苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

今道友信『西洋哲学史』

 昔、少しばかり哲学をかじったという噂を聞いた人から、「哲学史の勉強の手始めに何を読んだらいいですか?」と聞かれることがある。正直、私の哲学の勉強などかじったともいえない、なめた程度にすぎない。だが、「それでも、全く知らないわけではないでしょう」という方に、とりあえずお勧めしたいのが本書。
 哲学史として本格的な翻訳物ものとしては、ヒルシュベルガーの大著があって、あれはたしかに面白い本だが、大きすぎて、経済的にも分量的にも時間的にもとっつきにくいだろう。岩崎武雄『西洋哲学史』は定番で、分量も適当で全貌がすーっと頭にはいる名著であるが、ちと古いだろうし、テキストそのものの釈義の面白さはない。私の哲学勉強の最初はボヘンスキー『現代のヨーロッパ哲学』を読んだが、ややめんどうだったと記憶する。詩人のハイネも哲学史を書いていてわかりやすいが、素人の仕事でスタンダードではない。新しいものとして岩波新書熊野純彦『西洋哲学史』上・下があるが、これは新書に期待される入門向きという目的にはかなわない。
 こんなふうに、難解なもの大部なものお手軽なものと今では哲学入門としてはいろいろな本があるけれど、そうした中で、今道さんの書の何が面白いといって、著者が哲学者たちのテキストそのものを説き起こしていく作業が実におもしろく、そして分かりやすい。学術文庫の一冊だからむろん網羅的ではないが、哲学書はこんなふうに読むのだ、考えるのだということと、思想と思想のつながりが見えてくる。これを読んだら、紹介されたテキストのなかで興味を持てたものにあたって行かれるといいと思う。