苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

原発を聖書的観点から考える

明日2011年6月14日、長老教会幡ヶ谷キリスト教会で表題の学び会をします。そのレジュメです。

序 神の警告

1. 善悪の知識の木について
(1)文化命令   創世記1:26-28 ;2:15-17 
 人は被造物の所有者でなく、管理者であることをわきまえる「慎み」がたいせつ。

(2)善悪の知識の木の実を食べたこと
人間の有限性を認めない。「あなたは神のようになれる」という悪魔の誘惑。

(3)原子力利用の不可能性
a.人間の限界と原子力発電という技術
 人間の限界と罪ゆえに原子力の管理は不可能である。
b.原子力利用は、人間のほうが神より賢いとする仕業である。


2. 文明のカイン性・国家権力の問題について
(1)都市文明のカイン性  創世記4:16-26
神に背を向けたカインが最初の都市を造り、この一族にさまざまな文明の発明があった。

(2)国家権力と技術文明  創世記10章、11章。
「最初の権力者ニムロデ」のシヌアルでバベルの塔が築かれた。
高度な技術によって武装した権力。原発が国策として進められてきたこととの関連。
国家権力に、偽りの父の影響がある(黙示13:2)。

(3)都市と過疎地の問題・差別の問題・・・原発には不正義がともなう
  神を愛することと隣人を愛することは密接不可分。原発は隣人愛に背く技術。、現場作業員、田舎に危険を押し付けるエゴイズム。


3.原発マモニズムと数々のウソ  マタイ7:22-34、ヤコブ1:14,15

一基4000億円〜600億円という巨大プロジェクトの利権にむらがる「原発ムラ」の人々が原発を推進してきた。マモンという偶像が、どれほど知性を曇らせるのか。 政治家、経済産業省官僚、大学教授、業界(電力会社・メーカー(GE・東芝・日立・三菱重工)・ゼネコン)、御用評論家、設置自治体、ヤクザ、マスコミ、そして裁判官まで。
マモンは人の知性を麻痺させてしまう。(マタイ6:22−24)

(1) 「原発がなければ電気は足りない」というウソ
 このことを裏付ける資料のひとつだけ紹介する。
『AERA』2011年4月11日号
 3)「電気半分で暮らしてみた究極節電生活の心得,原発全廃でも困らない統計数字が告げる真実」
 日本の過去最高の電力需要は,2001年7月24日午後3時の1億8269万キロワットであって,その後,この記録は破られていない

(2) 「原発は一番安価なエネルギーだ」というウソ
原発設置・発電のコスト 大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)の文章の要約。
http://www.videonews.com/on-demand/521530/001844.php
 原発の商用利用が始まった1970年以降に原発にかかったコストの実績値を計算すれば、電力会社にとっては「原発は一番安い」が、利用者にとっては「原発は一番高い」。
 発電コストとしてよく電力会社が出す数値04年に電気事業者連合会が経産省の審議会に提出した資料では、1キロワット時あたり、水力(揚水発電を除く一般水力)は11.9円、石油10.7円、天然ガス6.2円、石炭5.7円、そして原子力は5.3円としている。これは、稼働率を80%に設定するなど、ある一定の条件を想定して計算した値だ。
 利用者の負担という観点で考える時に重要なのは、「見えないコスト」と「バックエンド費用」。ここでは前者のみ紹介。1970年〜2007年の約40年間について、実際に発電にかかったコストを、財政支出の国民負担についても合算すれば、1キロワット時あたりのコストは、原子力10.68円、火力9.90円、水力7.26円と、原子力はもっとも高い。
福島第一原発廃炉のコストは7兆4700億円
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110509/106467/?P=1

(3) 「M9の未曾有の地震だったから仕方ない」「想定外」というウソ
 地震の規模がM9であったことは、日本においては未曾有であったといのうのは事実であるが、福島原発が受けた揺れと津波の規模は決して未曾有という大きさのものではない。コストを惜しんでなすべき備えをしていなかったから。その責任逃れのために、ウソをついている。

(4)「原発は地球環境にやさしい」というウソ
 また原発から排出される莫大な温排水。54基の原発から毎日捨てられる熱を合計すると、ほぼ1億キロワット=広島型原爆100発分の熱。原発は温排水をもって環境を破壊している。
 放射能による汚染のはなはだしさは、だれもが知るとおり。

(5)「福島第一原発の原子炉は揺れには耐えたが、津波でやられた」というウソ
 3月11日の地震直後、津波が来るまえに、福島第一原発の1号機の原子炉圧力容器に出入りする管のうち(おそらく再循環系)が破断し、そこから冷却材(水)が噴出した。そのため、12日午前2時45分1号機格納容器の圧力は急上昇して8.4気圧になっている。この点を田中三彦氏が事故直後から指摘していたが、東電は隠し続けて5月半ばにようやく認めた。これは非常に大きな問題。政府は、原子炉は揺れには耐えられたという前提に立って、全国の原発津波対策・電源対策のみを求めて、それをクリアすれば再稼動許可すると言っている。しかし、現実は揺れだけで原子炉の中核部分が壊れた。この欠陥はすべての原発の共通点である。

(6)「原発には将来性がある」というウソ
 化石燃料の埋蔵量の比較http://www.avionnet.info/wadai/110321.html
数字は1×10の16乗 k c a l のエネルギーに換算したもの。
高品位石炭・・・・・・6000  500
低品位石炭・・・・・・1700  260
オイルシェール・・・・・810   *
タールサンド・・・・・・240 *
石油・・・・・・・・・・294  150
天然ガス・・・・・・・・200  120(ただし近年、埋蔵量増加)
ウラン・・・・・・・・・110   20
 (出典「原子力と共存できるか」:小出裕章/足立明著、かもがわ出版1985年。)
 ウランを60倍に活用する高速増殖炉の夢は終わった。使用済み核燃料の保管場所は、平均7.3年分しかない(広瀬隆「時限爆弾」p263)放射性廃棄物の保管には100万年監視。

(7)「ただちに健康被害はない」というウソ
4年後から子どもたちの甲状腺がんは大量発生し、10年以降おとなたちが多く発病する。

(8)偽預言者たち   エレミヤ6:13,14
a.原子力安全保安院と東電
b.マスコミ
 電気事業連合会全体で2000億円がメディア対策費。
c.大学教授たち
 研究費と天下り先を求めている学者たち。

結論
 被造物の管理者としての分をわきまえることをせず、神になろうとした原子力利用。これを日本で推進してきたのはマモン信者たちであり、知性の曇った知性は国民をだまし続けてきた。私たちは、ウソを見抜き事実を知り、管理者としての分をわきまえた電力利用法を採用すべきである。