が現状40パーセントで、さらにTPPでそれを引き下げようとしている。

6.TPPで農業が打撃を受け食糧自給率がこれ以上落ちたらどうなるか?
 現在、日本の食料自給率は先進国中最低40パーセント。さらにTPPに参加すれば食料自給率が落ちる。そうなったら、財界人は安い食料を輸入すればよいというだろうか。現在、地球上は異常気象続きで、オーストラリアでは凶作続きだ。米国だってもし食糧生産が90パーセントになったら、自国民を飢餓に陥れて外国に輸出はしない。
 そのとき、輸入に依存しきっている日本は飢えることになる。いや、日本はカネにあかせて食糧を緊急輸入して、コメの国際市場価格を跳ね上げて、そもそもコメを自給できず輸入に頼らざるを得ない国々に飢餓を輸出するだろう。食料を自給できる自然環境を持つ国は、特に日本のように人口の多い国は、自給すべきなのである。そうしなければ、自給する環境をもたない他国に飢餓を輸出することになってしまう。