苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

原発と明日のエネルギーの勉強会   5月29日改訂

 5月29日(日)午後1時から2時半、原発震災の勉強会をする予定です。昼食をすませておいでください。下に掲げたのは、そのレジュメです。28日に公開した最後の部分は改訂してありますので、ご注意ください。レジュメの中でもともと批判的に取り上げてお話するつもりでしたが、ブログにそのままのせたのでは誤解される懸念があるので、直しました。
 菅さんは、中途半端に「浜岡停止」などといっていないで、廃炉脱原発を決断してほしいものです。そうしたら、後の歴史家が菅直人首相は先見の明のある救国の宰相であったという日が必ず来ます。「停止」では、浜岡は福島と同じようになる可能性が高い。

           原発と明日のエネルギー レジュメ
                         2011年5月29日 
序.日本の原発は54基

1. 原発なしでも電力は足りている

 2010年夏の猛暑ピーク時でも中電は原発抜きで15%余裕があった。今年の夏もOK。まあ、信州小海はクーラーなんてもともと無用なんですが。


 (小出裕章氏講演資料)
 過去、原発抜き、火力・水力で夏のピーク時も足りてきた。しかも、火力の稼働率48パーセントに抑制して原発の比率を60パーセントと高くして、原発が必要だと宣伝してきた。東電は送電線を独占し、自家発電の電力を買い叩くので、新日鉄やガス会社など自家発電は参入しない。自家発電は全国で6000万kWで、余裕分が4000万kW。東電が夏場電力不足と言っているのは、単に自業自得。

 「原発即時停止してもOK」の議論の詳細はこちらを参照

http://openblog.meblog.biz/article/4690330.html

http://openblog.meblog.biz/article/4628253.html

2.原発には将来性がない・・ウランは少なく、高速増殖炉は挫折、ゴミのやり場はない。
化石燃料の埋蔵量の比較http://www.avionnet.info/wadai/110321.html
数字は1×10の16乗 k c a l のエネルギーに換算したもの。
          <究極埋蔵量> <確認埋蔵量>       
高品位石炭・・・・・・6000    500
低品位石炭・・・・・・1700    260
オイルシェール・・・・・810     *
タールサンド・・・・・・240    *
石油・・・・・・・・・・・・・294   150
天然ガス・・・・・・・・・・200    120(ただし近年、埋蔵量増加)
ウラン・・・・・・・・・・・・110   20
 (出典「原子力と共存できるか」:小出裕章/足立明著、かもがわ出版1985年。)
 ウランを60倍に活用できると考えた高速増殖炉の夢は、すでに失敗に終わった。ただ日本のみが「もんじゅ」にその夢を託していたが、またも事故を起こして、現在手のつけようがなくなって、非常に危険な状態に陥っている。
 また使用済み核燃料の保管場所は、平均7.3年分しかない(広瀬隆「時限爆弾」p263)⇒原発には将来性がない。

3.経済性:電力会社にとっては原発が一番安いが、国民にとっては原発が一番高い
 (1)原発設置・発電のコスト 大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)より。
電力会社の発表(04年に電気事業者連合会が経産省の審議会に提出した資料)
1キロワット時あたり、水力(揚水発電を除く一般水力)は11.9円、火力7.5円(石油10.7円、天然ガス6.2円、石炭5.7円)原子力は5.3円。これは、稼働率を80%に設定するなど、ある一定の条件を想定して計算した値。
 1970年〜2007年の約40年間について、実際に発電にかかったコストを、財政支出の国民負担についても合算すれば、1キロワット時あたりのコストは、水力7.26円、火力9.90円、原子力10.68円。⇒原発が一番高い。

 (2)事故を起こした福島第一原発廃炉のコストは7兆4700億円
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110509/106467/?P=1
 事故を起こさなかった場合でも、一基あたり5320億円。

