苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

10年後日本の食料は?―5年間で農業人口75万人減少!

 農林水産省が7日発表した2010年の農林業速報値で、農業人口の減少が加速化している実態が明らかになった。農業就業人口は5年間で75万人減少し、260万人になり、減少率22.4%は今までで最大である。1970年には1025万人いた農業人口は、今や312万人にすぎない。しかも、その大半は高齢者である。260万人中、39歳以下はわずか23.5万人つまりたった7パーセントしかいない。日本の全人口のなんと0.2パーセント足らずである。「農業離れ」などといった呑気な雰囲気ではない。農業人口は激減し、日本の食糧生産体系は崩壊の危機に瀕している。

 信州南佐久に住んでいて、身近な農家のようすを見ていれば、さもありなんと思う。この地域は高原野菜で有名で、日本では例外的に専業で暮らすことができる大農家がある地域なのだが、それでも後継者が少ない。たしかにここ5年ほど、どんなに作っても野菜の値が出ないので、川上村や南牧村でさえ、借金をかかえて農業をやめる家もふえている状況であるから、自分の息子や娘に「俺の仕事を継げばいい」と自信を持って薦めることのできる農家がいない。他の貧しい農業地域は、推して知るべしである。
 野菜の値が出ない理由の一つは、野菜輸入を制限しないからである。スーパーが中国の圧倒的に安い労働力で作らせた野菜を大量に輸入して、日本で売るからである。日本でどんなに切り詰めても600円かかるものを、中国産が100円というのでは、勝負にならない。また理由の一つは、スーパーの中間搾取が甚だしいからである。たとえば今年農家が汗水たらして作ったトウモロコシを100円で買い上げて、スーパーは450円で並べて売っている。理由の一つは、日本人の野菜の消費量が減っているからである。漬物をざくざく食べるような食生活をする人がいなくなって、肉料理の付け合せにちょっと野菜があればいい程度の食べ方しかしないのである。そして野菜不足で体調が当然悪くなるのでサプリメントを大量に食べるというような異様な食生活をする。ほかにも理由はあるんだろうが、筆者が思いつくのはそれくらい。
 このまま農業人口激減が続けば、10年後日本はどうなるのか。今39歳以下の農業人口が全人口の0.2パーセント。人口が減ったら、大規模化すればよいのだといっても限度がある。米国やオーストラリアのような大規模農業は、この地形の日本では不可能なのだ。しかも大規模単作農業は大量の化学肥料と農薬を与えなければできないわけだが、こうした農法は農地を荒らして砂漠化してしまう。狭い農地を土を大事にして使い続けなければならない日本では無理である。また、ビルの中で電灯で野菜が作れるといった宣伝をするけれど、ああいうのは太陽エネルギーが少なくてすむ蔬菜だけであって、太陽エネルギーを大量に必要とする命を支えるための穀類は作ることはできない。
 食べ物なんて、外国からカネで買えばいいのだと愚かにも高をくくっている平和ボケした国民も、この国際競争力の落ち込みと、中国の尖閣諸島衝突にかんする対応の現実を見て、そんな馬鹿なことは言っていられないことにようやく気づき始めたのではなかろうか。中国も人口爆発で、すでに食糧輸入国となって久しい。それに、カネにあかせて外国から食べ物を買えば、自然環境の理由で食料を輸入せざるをえない国々に飢餓を輸出することになる。十数年前の大凶作で日本の作況指数が90パーセントになったとき、100万トンの米の緊急輸入の結果、米の国際価格が跳ね上がって、最貧国に100万人分の飢餓を輸出したことがあった。
 このまま無策な農政を放置すれば、日本の食糧生産体系は早晩崩壊する。農業の将来に希望が持ちうるように、若者たちがこぞって農業に就きたくなるようにしなければ、農業人口激減にストップはかけられない。田舎の実情を知らない都市型の菅政権よ、農業の実情に目を覚ませと祈りたい。東京工大出の菅首相は、大好きな町工場に出かけるだけでなく、田んぼや畑をしっかりと歩いて回って、農民たちに実情を聞くべきだ。早晩、飢餓がやってくることになる。
 私たちは、「おれたちは農家から野菜を米を買ってやっている」と思い上がってはならない。自分のかわりに農家に食べ物を作ってもらっているのである。
 参照→http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/09/575.html