苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

玉川直重『新約聖書ギリシャ語独習』

 10月末、息子が畑仕事が終わってから、息子にギリシャ語の手ほどきをしていることは先日書いた。使っているテキストはメイチェンではなく、玉川直重『新約聖書ギリシャ語独習』である。現在40課中20課まで来ている。
 メイチェンは初学者が独習するには無理がある。順々に積み重ねていくための配慮として、先に習っていない文法事項が出てこないように、著者メイチェンがオリジナルの例文を提供しているのは、見事ではある。だが、反面、文法事項を学んでも、すぐに聖書のどこでこの文法事項が効果的に用いられているかを知ることができないので、面白くない。語学にとくに長けた人にはよいだろうが、私のような語学が趣味でない普通人には無味乾燥である。また、練習問題に解答がついていないことも、独習者には向いていない理由である。
 他方、玉川さんは「独習」と銘打つだけあって面白い。その理由の一つは、聖書から例文が精選されていることである。だから、今学んだ文法事項がどのように効果的に聖書本文において用いられているかがすぐにわかる。つまり学んだことを、すぐに釈義に活かすヒントを得ることができるので、面白く、身につきやすい。神学校のメイチェンを用いるギリシャ語クラスでも、一文法事項に的確な例文を提示し暗唱させる工夫をすれば、うんと楽しくなるだろう。
 玉川さんが面白いもう一つの理由は、あちらこちらに格言が配されていることである。新版になって、旧版にあった格言はいくらかことばも漢字も現代風になって味わいが薄くなったが、それでも著者の親切さと熱意とがひしひしと伝わってくる。
 玉川さんがすばらしいもう一つの理由は、三部構成になっていて、第一部で基礎文法を学んだら、第二部でただちにヨハネの手紙第一をギリシャ語で通読するというふうになっていることである。これは楽しい。ギリシャ語を学んだらいきなり原典講読ができるのである。第三部は文法事項整理表になっているから、忘れたことはここを参照しながら、読み進めればよい。
 私は神学校1年生のとき、学校でメイチェンを学ぶと同時に、奉仕教会で玉川さんの本で宮村先生から手ほどきいただくという幸運に与った。(最近、「関与する」という意味の「あずかる」を、「お金をあずかる」の場合に使う「預かる」と書き間違えている人が多い。)感動屋さんの先生が分厚いめがねの奥の目をきらきらさせながら教えてくださったので、語学が得意でない私にも感じるものがあった。だから、今もメイチェンの無味乾燥さにあえいでいる神学生たちには、併行して玉川さんの該当部分の例文を味読するように、お薦めすることにしている。