苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

教会史ノート

山口陽一「日本キリスト教史三講義」

japan.cgntv.net 東京基督教大学学長、山口陽一師の「日本キリスト教史三講」が視聴できます。 第一講 キリシタンと「神国」日本 第二講 明治時代のプロテスタント 第三講 戦中の教会を考える

HP「教会史講義ノート」の訂正    東方⇔西方

小海キリスト教会HPの書斎に「教会史講義ノート」があるのですが、その142ページにまちがいがありますので、ここでおわびして訂正いたします。HPの更新のしかたを忘れてしまいましたので、直せないのですが、直し方がわかり次第直すつもりです。 「西方…

教会史講義ノートをpdfで公開します

このブログで2010年8月3日から2011年3月3日まで順々に掲載した、母校東京基督神学校での2009年度教会史講義ノートをpdfファイルのかたちで、「小海キリスト教会」のホームページの「牧師の書斎」に公開します。内容については、去年の8月3日に書いたとおり…

近現代教会史9  福音派 

今朝、少し積雪がありました。三寒四温といいますが、こういうふうにしながら小海の春はやってきます。 1.エキュメニズム派と区別して 福音的とか福音派あるいは福音主義ということばは、いろいろな意味で用いられる。宗教改革時代においては、信仰による…

近現代教会史8 大戦後のエキュメニズム派の動向・・・20世紀(3)

昨年大晦日にドイツ教会闘争を掲載して以来、少し間があいてしまいましたが、近現代教会史ノートの続きです。第二次大戦後のリベラル派の神学の動きです。3.その後のエキュメニズム派の動向 −−「神の死」の神学、宗教多元主義、解放の神学―――(1)「神の…

近現代教会史7  ナチズムとの教会闘争・・・20世紀(2)

2.ナチズムとの告白教会の戦い―――――バルメン宣言について (1)獣どもの出現 「また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神をけがす名があった私の見たその獣は、ひょうに似…

近現代教会史6 自由主義神学の挫折と弁証法神学・・・・・・・20世紀(1)

はじめに 時代の空気 自由主義神学は西洋文明によって、世界は進歩していくという楽観的な時代の空気のなかに生まれた。リッチュルの教えた「神の国」は、その典型である。彼らは人間の当面の不完全性も道徳の教師イエスを模範とすることによって克服され、…

近現代教会史5 「歴史は進歩する」という迷信 19世紀(その2)

2 「歴史は進歩する」という迷信 19世紀に支配的であり、かつ20世紀にまで影響を及ぼしてきた「進歩」という理念を検討したい。これは、近現代人を長らく支配してきた「迷信」であって、1970年の大阪万国博覧会のテーマは「人類の進歩と調和」であった。そ…

近現代教会史4 自由主義神学   19世紀 (その1)

(近現代教会史3 敬虔主義運動と世界宣教については、もっと勉強して考え方が固まってから公開するつもり。これには帝国主義(植民地主義)と宣教活動がからみあっていて、簡単に評価も批判もしがたい。)序 「自由」とは ここで自由ということばを取りあげ…

近現代教会史2 大陸の敬虔主義運動と英米の信仰覚醒運動 

正統主義に対する反動の一つは啓蒙主義であり、もう一つは敬虔主義運動である。(1)シュペーナー(Philipp Jakob Spener、1635年1月13日 - 1705年2月5日)と敬虔主義運動(写真はweblio.jpより) 改革派正統主義においては常に正統教理とともに正統実践が…

近現代教会史1 フランス革命と理性崇拝

はじめに 何を近代とするかについては諸説ある。ヴェストファーレン(ウェストファリア)条約(1648年)で近代主権国家が成立したこと、経済においては産業革命によって資本主義が成立したこと、市民革命によって市民社会が成立したことなどが近代の特質とされ…

近世教会史13  正統主義時代(5)オランダのチューリップ論争

5.改革派正統主義の予定論論争 (写真はhttp://greenhouse100.seesaa.netより) 17世紀プロテスタント正統主義時代のドイツ、フランス、イギリスと来て、最後にオランダの神学者アルミニウスが提起した提起した予定論をめぐる論争を扱う。オランダといえば…

近世教会史12 自由教会の自由とは

イギリスの国教会との信仰上の闘いの中から、国教会から分離して自らの神の前の良心にしたがって礼拝をささげる人々の群れが誕生した。これが本来的な意味での、「自由教会」である。つまり、自由教会というのは、国教会制度のある国々において、国教会とは…

近世教会史11 正統主義の時代(4)イギリス:バプテスト、会衆派の出現

(2)会衆派とバプテストの出現a,会衆派(独立派・組合派教会) 英国教会は大陸の宗教改革とローマ教会からと左右両方から批判や影響を受けながら中道(via media)を行くが、特にジュネーブの宗教改革〜スコットランド長老教会の影響を受けた人々が、ピュー…

近世教会史ノート10 正統主義の時代(3)イギリス:ピューリタン運動

序 ピューリタン革命と名誉革命 イギリス17世紀の教会のピューリタン運動は、我々にとって特に重要である。というのは、この運動の中から、現代の多くの教会・教派が誕生しているからである。16世紀の宗教改革運動は、ルター派、改革派、アナバプテスト、英…

近代教会史ノート9 正統主義の時代(2)フランス

2.フランス:「荒野の教会」プロテスタント弾圧 J.ゴンサレスの当該箇所の要約。 (1)ユグノー戦争(1562-1598年)とナントの勅令(1598) ジャン・カルヴァンの思想がフランスで勢力を持ち、改革派はカトリック側から蔑みを込めてユグノー(huguenot)…

