苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

家永三郎氏解説:植木から日本国憲法へ

 家永三郎編『植木枝盛選集』(岩波文庫)を入手して読んだ。巻末の家永氏の解説を見て、なあんだ家永さんは植木枝盛から日本国憲法への流れをちゃんと把握していらしたのだと感心してしまった。この本の第一刷はずいぶん前で、なんと1974年である。抜粋しておく。
日本国憲法は、植木枝盛草案ときわめてよく似ている。主権在民基本的人権の保障、地方自治の確立、みなしかり。その平和主義は枝盛の『無上政法論』と精神を同じくする。男女同権、家の廃止を核心とする新民法は、枝盛の家制度改革論と寸分たがわない。枝盛の政治上、社会上の改革論は、日本国憲法体制の青写真であり、半世紀前に国民が望みながら実現しえなかった期待が、敗戦という不幸はまわり道をたどって実現したものと見るのは、決して強弁ではない。・・・(中略)・・・
しかも、日本国憲法について言うならば、その原案となったいわゆるマッカーサー草案の作成に当たり、占領軍は日本人有志の憲法研究会の草案を参考としその内容をとり入れているのであり、かつ、その憲法研究会草案は、戦前におけるほとんど唯一の植木枝盛研究者であった鈴木安蔵植木枝盛草案その他を参考にして起草したものなのであるから、日本国憲法植木枝盛草案との酷似は、単なる偶然の一致ではなくて、実質的なつながりを有するのである。このような事実にかんがみ、いわゆる戦後民主主義あるいは平和主義を、私たちは改めて近代日本の精神的伝統との関連において見直す必要があるのではなかろうか。」
 映画「日本の青空」で言われていたこと、つまりこのブログの12月15日、22日に書いたことは、みなここにあった。ちゃんとした学者はとうに知っていて、恐らく常識に属することであっても、マスコミや政府の宣伝の仕方で一般には伝わっていないことが結構あるものなのだろうと思わされた。『植木枝盛選集』はお奨め本のひとつである。

 ふと窓の外を見れば、ありゃりゃ、真っ白に吹雪いている。明日、新年は雪かきからスタートである。
 読者のみなさま、よいお年を!