 (3)原発事故に伴うコスト
 農畜産物・漁業における被害は福島県内にとどまらず、すでに県外、遠く神奈川県にまで及んでいる。セシウム半減期30年というから、60年たっても4分の1は土壌に残る。漁場も太平洋岸。さらに、アリューシャン列島からアラスカまで莫大な汚染水が流れている。今後海洋法違反で日本は莫大な罰金を払わねばならない可能性あり。
 家を失い、職業を失い、ふるさとを失い、村という共同体を失い、健康を失った方たちへの補償は、お金ではすまない。さらに、4年以降、原爆症を呈する方たちがたくさん出てくる。チェルノブイリの経験からいえば、幼児の甲状腺ガンは事故から4年目から10年目にかけて発生し、そのあと成人のガンが出てくる。
 また福島第一原発では汚染水を浄化して循環するシステムを導入することにし、その浄化をフランスのアレバ社に依頼したが、その汚染水の処理に531億円。


4.地震列島における原発の危険性
(1) 想定震度が低すぎる
  日本列島は戦後1949年以降、静穏期にはいった。原発は震度5までしか耐えられるように設計されていないので震度6で壊れる。2000年阪神大震災以後、地震の活動期にはいった日本列島では震度6、7は当たり前で、原発はことごとく壊れている。今回の福島でも、津波が来る前に、圧力容器の配管部分に損傷があったことを、東電は5月半ばになって認めた。
 以下を見て、最近観測された地震の震度(加速度)と、各地の原発が想定している加速度を比較していただきたい。お話にならないくらい、想定されている加速度が低いことに呆れてしまう。
<最近観測された地震での最大加速度 と想定加速度>
1993年 釧路沖地震 922 ガル
1995年 阪神淡路大震災 848 ガル
2008年 岩手・宮城内陸地震での 4022 ガル・・日本における過去最大
2011年 女川原発1号機の原子炉建屋での実測値 476.3 ガル・・ 東日本大震災の余震

 <各原発の想定加速度>
最強震度(過去記録による予想最大震度)/限界震度(想定しておく震度)単位ガル 
東海        100/150
東海第二      180/270
敦賀1       245/368
福島第一1〜6   176/265
福島第ニ1・2   180/270
柏崎・刈羽1    300/450
柏崎・刈羽2〜5  300/450
浜岡1・2      300/450
浜岡3・4      300/600
美浜1・2      300/400
美浜3       270/405
高浜1・2      270/360
伊方1・2      200/300
玄海1・2      180/270
六ケ所再処理     230/375
  出典http://ci.nii.ac.jp/naid/110002066513 (pdfの論文本文2ページ表1)

(2) 立地場所がひどすぎる
 浜岡原発は、M8.4東海地震の震央にある。現在、浜岡原発は停止したが、電気ポンプで冷却水を循環させ続けている状態。東海地震でケーブル・冷却水配管が破断すれば、福島と同じ事態に陥る。しかも、浜岡原発は、震央に位置している。しかも、敷地には断層が5本通っていて、前回1854年の記録では2メートルの段差ができている。だから、「停止」ではなく廃炉にしなければらならい。 

 浜岡原発の配置図。赤い線は断層である。原子炉建屋はさすがに断層を避けているが、タービン建屋は断層の上に建てている。原子炉建屋とタービン建屋が断層をまたいでいる3,4,5号機もひどい。
 能登半島の根元、敦賀もんじゅ」は活断層の真上に建てられている。福井は1948年に直下型の大地震を経験している。四国の伊方原発は、なんと中央構造線の真上にある。

(3)津波・・・・福島第一原発について共産党吉井議員がした警告
福島原発はチリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなることが、すでに明らかになっている。これは原子炉が停止されても炉心に蓄積された核分裂生成物質による崩壊熱を除去する必要があり、この機器冷却系が働かなければ、最悪の場合、冷却材喪失による苛酷事故に至る危険がある。そのため私たちは、その対策を講じるように求めてきたが、東電はこれを拒否してきた。柏崎刈羽原発での深刻な事態から真摯に教訓を引き出し、津波による引き潮時の冷却水取水問題に抜本的対策をとるよう強く求める。」(2007年7月24日)・・・しかし、自民安倍政権・東電は対策をしなかった。

(4)「想定外」の意味
なぜ、原発における地震の想定は低くされているのか。低く想定しておくと、想定以上の震度や津波が起こった時に、電力会社も、許可した役人も、法的には責任を問われなくて済むことになっているからである。
http://takedanet.com/2011/04/post_c063.html

