苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

原子力安全保安院と佐賀県知事

 6月18日、海江田経産相が「私どもが指示した項目については、着実に実施されていることを確認した。原子力の安全性については、国が責任を持って丁寧に地元の皆様方に説明していきたい」と表明した。さらに菅首相も海江田さんと同じ考えだと述べている。
 そこで、佐賀の玄界原発について、どういう確認と説明がなされたのかを調べてみた。古川康知事のもとで情報がよく公開されているからである。読んで見て呆れた。佐賀県側からの質問に対して、原子力安全・保安院は懲りもせずにウソの説明をしているのである。古川知事の文章の一部を抜粋してみる。(こちらに全文→http://saga-genshiryoku.jp/about/chiji_kenkai.html
「県では、5月17日に、国(原子力安全・保安院)から、玄海原子力発電所の緊急安全対策が適切に実施されていると評価した確認結果について説明を受けました。
 この際、県から疑問点として示した、
 ・津波の前の地震の揺れによって被害が発生したのではないか
 ・浜岡原子力発電所以外の原子力発電所は安全であるということに関する納得できる説明
 ・プルサーマル用の燃料(MOX燃料)を使ったことによる周辺環境への影響の有無
 の3点について、6月9日に再度、原子力安全・保安院から説明を受けました。
 まず、地震の揺れによる配管等の破損の疑いに関しては、福島第一原子力発電所におけるプラントパラメータ等の科学的データに基づいて「地震発生時に『止める』、『冷やす』、『閉じ込める』の各機能が正常に動作していたことを確認した。津波の到来により、全交流電源を失った後に、バッテリー、配電盤等の電源系が被水・冠水したため、電源喪失期間が長期にわたり、深刻な状態に至ることとなった」という、前回より具体的な説明がありました。(以下、2点目、3点目に対する答えは省略。)」

 筆者の知る限り、原子力安全・保安院の役人の説明には、二つの間違いがある。
 第一の間違いは、「地震発生時に『止める』、『冷やす』、『閉じ込める』の各機能が正常に動作していたことを確認した。」という点である。専門家が指摘し、あの隠蔽体質の東電さえも5月末にはしぶしぶ認めたように、福島第一原発1号機は、津波が来る前に圧力容器(の再循環系配管)が破損していたのである。これは周知の事実である。つまり、福島原発津波以前に地震の揺れによって被害が発生して、「止める」ことすらできなかった。佐賀県はそのことを各種報道からキャッチしていたからこそ、「津波の前の地震の揺れによって被害が発生したのではないか」と質問したのだ。だが、原子力安全・保安院の役人は「地震発生時に『止める』、『冷やす』、『閉じ込める』の各機能が正常に動作していたことを確認した。」と、相変わらず「原子力は安全です」マニュアル通り答えている。対話が成り立っていない。
 第二の間違いは、「津波の到来により、全交流電源を失った後に・・」という点。4月27日の衆院経済産業委員会で、共産党の吉井議員が、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたと追及し、経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めている。
 要するに二つの点において、福島第一原発津波以前に地震だけで壊れたのである。安全保安院は、検査などする前から結論は「原発は安全です」と決まっているのであろう。しかし、古川康佐賀県知事は怒りを腹に収めて、さりとて安全・保安院の説明を鵜呑みにすることもなく、「県として、分析、検討しているところです」と冷静に対処している。たいした人物である。