苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

歴史

昭和天皇の思惑・・・9条2項と米軍基地

矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』のパート4には、憲法9条制定に関するマッカーサー側の意図について、9条と、国連憲章(特に敵国条項)およびその原案にあたるダンバートン・オークス提案と沖縄基地化の関係が記されている。古…

恩寵のみ、聖書のみ

ローマ1:16,17、3:19−24 ヴァルトブルク城 本日は、宗教改革記念礼拝です。 1.中世ローマ教会の悲惨 宗教改革について語るには、どうしてもマルチン・ルターその人について語らなければなりません。それは神はマルチン・ルターという強烈な個性の霊的経…

「売国」でなく「売民」・・・沖縄とシベリアで

売国奴という厭なことばがある。この言葉を投げつけさえすれば、相手を社会的に抹殺できると思っている人々がいる。これは愛国心という近代に特殊な歴史現象を前提としていることは以前に書いた。 http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20110608/p1 それ…

ニュースのバランス感覚の崩壊が始まっている

独フランクフルター・アルゲマイネ東アジア特派員カーステン・ゲアミスによる報道。 「日本のメディアが朝日問題をあまりに大きく取り上げたことには奇妙な感じがした。この問題が歴史修正主義に都合良く利用されるのは問題だ。日本に対する国際的な不信を高…

今、トリクルダウンしているもの

アベノミクスは、大企業が儲かれば、それはやがて中小企業をうるおし、労働者の懐もうるおすことになるのだというトリクルダウン説を唱えて、大企業優遇政策を徹底している。そして、税収の不足分は、さらなる消費税増税でまかなおうという算段である。ちな…

貧乏人は存在するけれど、貧困なるものは存在しなかった・・・

『柿崎は小さくて貧寒な漁村であるが、住民の身なりはさっぱりしていて、態度は丁寧である。世界のあらゆる国で貧乏にいつも付き物になっている不潔さというものが、少しも見られない。彼らの家屋は必要なだけの清潔さを保っている(ハリス,1856)』 『もう…

「広義の強制性」・・・・従軍慰安婦

安倍首相は、「(官憲が)人さらいのように、人の家に入っていってさらってきて、いわば慰安婦にしてしまった」(2013年2月7日衆議院予算委員会)ということはないという。それを首相は「狭義の強制性はなかった」と表現する。それでも、首相は7年前は、「広…

従軍慰安婦問題・・・どちらが誤報なのか 

今、従軍慰安婦問題にかんして朝日新聞が誤報をしたとさんざん叩かれている。だが、あの叩き方では、読者はあたかも強制されて従軍慰安婦になった女性がいなかったかのような錯覚へとミスリードすることを意図しているかのようだ。 実際には、朝日新聞の誤報…

ノアの箱舟の検索

google earthを使っているかた、 uzengili koyu で検索すると、ノアの箱舟が見つけられます。google mapでも、航空写真にして、uzengili koyuの東北120メートルくらいのところにあるのが見えます。北方にアララト山があって、そこから泥流が流れてき…

申命記の書かれた時期

20世紀にもっとも急速に発達した人文系の学問は、オリエント考古学であると言われる。それによって、19世紀に自由主義陣営の聖書学で定説とされたある部分はくつがえされることになった。その一例をメモしておく。 34:14 彼らが、【主】の宮に携え入れられた…

ハトシェプスト展

上京する用事があったので、帰りに上野の都立美術館で開催されている「女王と女神」展で、古代エジプト最初の女王ハトシェプストの展示を見てきました。私は以前から、出エジプト記2章の赤ん坊のモーセを救った「エジプトの王女」はハトシェプストであろうと…

731部隊

中国大陸でかき集めた三千人の人々を「マルタ」と呼んで人体実験をし、殺害した石井四郎731部隊。米国はその実験の成果を渡すことと引き換えに、石井らの戦争責任追及をしなかった。戦後、731部隊に配属された医学者たちのほとんど帰国してエリートの道を進…

エジプト脱出の年代・・・・・前期説と後期説  再掲載プラスアルファ

読者からの質問があったので、再掲載します。最後におまけをつけました。 イスラエルの民がエジプトを脱出した時期については、紀元前15世紀半ばとする早期説と、紀元前13世紀とする後期説とがある。それぞれの説によって、出エジプト記1章に出てくるイスラ…

日本国憲法の制定過程(その1)

2013年5月8日 脱稿<目次> 序 Ⅰ 「押し付け」憲法論について 1 「押し付け」憲法論の根拠と目的 2 「押し付け」憲法論への簡潔な反論 Ⅱ 日本国憲法の制定プロセス 1 日本国憲法の制定過程概観 (1)日本国憲法関連 略年表 (2)日本国憲法を書いたGHQ…

出エジプト記の歴史的・政治的背景 その2 エジプト第18王朝の系図

<エジプト第18王朝 Ex1,2章関連系図>正妃イアフメス―――③トトメス1世――――――側室 | | ⑤正妃ハトシェプスト―――――④トトメス2世――側室 | 正妃―――⑥トトメス3世 | ⑦アメンホテプ2世 筆者はイスラエルのエジプト脱出の時期について前期説が適切だと考えている…

