苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

上杉隆『上杉隆の40字で答えなさい』と『この国の問題点』・・・非教科書的な政治・社会教科書

 教会の篠原さんが貸してくださったので読んだ上杉隆氏の二冊を紹介する。『上杉隆の40字で答えなさい―きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」』『この国の問題点』である。出版社はともに大和書房。表題からわかるように、きわめて簡潔に、政治と社会の諸問題の実態をずばりと衝いている。
 上杉隆氏は、311地震以前から大本営発表状態の記者クラブ制度と戦ってきたフリーランスのジャーナリストである。わが国の大新聞とテレビ局は、政府・官僚機構に飼いならされてしまって、ジャーナリズムの体をなしていない。これでは民主主義が危ういと警鐘を鳴らし続けてきた。マスメディアは本来的には国民の目として耳として、権力を監視する任務があるからである。

 日本のマスメディアの異常さを物語っているのが、今年4月25日の「記者のいない外国人記者クラブの会見」と同日の日本人記者クラブの対照的なようすだった。3月11日以降、政府・東電の福島第一原発にかんする発表がウソばかりなので、外国人記者たちは保安院と東電の公式記者会見には誰一人来なくなってしまったが、そういう状況でも、日本の大新聞・テレビ局の記者クラブは満員御礼だった。保安院と東電に飼い馴らされた日本のマスメディアの記者たちは、福島の原発がどうなっているのかという事実には関心がない。彼らはただ単に保安院と東電の公式発表を聞きたかっただけなのである。大新聞・TV局は政府・東電のいうままに、検証もせず、ただそれを垂れ流すだけなのである。
 筆者が、311地震以前に大新聞・TV局の報道がインチキであり、その元凶は記者クラブ制度にあると知るきっかけには二つのことがあった。一つは記者クラブ制度を廃止して開放しようとした小沢一郎氏を、大新聞・TV局が、検察と結託したかのように、常軌を逸して追及したこと。もう一つは、「官房機密費」について大新聞・TV局がほとんど報道しなかったことである。大新聞・テレビ局の記者や論説委員といった人々もまた政府から官房機密費からワイロをもらっているからである。
 そして、今回、原発にかんする報道がいかに、大新聞・TV局において偽りに満ちているかということを国民は広く知るところとなった。それはひとつには電力会社が、大新聞とTV局との大広告主であるからである。東電の年間広告宣伝費は244億円、電気事業連合8社の合計では869億円にのぼる。熾烈な競争がある業界ならコマーシャルに金を使うのはわかるが、電力なんて地域独占企業であるのに、なんでこれほど広告に金を使うのか。原発は安全だと国民を洗脳するためである。そして、広告宣伝費はぜんぶ電気料金に上乗せしてあるので、電力会社にとっては痛くもかゆくもない。もう一つは大新聞・TV局の有力者たちを東電が手厚く接待し続けてきたからである。3月11日、地震が起きて原発が破綻したそのときも、東電会長は彼らを中国に接待旅行に連れて行って豪遊させている最中であった。
 上杉隆氏はちょっと軽く語るけれど、その本質は真面目なジャーナリストである。311地震福島第一原発が破壊され、メルトダウンが起こっていたときに、原子力安全・保安院と東電はそれをひたかくしにして安心デマをばらまいており、大新聞とTVメディアはそれに追随して国民をだまして、多くの被曝する必要のない人々まで被曝させてしまった。そのとき、上杉氏は広い情報源からメルトダウンの可能性を指摘したところ、「風評をあおるやつ」「デマ野郎」と記者クラブの御用記者たちから非難された。彼が復活したのは、5月も半ばになって東電が、ようやくメルトダウンを認めてからだった。
 この政府も電力会社も検察も裁判所もマスコミもインチキな時代のなかで、真相はどういうことなのかを知って、正しく祈って行動するために役立つ良い本であると思う。読まれたし。