苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

平成の亡国元年

 菅首相と前原外相が、「今年を開国元年としたい」として、TPP加盟に強い意欲を示している。「開国」などと、去年の坂本龍馬ブームにあやかろうという卑しい魂胆がみえ透いている。しかし、行なおうとしていることは単に米国追随と大企業追随以外の何者でもない。
 環太平洋の貿易圏内を無関税の自由貿易圏にしようと米国はなぜ主張するのか。単純な理由である。農業においても工業においても、米国は強力な輸出産業をもっているからである。米国の国益にかなっているからである。いつもいう譬えだが、プロゴルファーが素人相手に「ハンデなしで賭け試合をしよう。そのほうがフェアじゃないか。」と誘っているのである。
 日本でTPPを後押しする勢力はどういう人々か。TPPで得する自動車産業を初めとする輸出産業と、そういう産業をスポンサーとするマスメディアである。日本政府の至上の目的は政権維持であり、長期政権の秘訣は米国の支持を得ること、大企業と大企業と癒着したマスコミに支持されることであるから、TPP加盟に突き進もうとしている。・・・というふうに筆者には見える。
 要するに、TPP加盟は、工業のために農業を切り捨てるという政策なのである。「強い輸出力のある農業をめざす」といって、ごく特殊な事例をマスコミは紹介して、TPP推進をはかっているが、工業製品と違って、自然を相手にする農業はそんなにかんたんにはいかない。また工場の中で電灯と栄養水だけつくる農業も宣伝しているが、それはせいぜいイチゴなどの話で、この列島の国民の生命に直接かかわる肝心の穀物はむり。
 TPP加盟が実現すれば、目先は食料が安くなるから「よかったなじゃい。心配することなかった。」と都市の消費者は、国内農業の衰退に気付かないで、喜ぶことだろう。農水省の試算では、食料自給率は現状40パーセントから14パーセントに落ち込むとされている。そして、何年か後に、気候変動や大地震によって作況ががくんと落ち込んだとき、日本は飢餓にさらされる。そのときカネに飽かせてコメの緊急輸入をすれば、コメの自給できない国々に数百万人分の飢餓を輸出することになる。実際1993年、日本は260万トンのコメ緊急輸入を実施して、その結果コメの国際価格の高騰をまねき、他のコメ輸入国に大量の飢餓をもたらした。
 農文協が『TPP反対の大義』という本を公にした。TPPに加盟して米国と大企業と大企業をスポンサーとするマスメディアのご機嫌をとって政権基盤を安定させたい政府、前原外相が「国内総生産1.5%を守るために98.5%を犠牲にして良いのか?」といった、まやかしの数字を挙げた宣伝をして日本を亡国へと導こうとしているかがよくわかる。この1.5パーセントがどのような意味でまやかしの数字であるかを知りたい方は、こちらをクリックしてください。
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpptpp.html
 現在、スリランカ、ブラジル、オーストラリアは未曾有の大洪水に襲われて、広大な農地が破壊されている。この気候変動の激しい時代に、自国の農業を切り捨てる政策を選択することが、目先の大企業のもうけと政権維持には都合が良いのはわかるが、長期的に見れば国民にとっては迷惑な話としか思えない。農家がつぶれて国内で食料生産もできなくなり、食料86パーセントを米国やオーストラリアや中国に依存するようになった状況で、もし気候変動で生産国の作況が落ち込んだならどうなるか。生産国は、自国民を飢えさせてまで輸出するわけがない。かりに輸出してもめちゃくちゃな高値である。そのとき、「あの2011年は、平成の開国元年でなく、平成の亡国元年だったのだ」と無責任なマスコミは犯人探しをして騒ぐのだろう。
 政府が愚かな選択をしないように、私たちは的を射た祈りをし、選挙民として適切な行動をとるべきだと思う。

「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、ききんも起こるはずだからです。これらのことは、産みの苦しみの初めです。」マルコ13章8節<資料>
食料自給率2007年(カロリーベース、農水省
 米国124パーセント
 フランス111パーセント
 ドイツ80パーセント
 イギリス65パーセント
 スイス52パーセント
 日本40パーセント