出エジプト記の歴史的・政治的背景 その1   文化の爛熟と支配者の交代

一ヶ月ほど前にも書いたのだが、イスラエルのエジプト脱出の政治的・歴史的背景は、調べ思い巡らすほどに興味深い。いくつかメモしておきたい。1.エジプトでヨセフが重用された理由 1:8 さて、ヨセフのことを知らない新しい王がエジプトに起こった。 古代…

聖書と考古学

四月二十七日(日)、聖書考古学・聖書地理の専門家の菊池実先生をお迎えして講演会を開こうとしています。午前十時からの礼拝のなかでのお話と、昼食後、午後二時からのお話です。どんなオリエント考古学の史料から、聖書の奥深い世界についてお話しくださる…

エジプト脱出の時期

イスラエルの民がエジプトを脱出した時期については、紀元前15世紀半ばとする早期説と、紀元前13世紀とする後期説とがある。それぞれの説によって、出エジプト記1章に出てくるイスラエルを弾圧した暴君、エジプト脱出に際してモーセと対決したパロの名が違っ…

エジプト第18王朝5代ハトシェプスト女王

今度の主の日は、オリエントと旧約史の第4回。出エジプト記1章から2章半ばをとりあげます。 ヨセフがエジプトで仕えた王朝は、おそらくセム系のヒクソス朝で、ハム系であるエジプト人にとっては異邦人による征服王朝でした。ヨセフ自身セム系でしたから、こ…

事実は事実

「軍の資金で慰安所口止め」 元日本兵、60年代に供述2014年3月22日 20時41分 東京新聞 旧日本軍の従軍慰安婦問題で、太平洋戦争中にインドネシアのバリ島に海軍兵曹長として駐屯していた男性が、1962年の法務省の調査に「終戦後(慰安所を戦争犯罪の対…

シナイ山の場所と出エジプトルート

ちとしつこいですが、マイブームの本当のシナイ山と出エジプトの本当のルートの話。上のBible Hubの地図では、シナイ半島のが4世紀以降の伝統的・観光的ホレブ山で、アカバ湾の東側ミデヤンの地にあるのが、最近知られるようになった「本当のホレブ山」と言…

聖書考古学のビデオ

「オリエントと旧約史」という主題で聖書を読み直していて、サンライズミニストリーという団体の提供している、聖書考古学にかんするビデオがyoutubeにたくさんアップされていることに気づきました。この団体の背景はセブンスデーです。いわゆる福音派ではあ…

オリエント考古学と聖書のこと

このところ、「オリエントの中の旧約史」として、メソポタミアやエジプトの歴史と旧約聖書の歴史の接触点に注目して聖書を読み直して説教の準備をしています。なかなか面白いです。 19世紀、考古学未発達の時代のドイツの聖書学は王国時代より前の聖書の記述…

対米戦突入と原発再稼働

3月11日を目前に、首相が国会で原発再稼働を明言した件で、『昭和16年夏の敗戦』という本を思い出しました。昭和16年、総合戦研究所の俊英たちがどんなシミュレーションしても、対米戦争は敗北に終わるとわかっていた。わかっていたのに、戦争に突入して行っ…

ノアの箱舟?

興味深いビデオを見つけました。なるほどと思ったのは、アララテ山は火山であり近い過去に何度も噴火していることを考慮すれば、箱舟が噴火口近くにあるという説は不合理であるという指摘です。 このビデオで取り上げられている巨大な船のかたちをした構造物…

幻の東京五輪

政治問題がらみで開催に問題が生じたケースで、筆者の記憶に鮮やかなのは、1980年のモスクワ五輪である。折からのソ連のアフガン侵攻に対する抗議として、アメリカが参加拒否を訴え、日本、西ドイツ、韓国、中華人民共和国、イラン、パキスタンなど50カ国近…

信州の秩父事件

祈祷会が終わった後、近所の人からお借りしていた「信州の秩父事件」というビデオを見ました。 小海町には、明治17年に起きた自由民権運動のひとつ秩父事件の最後の戦場があります。政府の貧富の格差を拡大する暴政・無策に対して抗議の声を上げて、秩父で蜂…

小海宣教20周年飛騨旅行

きのう、きょう、小海宣教20周年記念旅行ということで、教会の17名の兄弟姉妹で飛騨の百年の歴史を越える日本同盟基督教団の三つの教会をバスで訪問してきました。運転は、教会役員のⅠ兄のありがたいご奉仕でした。 昨日(3日)の夕方は神岡教会でした。古川…

帝国による属州統治のノウハウ

リチャード・ボウカム『イエス入門』に次の一節があった。 「帝国はなによりもローマ人と彼らを支える属州のエリートたちの繁栄のために存在していたという事実を。ローマはたいてい地方のエリート支配者たちと共同で属州を統治した。したがって、ローマがユ…

馬と民をひきかえにしてはならない

先月末、信州夏期宣教講座で三つの講演のうちひとつを担当させていただいた。すでに当ブログでは書いたことのある申命記17章のアウトラインによるものだが、そのなかで、聖書解釈上いまひとつはっきりしなかった点があった。 「王は、自分のために決して馬…