苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

日本人は全員渡来人

 日韓共催のワールドカップを控えた2001年12月23日、明仁天皇が68歳の誕生日に先立つ記者会見の席で、「桓武天皇の生母は百済武寧王の子孫であると『続日本紀』に記されていることに韓国とのゆかりを感じています」と述べて話題になったことがあった。歴史学の世界では常識だそうだが、純潔大和民族神話にしがみついている東京都知事のような迷信家は、目を白黒させたことだろう。だが日本人が渡来人の血を引いているということは、別に天皇家に限った話ではない。石原さんも私たち自身も例外なく渡来人の血を引いているのである。
 大陸からやって来た北モンゴロイドによる縄文時代が紀元前100世紀頃からのものだそうだが、そこに紀元前5世紀から3世紀に大陸から50万とも100万ともいわれる渡来人がやってきた。渡来人と縄文人との人口比については、「近畿地方の古墳人は縄文直系の子孫1に対し渡来人系9の割合で混血した集団であり、中国地方のそれは縄文2に対し渡来8の混血と考えるのが最も適当だ」というのが、埴原和郎氏(東大)の説である。ここに縄文人と渡来人との交流・混血が起こって弥生文化ができた。
 ずっと時代が下って、4世紀から7世紀大和朝廷の形成期にやってきた渡来人の波を私は新渡来人と呼びたい。飛鳥、奈良の時代になると、吉田晶氏(岡山大)によれば、河内国の新渡来系氏族は、古市郡では12氏のうちの8氏、高安郡で18氏のうち12氏、安宿郡で8氏のうち6氏、交野郡で10氏のうち8氏、讃良郡で8氏のうち6氏、河内国においては計68氏の70%が新渡来系だったという。大和朝廷形成期、飛鳥や奈良時代の氏族階級の主流は新渡来人だったのである。例の秦氏もこの時代の渡来人である。
 ミトコンドリアDNAの分析結果(http://www.kumanolife.com/History/dna.html)からみれば、本州日本人の場合、日本人固有型4.8%、24.2%韓国型、25.8%中国型、アイヌ型8.1%、沖縄型16.1%、その他21%から成っているというのだから、この二人の学者の主張はごく穏当なものといってよいだろう。なお大陸からの渡来人・新渡来人との混血が起こる機会が少なかった北海道と琉球には、縄文的形質が多く残ったそうである。だとすると、沖縄型とアイヌ型をあわせて縄文系のものとして合計すると24.2%だから、大雑把にいえば、日本人のミトコンドリアDNAは、

韓国型・・・・・・・・・・・・・・・25%
中国型・・・・・・・・・・・・・・・25%
縄文型・・・・・・・・・・・・・・・25%
日本人固有型・・・・・・・・・・・・・5%
その他・・・・・・・・・・・・・・・20%

である。「その他20%」のなかには、ポリネシア系とかペルシャなどコーカソイド系も混じっている。それにしても日本人固有型がたったの5%は実に少ない。韓国人のばあい韓国人固有のDNAは40パーセント、中国人(漢人)は漢人固有のDNAは実に60パーセントだそうである。
 4世紀から7世紀の大量渡来の背景には、朝鮮半島での高句麗百済新羅伽耶の戦乱がある。戦乱を避けるため、まず500年代半ば伽耶の諸村ごとこの列島に渡来し、ついで660年百済滅亡とともに百済人が、668年高句麗滅亡とともに高句麗人たちが、この列島に集団渡来してきた。さらに中国からも直接、漢人が来たり、またシルクロードを越えてはるかペルシャからもこの列島に渡って来た波斯人もいたであろう。当時は、まだ日本という国はなかったし、「日本人」はまだできていなかったから、単なる渡来であって帰化ではない。
 新渡来人は大陸の技術をたずさえてきたので、先にこの島に渡来していた人々とともに、大和朝廷を形成し、6世紀末から7世紀に飛鳥・奈良文化が花開いていくことになった。そういえば、私が神戸で中学生だったころ、飛鳥の高松塚古墳が発掘されて、その鮮やかな壁画が新聞に公開された。描かれた四人の女性たちのいでたちを見て、朝鮮学校に通う女子高生の優雅な制服に似ているなあと感じたことがある。調べたら、あれは三国時代高句麗系の衣装で、チマ・チョゴリの原型なのだそうであるから、私の印象は外れていなかったわけだ。現在のチョゴリ(上着)は極端に短くなっているが、チマ(スカート)は同じだ。高句麗は寒かったからチョゴリが長かったのだろうか。
 やがて、8世紀、9世紀になると、ほとんどの新渡来系の氏族は改姓してしまったので、どの家が新渡来系なのか渡来系なのかということは不明になってしまった。そしてどんどん混血・融合が進んで、上に書いたように、この列島の住民のDNAには多くの民族の背景が刻印されることになる。シルクロードを西から東に流れる大河にたとえるならば、その河口部の列島住民ゆえ、中国・韓国・縄文以外にもいっぱいブレンドされているから、電車に乗って向かいの人たちのいろんな顔から、その人の先祖の山や砂漠や海を越えての大旅行を空想するとおもしろい。
 大陸のモンゴロイドの渡来によって縄文文化が始まったのだから、もし縄文人を旧渡来人と呼べば、結局は、
  旧渡来人×渡来人=弥生人
  弥生人×新渡来人=日本人
であり、もっとシンプルに表現すれば、
  旧渡来人×渡来人×新渡来人=日本人
 なのであるから、日本人は100パーセント渡来人であり、雑種なのである。
 おおざっぱな筆者にとっては、このくらいでもう十分だ。そもそも聖書の視点でさかのぼったら、セム、ハム、ヤペテそしてノア、さらにアダムとエバまで行ってしまうし・・・。まあ、それを言っちゃあ、古代史マニアにわるいかな。
「この人々は、血によってではなく、肉の欲求や人の意欲によってでもなく、ただ、神によって生まれたのである。」ヨハネ福音書1:13
ユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自由人もなく、男子も女子もありません。なぜなら、あなたがたはみな、キリスト・イエスにあって、一つだからです。」ガラテヤ3:28