苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

政府がネット情報統制

 伊那谷牧師のブログに「政府がネット情報統制」をするという記事が載っている。政府が原子力に関する不正確な情報が流れることを防止して風評被害を防止するのだそうである。なんともしらじらしい。原発がすでにメルトダウンしているという事実を隠蔽し、放射能が飛散している実情を出さず多くの国民を被曝をさせ、農地を耕作不能にして、被害をもたらしたのは、誰だったのか。政府(特に原子力安全保安院)と東電ではなかったのか。
 正確な情報は、むしろ政府が「風評」と呼んだフリージャーナリスト上杉隆氏、岩上安身氏たち、広瀬隆氏、原子力資料情報室の田中光彦氏、後藤政志氏、京大原子炉実験所の小出裕章氏、今中哲二氏たちから発信されてきたことを、多くの国民はすでに知っている。3月11日からの異様な3ヶ月間、風評だといわれていたことが真実で、政府・東電・東大教授の権威を帯びた発言の多くがウソだったことが判明して、国民は原発放射能にかんするかぎり政府と東電を信用できなくなっている。政府や国会議員たちもまた、それを認めたからこそ、4月末頃からは上記の原子力村の東大教授たちはなりを潜め、風評を流したとされていた反原発の研究者・技術者たちを委員会に招かざるを得なくなったのである。ところが、今になってなんなのだろう。情報統制のねらいは政府と東電のウソがばれないために、またも真実を語る人々を黙らせることではないかとかんぐられても仕方ない状況である。脱原発運動にたいする原発村官僚の巻き返しなのか。
 筆者は基本的に菅首相に同情的である。地震の規模が規模だけに、また事故が原発事故だけに、菅直人首相でなくて、誰であっても、当初の対応はうまくできなかっただろうと見ている。上に書いたように、本来的にはすみやかに正確な情報を出すべきだったと思うし、そうしていれば防げた被曝もあったと思う。しかし、導火線に火をつけたダイナマイトを民主党に渡した自民党が、首相が現地に飛んだことをさんざんにこきおろすのには違和感をおぼえる。安倍首相だって柏崎刈羽原発のときには現地視察に飛んだのだ。現場に行かなければ行かなかったで、「自分は安全地帯にいる」と彼らは非難するにちがいないのだ。
 また、菅首相浜岡原発を止めたことについては、首相がまっとうな手続きを踏まなかったことが批判されている。しかし、あの時点、気象庁は311地震による列島のひずみの影響で東海・東南海・南海地震がすぐにも起こる可能性が非常に高くなったと警告していた。実際、静岡県でかなりの規模の地震も起きた。東海地震浜岡原発の危険性にまったく無知だった原発利権派たちに囲まれて長々とした議論などしているうちに、東海地震が来てしまい浜岡原発が破綻すれば、首都圏が壊滅する可能性が実際に高かったのである。今もその懸念は去っていない。しかし、原発利権派議員とマスメディアはその事実を見ようとしない。電力会社・産業界と癒着して東海地震に無知な原発利権派が自民・民主の大半を占めている実情を見れば、首相が「独裁的に」浜岡停止を決断したことはやむをえなかったと筆者は考える。国民が菅首相浜岡原発停止の決断の意味を悟るのは、何日か何ヶ月か何年か後に、実際に東海地震が起きたときである。そのとき、浜岡原発廃炉とされ再稼動されていなければよいのだが。
 もうひとつ筆者が菅内閣をとりあえず支持せざるをえないのは、批判勢力のなかに「この人なら任せられる」という人がいないからである。「菅さえやめさせれば、万事が解決する」などとばかなことを言って騒いで、国会を空転させ、原発村の利権を守ることに必死なだけの人々をどうして信用できようか。
 だが、伊那谷牧師とともに筆者は、菅首相にはっきり言いたいのだが、この情報統制はいただけない。なぜなら、これは憲法違反であり、民主主義の根幹を揺るがすことだからである。これでは転覆寸前のエジプトのムバラク政権や、かつてのわが国の大本営発表と同じことになってしまう。自民党内の異端者、河野太郎議員もそのことを指摘している。言論の自由が圧殺されたら、民主的な社会は維持できない。

日本国憲法
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

下記が情報統制事業の仕様書。

仕様書
1.件名
平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)

2.事業目的
ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する。

3.事業内容
(1)ツイッター、ブログなどインターネット上の原子力や放射線等に関する情報を常時モニタリングし、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情報を調査・分析すること。モニタリングの対象とする情報媒体及びモニタリングの方法については、具体的な提案をすること。
(2)上記①のモニタリングの結果、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情報及び当庁から指示する情報に対して、速やかに正確な情報を伝えるためにQ&A集作成し、資源エネルギー庁ホームページやツイッター等に掲載し、当庁に報告する。
(3)Q&A集の作成に際して、必要に応じて、原子力関係の専門家や技術者等の専門的知見を有する者(有識者)からアドバイス等を受けること。また、原子力関係の専門家や有識者からアドバイス等を受ける場合には、それらの者について具体的な提案をすること。
(4)事業開始から1ヶ月程度で30問以上、事業終了時までには100問以上のQ&A集を作成すること。
【提案事項】
(1)モニタリングの対象とする情報媒体(ツイッターは必須)
(2)モニタリングの具体的な方法と体制
(3)Q&A集を作成後、速やかに周知するための具体的な方法
(4)想定される専門家や有識者
(5)これらを活用した新規提案
【留意事項】
・受託者は、不正確な情報又は不適切と思われる情報媒体や抽出するキーワードについては、資源エネルギー庁担当者と十分に調整すること。
・Q&A集の作成にあたっては、十分な調査・分析を行い、その結果を反映すること。また、Q&A集の最終的な問数については、実態に合わせて資源エネルギー庁担当官と調整すること。
・原則として、正確な情報提供は即座に行うとともに、その結果については、翌営業日以内に資源エネルギー庁担当者に報告すること。
・常時モニタリングするために十分な人員を確保すること。

4.事業期間
委託契約締結日から平成24年3月30日まで

5.納入物
・不正確な情報及び不適切と思われる情報並びにそれらに対する正確な情報等をとりまとめた報告書の電子媒体(CD−R)一式

こちらも参照されたい。河野太郎議員の質問。2011年4月20日 衆議院 外務委員会