5.原発は環境にやさしくない
 火力は二酸化炭素を出すが、原発二酸化炭素を出さないから地球温暖化の原因とならないといわれる。本当か? たしかに原発は仕組み上、二酸化炭素はでない。しかし、放射能による環境汚染の被害の甚大さは、二酸化炭素の比ではない。
 また原発から排出される莫大な温排水。54基の原発から毎日捨てられる熱を合計すると、ほぼ1億キロワット=広島型原爆100発分の熱。原発は決して環境にやさしくはない。

6.脱原発後のプラン
(1) 原発をやめても電力は余っている。→「1」参照

(2) 省エネ技術・省エネ生活・・・たとえば全国LED化で総電力の20〜25%節約

(3)化石・水力・原発→(脱原発)→化石・水力→再生可能エネルギー
脱原発後、当面火力(石炭・石油・天然ガス)、水力。ガス・コンバインドサイクル発電が有力。いずれ化石燃料は枯渇するので、再生可能エネルギーへ。
バイオマス・・・・・・・木質バイオマス発電  林業と発電の組合わせ。CO2排出ゼロ。
太陽光発電・・・・・・・導入費高価・熱効率が弱点。
集光式太陽熱発電・・・・夜間も発電OK。太陽光のコスト半分。降雨対策必要。
地熱・・・・・・・・・・日本には候補地多し。ただし温泉問題、地震を誘発?
風力・・・・・・・・・・環境省「総電力量の7割可能」・・・低周波騒音・台風対策という課題あり。  http://www.asahi.com/national/update/0421/TKY201104210510.html?ref=rss

7.放射能と生活
(1) 放射能は物質であるから・・・
 放射能と呼ばれるが、単なる力ではなく微細な放射性物質なので、削り取り、拭き取ることができる。ただし防護が必要。

(2)食物
「5月5日に江名港での測定では、アカモク(海藻)から放射性ヨウ素が基準値の60倍、セシウムが3倍でした(フランス環境団体測定)。また四倉港のコンブ(5月5日)はヨウ素が50倍、セシウムが4倍で、海草類に汚染が拡がっていることを示しています(ベルギー原子力研究センター測定).また、勿来港のシラス(5月9日)は、ヨウ素は低いのですが、セシウムは2.2倍含まれていました。」(武田邦彦http://takedanet.com/2011/05/post_ab4a.html
 海藻、茶葉の新芽、タケノコ、きのこ類は、カリウムとまちがえてセシウムが集中する性質がある。産地を吟味すること。

(3)文部科学省のご都合主義・違法行為
放射線に被ばくすると健康に影響を及ぼすことがありますが、その影響の有無と種類は被ばくした量で違いま す(図)。被ばくした放射線量が、例えば100mSv(ミリシーベルト)以下では、ただちに健康に影響を及ぼすこ とはありません。また、被ばくした放射線量が高いほど数年後から数十年後にがんになる危険性が高まると考え られますが、その危険性は、例えば100mSv(ミリシーベルト)の放射線量で0.5%程度です。これは喫煙や食事 などの生活習慣を原因とするがんの危険性よりも数十分の一程度低い値で、過度に心配する必要はありません。」(放射線総合医学研究所http://www.nirs.go.jp/information/info.php?116
 世界的標準・日本の法律は、一般人の年間被ばく線量を1mSv(年間)までとしている。ところが、放射線総合医学研究所は311地震以降、急に、「100mSv(年間)までなら、ただちには健康に影響は及ぼさない・・・」と言い出した。そして、文部科学省は、1を100にというのはさすがに気が引けたのだろう、福島県郡山市福島市が15〜16mSvという数字が出てしまったので、そこで義務教育を続けるために「20mSvまで」という数字にした。

(注)年間100mSvというのは一応原発作業員などの基準で、実際通常業務では5mSvに達しないといわれます。チェルノブイリ事故では5mSvで強制退去させられたという数字です。

・・・・うーん。 このレジュメ、1時間半では盛りだくさんすぎかな。



  オキナソウ