苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

『家栽の人』

 篠原さんから『家栽の人』という漫画を借りて読んでいる。家庭裁判所の判事を主人公とする作品である。彼が植物の栽培が趣味ということから、「家裁」ではなく「家栽」としゃれている。一章ごとに題名がキク、ハス、サザンカといった花の名となっている。
 少年犯罪、離婚の調停、遺産相続といったことがらにからむひとりひとりの心、人間のかかわりについて、桑田判事は思いがけない、しかし、実に的確な理解をし、適切なことばと行動をもって対応していく。全部で十数巻もあるそうだが、今のところ第8巻まで読んだ。最初の3巻ほどは少々甘い温情主義の判事だと思わせるが、先の巻に進むにつれて、うーんと唸ってしまった。単なる温情というのではなく、揺るぐことなき勇気に支えられた、クールな頭とあたたかな心を備えた判事が桑田なのである。桑田の稀有の人柄は植物たちとのかかわりから学んだ智慧を源泉としている。
 家裁に連れられてきた被告「少年」本人も気付かない心の闇に潜むものに気付かせて、更生の糸口を見出させたり、夫と妻、親と子、兄弟姉妹の心のもつれをうわべではなく、深いところで正確にとらえて、そのもつれた糸をはらりと解かせてしまう。一篇一篇につけられた花の名は、その手がかりとなっている。
 いったい原作者毛利甚八とはどういう人なのだろうと舌を巻いてしまった。そして、これは牧会者には必読の本かもしれぬと思ってしまった。