近代教会史ノート8 正統主義の時代17世紀(1)ドイツ

*正統主義の時代 17世紀 近世から現代の教会史を、ごく大雑把にいえば、16世紀は宗教改革時代、17世紀はその成果をまとめた正統主義時代、18世紀は正統主義への反動としての敬虔主義・啓蒙主義時代、19世紀は啓蒙主義への反動としての自由主義神学と世界宣…

近世教会史7  宗教改革者の職業召命観

2009年6月に説教余禄として掲載したことのある「再考 職業召命観」を、ここに再録しておく。宗教改革者の職業召命観 ①ルターと職業召命観のプロテスタント圏へのひろがり ローマ教会では、司祭職・修道士は聖なる職務につくものであり、その他の労働は俗なる…

近世教会史6 改革派教会(3)カルヴァン

c.ジャン・カルヴァンJean Calvin(1509年7月10日―1564年5月27日) <改革者の形成> カルヴァンはフランスのピカデリのノワイヨンに生まれた。父の意志で最初は神学を学び、後に、法律を学んだ。ルターの時にも述べたように、絶対王政が成長し官僚制度が整…

近世教会史5 改革派教会(2)ブリンガー、エコランパディウス、ブツァー

*ハインリヒ・ブリンガーHeinrich Bullinger(1504-1575) チューリヒにおけるツヴィングリの後継者はハイリヒ・ブリンガーである。ツヴィングリに比べると、それほど大きな指導力を発揮した人物ではないとされるが、第二スイス信条は彼によって作成された。1…

近世教会史4 改革派教会(1)ツヴィングリ

2.改革派教会 Soli Deo gloria 「聖書のみ」「信仰のみ」「恩寵のみ」を旗印としてドイツのルターに始まったプロテスタント宗教改革であるが、同じ根本原理に立ちつつも別の展開を見せたのが、ツヴィングリを先駆者としてカルヴァンに継承され発展したスイ…

近世教会史3 ルター(3)神学   教会観3点

c.教会観 ①「信徒皆祭司」―――聖徒の交わりとしての教会 ルターといえば「信徒皆祭司」ということが常識的に言われる。そして、それは誤っていない。「ドイツ貴族への言葉」Luther’s Werke xi405-415 ベッテンソンpp278-280 「われわれはみな、バプテスマによっ…

近世教会史2 ルター(2)神学  聖書のみ、信仰のみ

(2)ルターの神学 a.「sola scriptura聖書のみ」:形式原理 ルターの足取りから宗教改革の二大原理があきらかになってきた。教会史の常識として、ルター神学の形式原理は「聖書のみ」と実質原理は「信仰のみ」と言われる。 「聖書のみ」が教会における第…

近世教会史1 ルター(1)生涯  <追記>近世教会史の序

<追記>近世教会史の序 古代、中世の教会史ノートは基督神学校のクラスのために準備をしてきた講義ノートを公開したのであるが、近世―近代の教会史はかつて某キリスト教誌に連載したプロテスタント教理史概観の原稿に少々加筆したものであるから、内容は大…

中世教会史36 宗教改革の先駆者(3)  ジョン・ウィクリフとヤン・フス

3.宗教改革の先駆者−−二人のヨハネ−− 十四世紀になると「教皇のバビロン捕囚」という事件が起こる。フランス国王フィリップ四世はフランス領アヴィニョンに教皇庁を移させ、以後七十年間、教皇庁はアヴィニョンに置かれた。この事態は「教皇のバビロン捕囚…

中世教会史35 宗教改革の先駆(2)エラスムスが卵を産み、ルターが・・・

2.ルネサンス・フマニスム(人文主義 humanism)(1)ルネサンスと宗教改革 ルネサンスと宗教改革との関係については、見方がいろいろある。ヤコプ・ブルクハルト は、中世の本質をその画一性・統一性に見て、ルネサンスの本質を「個の発見」であると見る…

中世教会史34 宗教改革の先駆者(1)ドイツ神秘主義

先に、唯名論が教皇と神聖ローマ皇帝の普遍的権威の根拠を否定し、各民族国語の独立を促し、教会会議を重視させたという神学的な動きを見た。そして、中世の崩壊について、経済的・政治的背景・ペストの大流行・教皇庁のアヴィニョン捕囚といったことを取り…

中世教会史33 スコラ哲学(8)ウィリアム・オブ・オッカム

9.ウィリアム・オブ・オッカム(William of Occam1285or1300-49or50) 主意主義・ノミナリズム・スコラ的統合の崩壊 (1)生涯 オッカムは1309年―1315年までオックスフォードに学び、聖書を講じ、1317年からロンバルドゥスの命題集を講じる資格を得て、神学…

中世教会史32 中世の神学 スコラ哲学(7)ドゥンス・スコートゥス

8.ドゥンス・スコートゥス(Johannes Duns Scotus1264or65or74-1308) 精妙博士doctor subtilis――――普遍実在論・主意主義 ドゥンス・スコートゥスは若くしてフランチェスコ修道会に入り、司祭となり、オックスフォードで学んだ後、パリに遊学、イギリスとフ…

中世教会史31 中世の神学 スコラ哲学(6)ボナヴェントゥーラ

7.ボナヴェントゥーラBonaventura(1217年ごろー1274)の霊性 中世スコラ学の最盛期、トマス・アクィナスと双璧とみなされた。彼の『命題集注解』の英訳はネット参照。http://www.franciscan-archive.org/bonaventura/sent.html (1)生涯 ボナヴェントウx…